表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

262/276

第262話 BL展開はありえない

「蒼真、いいぞ、もっと力を込めろ!」


「苦しい……きついって……」


「いいから我慢しろ、ほら、もう一回」


「もう無理だって!」


「ほら、できるじゃねえか! さあ後三回!」


「何で増えてんだよ!?」


 トレーニングルームで朝から励む俺と隼。

 デッドリフト110kgは初挑戦だったが、二回でギブアップしそうなところを五回もやらされた。冗談抜きで心臓が破裂しそうになった。


 そしてスマホ片手に一心不乱で写真撮影をするしーちゃんは、あらゆる角度から俺たちをパシャパシャと撮り続ける。


「いいよお~……二人とも、すっごくいい! 後で羽依ちゃんに送っとくね!」


「……はあ……はあ……好きに……して……」


「羽依ちゃん男嫌いなのにそんなの見て嬉しいのかねえ?」


「あは、こういうのはね、別腹だよ~!」


 とても楽しそうなしーちゃんだけど、いつも夜型の彼女が朝五時から起きてくるとは思わなかった。


 隼は俺とバトンタッチしてバーベルの重りをセットする。


 「ここまで本格的なジムが家にあるのは羨ましいな!」


 そう言いつつデッドリフトを開始する隼。140kgを難なく持ち上げられるのは高校生離れしすぎだと思う。


「うちのマンションにも本格ジムはあるからよ。今度やりに来いよ!」


「そのうちな……つうか……息切れしない……だと……化け物かよ……」


 未だに息も絶え絶えな自分と余裕な隼を比べるのも、いい加減バカバカしくなってきた。


 トレーニングを終え、交替でシャワーを浴びる。


「そーちゃん、そこは二人でシャワーだよ~。ファンサって大事なんだよ?」


「あ!?」


 思いのすべてを一文字に集約して幼馴染にぶつけた。


「そんなマジギレしなくもいいじゃんか。け~ち!」


 べーっと舌を出してしーちゃんは去って行った。やれやれだホント。


 朝食の支度をする。姉さんは遅めの起床なので、その前に完璧に準備をすませたいところだ。


 いつもの土曜日なら、この後に結城道場に向かい稽古をするところだけど、真桜からはもう一人で大丈夫と言われてしまったのだ。

 いわゆる破門というやつなのだろうか。

 俺から連絡をするには気まずすぎる。

 今日をどう過ごすか、そこが問題だった。


「蒼真! 朝飯はなんだ? 腹減っちまったよ!」


「和食にするよ。鮭とだし巻き卵にほうれん草のお浸しだ」


「へえ~。セレブなお屋敷だから朝からステーキとか出るのかと思ったけど、わりと普通なんだな」


「当たり前だろ。そんなのばっか食ってたら病気になるわ」


「はは! 俺は三食肉でも構わねえよ!」


「……しゃーない。ベーコンもつけるか」


「さすがは優秀な召使いだな! ほら、きびきび働け!」


「このやろ……お前も手伝え、この穀潰し!」


 隼は、「へいへい」と皿を準備し始めた。やればできるじゃないか。


 朝食の準備が整ったところで姉さんが起きてきた。


「おはよう~。なんだか大勢で朝食って嬉しいわね」


 朝から晴れやかな笑顔を浮かべる姉さん。一人暮らしの寂しさを知ってるからこそ出る言葉だ。やたらと沁みる。


「いただきまーす!」


 綺麗に声が揃ったところで朝食を始める。


「そーちゃんのだし巻き卵、ほんっと好き! 毎朝食べたいね~」


「ええ、何回食べても飽きない味よね」


「ああ、量がもちっとあればよかったな! まあベーコンが厚いから許す!」


「マジ図々しいな。お前はおかわり禁止な」


「ばっか、おま! そんな酷いことよく言えんな!」


 泣きそうな声で抗議する隼。その情けない表情がまたツボに入ったのか、みんなで笑ってしまった。


「んで、隼。これからマンション帰んのか?」


「ああ、姉さんに帰ってもいいって許可貰ったよ。九条さんのところ泊まったって言ったらめっちゃびっくりしてた」


「そりゃそうだろ……まあ、よかったな。燕さんとじっくり話すんだろ?」


「……ん。まあそうだな。志保さんとも約束したしな」


「大丈夫だよ隼くん。燕さんはきっと最適解を出してくれるよ」


「何を根拠に言ってんだか……まあ、そうしてみますわ」


 そう言って隼は肩をすくめた。

 遥さんが俺の肩をとんとんと叩く。


「蒼真くんは今日どうするの? 普段なら稽古なんでしょうけど、行くとこないならうちに居てもかまわないわよ?」


 そんな優しい言葉をかけてくれる姉さん。でも、俺は――。


「どうしようかなって思ったけど……やっぱ道場行ってみます」


「そう。じゃあ頑張ってね」


 姉さんは穏やかな表情でそっと俺の手を握った。伝わる温もりに、勇気を分け与えてもらった気がした。


 そのとき、LINEの着信があった。真桜からだった。


 真桜「道場に来て。話があるの」


 そのメッセージを見て驚くほど心臓が跳ねた。


 真桜は話し合いの場を設けてくれたのだ。だったら俺は絶対に諦めない。

 世間にどう思われようが、俺の恋人は羽依と真桜だ。

 もう俺は迷わない。誰にも譲らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ