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998:砂糖

思考を巡らせていると、甘い香りが漂ってくる。

ドアがノックされて入ってきたのはアントワネットであった。

なんとわざわざ菓子と甘いココアまで用意してくれたらしい。

こういう時のアントワネットは心強い。

何かと俺に対して気を遣わせてくれている上に、俺を支えてくれる女性がいるだけでかなり精神的に助かっている。


「考え事をしているのもいいですけど、ちゃんと甘い食べ物を食べておくことも必要ですよ?」

「ありがとう。このクッキーとココア、アントワネットが作ってくれたのかい?」

「ええ、料理長から教わった通りに作りましたの!一緒にどうです?」

「そうだね、少し休憩にしようかな」


休息は大事だ。

特に議題などを煮詰めている時に関しては頭をフル稼働させて考え事をしてしまう。

これは俺の長所でもあり短所でもある。

長所としては良い結果を出す為に、考えて熟知させることで回答や行動などを整理整頓させてから話すことができる。

短所としては、間が開いてしまうので何を考えているのか相手からは分からないという点だろう。


甘い食べ物を食べてリラックスするのは良い事だし、何よりもアントワネットが手作りで作ってくれたクッキーだ。このクッキーに関しては俺も頷くレベルのウマさである事は既に知っている。

バターを溶かした上で、その上から砂糖などを入り混ぜた感じになっているので、甘味がグンと際立っているのだ。

おまけに大麦も入れているので、食感も独特で美味い。

大麦って身体に良いからねぇ……


「どうです?」

「うん、すごく美味しいよ。これで王妃様が焼きましたって宣伝して売りに出していいぐらいの味だよ」

「ふふっ、ありがとうございます」

「……こうして甘い菓子を食べれるのもみんなのお陰だという事を忘れてはいけないからね……もっと頑張らないと……」


そう、こうしてアントワネットが焼き菓子を作ってくれることができるのも、前線で多くの兵士達が頑張ってくれているお陰だ。

それに、一時期は不足も心配された砂糖だが、これはブラジル方面などから取り寄せた上で、価格も急上昇しないように市場関係者に物価統制価格なるものを設定して、過剰な値段の上昇を抑えている。

一般庶民でも砂糖は購入出来る上に、その砂糖に関しても現代の紙幣価値でコーヒーに添えられているスティック1杯分の砂糖が100円ぐらいで買えるのだ。


砂糖は嗜好品としても重宝されている上に、何と言っても人間は疲れている時ほど甘味を欲しがるのは身体のメカニズム的に理にかなっている行為だ。

故に、砂糖を買い占めて価格が爆上がりするような事態になれば、目に見えて戦争の戦局が悪化しているという理由になりかねない。

事実、日本も太平洋戦争直前までは自給自足できるだけの砂糖の生産量を有していたが、戦争の悪化で物流網が混乱した結果、戦争末期には砂糖はかなり貴重な代物となっていて、飴やキャラメルに使用される砂糖も生産工場など限られた層にしか配給されなかったと聞く。


(戦時中や戦後の混乱期には砂糖が超貴重品だったのも配給が切れたのもあるけど、やはり物資が不足すると何もかもが足りなくなって代用品などを欲しがるようになるからなぁ……こうした嗜好品や生活必需品などに関しては戦争中は政府が責任を持って管理下に置いた方がいいね。下手に物資の値段などを過剰に上げてしまうと、それに釣られて他の物資も値上がりするからなぁ……転売屋とかが買い占めないように卸売業者にも釘を刺して正解だった)


砂糖が潤沢……でなくても、安定した値段で供給し続けることが人々の安心につながる。

革命派の連中がこうした砂糖や小麦粉などを故意に買い占めて暴動を引き起こそうとしていた事も判明している。

これはグレートブリテン島での出来事ではあるが、革命派の残党たちが戦争中に政府が管理している食糧庫などを襲撃し、穀物などを強奪してグレートブリテン島を中心に意図的な飢餓状態を作り出し、その強奪した食糧を市民に無料で配布して再び政権を取ろうと画策していたのだ。


一時的に成功したとしても、革命派は関係者や脅して協力させていた者を含めても四千人程度ではあるが、それでもグレートブリテン島だけでなく港湾都市などを中心に砂糖などの嗜好品の値段がかなり上がるなどの流言飛語を流されてしまうと、パニックになった民衆が買い占めてしまう事も起きるだろう。

新型コロナウイルスが大流行した2020年には、マスクの買い占めが起こって値段もそれまでマスク一箱500円程度だったものが1万円を超える値段で取引される事態にもなったし、釣られるようにトイレットペーパーやパスタも商品が無くなるという噂が広がったため、連鎖的にスーパーの棚から消えたことは記憶に残っている。

それと似たような事がこの時代では容易に行えてしまうため、注意が必要なのだ。


もっとも、こうした目論みは実行される前に一斉逮捕という形で未遂に終わったのだが、もし実行されていたら、憲兵隊などを派遣して鎮圧しなければならない事態になっていただろう。

おまけに流言飛語に関しては物理的な封じ込めは難しいので、これが一斉に実行されていたら港湾都市を中心に流言飛語によって混乱していたのは間違いないだろう。

戦争の作戦に少なからぬ影響を与えていた可能性が高い。


「こうした嗜好品が規制されたり、庶民にとって手が出せない値段にまで膨れ上がったら……今の生活はできないだろうね……」

「そうですね……戦争が早く終われば、統制価格も終わるのではないでしょうか?」

「うん、だけど砂糖などの嗜好品は価格が上昇すると、それに合わせて投資目的で砂糖の生産工場や地域にプランテーション農園が多く作られるからね……結果として、過剰投資になってバブル経済になるリスクがあるんだ。計画的に作ってやったほうが中長期的にプラスになるんだよ」


そう、過剰投資などが起こるようになるとバブル経済が起こり、一時的な活性化にはなるが……バブル経済が弾けてしまうと、それまでの投資などがすっ飛んで経済不況に陥る。

歴史的に見ても、既にヨーロッパではチューリップバブルやミシシッピバブルと呼ばれているバブル経済が発生しており、それらが一時的な好景気を押し上げたものの、結果として経済不況となって停滞期が訪れてしまう。

一時的に湧き起こってしぼむ程度ならまだいい方だが、世界恐慌の時のようなクラスになってしまうと俺でも手が付けられない事態になるだろう。


(だからこそだ……戦争経済になったとしても過剰な投資などが行われないように市場を牽制しておく必要があるというわけだ……)


戦争で儲かるなんて時代は20世紀で終わったかもしれないが、実際にはカンフル剤のような効果を発揮してしまうため一時的に見れば元気になってしまう。そしてその元気が無くなった時に経済は風邪を引くか、風邪をこじらせて大病を患うことにも繋がる。

歴史を知っている者だからこそ、これに関しては厳しく目を光らせておく必要があるのだ。

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