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99:チクタク

事実上このお話が100話目(タイトル上は99話目)なので初投稿です

ブルボンの改革は、これから大躍進が期待される科学分野においても特需を生み出す切っ掛けを作るようになっていた。

その中の一つに時計屋が挙げられる。

パリ中の時計屋が科学アカデミーから指示された均一性の時計の製作に取り組んでいたのである。


「科学アカデミー様々だな!特需だよ特需!ここまで時計が売れるだなんて喜ばしい事だな!」

「そう喜んでばかりはいられないぞ、何せ納期は半年だ。それまでに時計をミスなく作らなくてはならんのだ。気を緩めて事故品なんて出したら弁償ものだぞ」

「おっと、そうだったな。しっかりやらないとな」

「国王陛下だって16歳であれだけの改革をやってのけておられるんだ。俺たちがグズグズしていられんぞ」


フランスで科学アカデミーからも絶賛された精巧な時計技師、ピエール・ルロワを中心に設計され、実験で必要な時計として発注されているのは、いずれも時間計測が可能な懐中時計であった。

この発注を行ったのは他でもないルイ16世からの指示であった。


事の発端は些細な事が切っ掛けだったのだ。

フランス科学アカデミーの主要メンバーとの懇談会の席でルイ16世が述べたのである。


「できる限り正確に時間を測れる時計があれば科学実験もやりやすいよね、でも時計は高い……科学アカデミーの若手研究員でも一台持てるようにしたいのだが……誰か有名な時計技師を知っているかね?」


その際に経度などを測定して船舶の位置情報を知らせるデテント式脱進機を開発したピエール・ルロワの名前が挙げられて、ルイ16世は後日ピエール・ルロワをヴェルサイユ宮殿に呼び出して計測用懐中時計の開発を命じたのだ。


「若手の科学アカデミー研究員でも所有できる計測用懐中時計を作ってほしいのだが出来るかね?期限は急ぎで悪いが半年ほどだが」

「いえ、半年であれば十分にご期待に応える代物ができると思います。やってみましょう」

「有難い。では、正式にお願いするとしよう」


国王陛下の大命でもあったのでピエール・ルロワは大命を受け取ると直ぐに自宅の研究室に戻って他の時計よりも安価でかつ時間を精確に測れる懐中時計の開発に乗り出したのだ。

計測用懐中時計は、科学実験などで使われる時間などを精確に測る必要性があり、これから産業文明の時代を迎えるにあたって時計は非常に重要な役割を担う役者となるからだ。


まず精巧な時計作りの天才とも謳われたピエール・ルロワが取り組んだのは、部品の共有化であった。

時計というのは、職人による精巧な部品の組み合わせによって作られる精密機械でもある。

そうした時計は、作り手によって製品に差異などが生じてしまうことがある。

それを極力無くそうとしたルロワは、時計の大まかな部品の規格統一を図ったのだ。


勿論、まだ工業化などが進んでいないフランスでは基礎的な型取り程度しかできなかったが、それでも大まかな部品の規格統一化を行うことに成功したのである。

出来上がった試作型計測用懐中時計を科学アカデミーで実験を行い、高価な懐中時計と比べて精確性などを検証し、ほぼ差がない代物を作ることが出来たのである。


ある程度時計職人の腕があれば作ることが出来る上に、価格も今まで科学アカデミーで使っていた高級時計の3分の2程度にまで抑えることが出来たのだ。

7月17日には様々な実験で結果が良好だったことも踏まえた上で、ルイ16世自らも実験を行ってその精確性を称賛して試作品の量産に承認のサインをしたのだ。


こうした経緯で出来上がったのが『ドライエ60』という計測用懐中時計である。

いきなり市販して高級時計ブランドを駆逐してしまわないように、このドライエ60はフランス科学アカデミーなど限られた者にのみ、先行して販売することが決まったのである。


フランス全土にいる科学アカデミー研究員やパリ大学を中心に配布され、その配布予定数は2500個にも及ぶ。

時計職人が作りやすいように設計されたとはいえ、それでも一人の職人が計測用懐中時計を1個作るのに約2日ほど掛かる。

パリ市内だけでなく、パリ郊外の時計屋にも発注が及んだ為、ほぼ1カ月以上計測用懐中時計を作ることになったのだ。


その発注をしているのがフランス科学アカデミーであり、さらにその発注の資金を出しているのがルイ16世でもある。

科学実験では計測をすることは何よりも大事であり、特に精確な時間を知ることの大切さを何よりも実感していたのである。


ルイ16世へ転生する前、社畜生活では時間という枠組みに縛られてはいたが、精確な時間を測れないと電車のダイヤは乱れる上に実験や研究に大きな支障を及ぼすことを知っているからだ。

現に、そうした時間の関係でトラブルになってしまい大切な大企業との商談を破談させてしまった苦い思い出がある事から、計測用懐中時計の製作に熱意をしめしていたのだ。


そうした経緯もあり、ルイ16世はこのドライエ60計測用懐中時計を作り上げたピエール・ルロワに対して報奨金2万リーブルを贈呈し、さらに本人の希望もあって時計会社を設立することに協力したのである。

ドライエ60は、後にフランスの工業化においても欠かせない重要な役割を担うのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 時計に限らず、現代にいたるまでの精密機械だと、 サファイヤやルビーなどの【精密軸受け】を使うから高価であって…… そうでないと、すぐに誤差が出て、計測に使えなくなります。 ベルヌーイが火炎溶…
[一言] ユダヤ人を味方に付けることで 精密機器やら金融システムやらダイヤモンドシンジケートやらが 勢いの有るフランスに流れて来る?某永世中立国の運命は(汗
[一言] 『ヴェントリー』って、アイルランドにある村の名が浮かびますね。 フランス語っぽくない響き。 イギリスとフランスの敵対はどうなっているのかとか、アカデミー用の国産品に英語名をつけるのかとか、つ…
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