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俺本体侵入

ーーー


霧のなかから出現した都市は驚くほど奮戦した。

シャトルテゴラインより小柄ながら、相手の懐に入り込み、シャトルテゴラインの横っ腹に喰らいつく。シャトルテゴラインの巨大義肢が引き剥がそうと、打撃を加え、電鋸が各部を切り裂くが、必死で耐えている。


業を煮やしたのか、服飾族が都市から出てきて、小都市の装甲にとりついた。服飾族の個体はそれぞれが強靭な肉体を持っている。彼らがパンチをふるうだけで、装甲は大きく凹んだ。


と、小都市の懐が開き、ウンカのごとく小さな物体が湧き出した。小さな円盤型の身体に、蜘蛛のような多脚、飛行用の小型プロペラ。


俺だ。俺F12と同じFシリーズの俺たちだ。しかし、飛行装置の形状が、俺より若干角ばっている。バージョンが異なるらしい。


俺の知らない俺たちは、服飾族に特攻を仕掛けた。


ほとんどが服飾族のひとなででバラバラに粉砕されるも、何体かは体当たりに成功し、服飾族を地面へ突き落とした。


と、Fシリーズの俺たちよりも一回り大きな何かが、シャトルテゴラインに突き刺さった義肢を伝って、シャトルテゴラインに取り付いた。ルンバのような身体に見慣れた八本の脚。


俺本体、俺Aだ。


俺は〝おい!〟といいながら、排出口から飛び出し、シャトルテゴラインの外部装甲を伝って、俺Aの隣に張り付いた。


俺Aがいう。

〝驚いた! F12、こんなところで何してるんだ?〟


〝どうもこうも、リランドラを説得する前にシャトルテゴラインが襲ってきたんだ。で、リランドラが逃げ出して、シャトルテゴラインが追いかけた〟


〝なるほど。どうりでシャトルテゴラインがここまで大きくなったわけだ。逃げた半身も結局喰われたのか〟


〝それより、お前はどうなってんだよ。なんなんだ、この都市は!?〟


俺本体が体を揺すった。

〝こいつは俺だよ。シャトルテゴラインの食べ残しをいただきながら追いかけてきたんだ〟


〝食べ残し程度でここまで大きくなれるものなのか?〟


〝俺は摂取した資源を効率的に変換できるからな。シャトルテゴラインの資源回収から再構築までの歩留まりがどの程度か知らないが、俺ほどじゃないはずだ〟


〝それでも、でかすぎるだろ!〟


〝リランドラの残骸を食べてるときに、また制限が解除されて、変換効率があがったんだ。今の俺たちは、ほかの機械生命が見向きもしないようなゴミでも資源として摂取できる〟


ロボット掃除機としての格があがって、ゴミの中のゴミを食べられるスーパー掃除機になったというところか。


〝で、なぜそんなスーパーな俺の本体が、立派な身体を捨てて外に出てくるんだよ?〟


〝このままだと負けるからだ。見ての通り、この身体は、まだシャトルテゴラインと正面からやりあえるほどデカくない。もう少し時間があれば、もっと戦えたかもしれないが、そんなことをしていたら最果て村が食べられかねなかった。今頃、ほかの俺たちが連合軍を作ってるだろうが、こんなのが来たらひとたまりもない〟


俺はピンと来た。

〝中から攻撃するつもりなのか?〟


〝ポレポレの救出もあるからな〟


〝それはーー〟

俺は、先ほど、ポレポレとそのなかの俺が書き換えられたことを話した。


〝まじかよ〟俺本体がつぶやく。〝もう望みはないのか?〟


〝望みがあるとすれば、シャトルテゴラインの管理システムだ。上書き前にポレポレを解析しているなら、そこから再構築できるかも。俺じゃあスペック不足でどうにもならなかったが、本体のお前ならいけるかもな〟


俺本体が希望の念を放った。


マニュが口を挟む。

〝わたしは反対です。可能性の低い救出劇にエネルギーを投入すべきではありません〟


〝可能性が低くても、友人を助けられるチャンスがあるなら賭けるのが人間なんだよ〟と、俺本体。


もちろん俺は、本体がこう答えると分かっていた。

なにせ同じ俺だ。


俺たちは排出口からシャトルテゴラインに再度侵入した。



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― 新着の感想 ―
[一言] 服飾族、邪悪な侵略宇宙人という感じのやり方で名悪役ですなあ
[一言] 面白い 次も楽しみ
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