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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第35話 リリィのクラス

 アルセニア魔法学園はアクエリスタン地方中部モルの街にある。


 モルの街は水との共存を掲げている街であり、街のあちらこちらに水路があるきれいな街だ。そしてレイリア王国全土の中でも、有名な観光名所として知られており、常日頃から観光客がにぎわっていた。


 そんなモルの街にあるアルセニア魔法学園では、二時間目の授業が行われていた。


 しかし、訓練生の教室には教師などはいないため、完全な自主練の時間となっている。


 そして授業中だというのに、訓練生二年の教室には大きな人だかりができていた。


 人だかりを構成しているのは、ほとんどが男子生徒であり、人だかりの中心にいる一人の少女に対して、必死に話しかけようとしていた。


 そんな男子生徒たちの中心にいる、きれいな青い髪に青い眼をした幼女は不安そうに周りを見ている。


 「ねえねえ、リリィさんってどこから来たの?」

 「アルーニャってユア様の一族なの?」

 「どんな魔法使うの?」


 ある者は幼女のことを知ろうとする。


 「よかったら一緒に自主練しない?」

 「あっ、てめぇ抜け駆けは許さねぇぞ。俺と一緒にどうですか?」

 「なら、俺とは?」


 ある者は幼女とお近づきになろうとする。


 そしてそんな男子生徒たちの中心にいるのは、青い髪の幼女、リリィだ。


 男子生徒たちは、リリィと近づきたいという下心を全開にして、話しかけていた。


 授業中だというのにこのようなことをしていれば、もちろん教師に怒られてしまう。しかし訓練生の教室に教師はいない。


 「えーっと、えーっと」


 リリィは周りの少年たちの質問に、どうすればいいかわからず、あたふたとしている。それもそのはずだ。ついこの間までダリス大峡谷に住んでいたリリィは、人にほとんど会っていないのだから。


 例え人が来たとしても、対応は大人バージョンに任せたため、リリィはほとんど人と会話をしたことがなかった。とくに男性と。


 このような場合、リリィが大人バージョンになれば話は早いのだが、そうするとウンディーネってことがばれてしまう。


 もしそうなった場合、最悪、退学処分に追い込まれてしまう可能性がある。なのでリリィはセイヤと学園では大人バージョンにならないと、セイヤと約束していたのだった。


 「ねえねえ、一緒に自主練しようよ。僕は上級魔法師一族だよ」

 「俺も上級魔法師一族だよ。一緒に自主練しよう。リリィさん」

 「僕は中級魔法師一族だけど一緒にやろう」

 「リリィさん、俺と一緒にやりましょうよ」


 困ってるリリィに気付く様子もなく、少年たちは自らの欲望を全開でリリィを自主練に誘う。


 少年たちはいきなり転校してきた美幼女に対し、必死に取り入ろうとして暴走仕掛けていた。


 「えっと、えっと」


 そんな困っているリリィを助けてくれたのは一人の少女だった。


 「ちょっと、男子。リリィさん困っているでしょ。ここはクラス委員の私が、リリィさんを案内するから、男子たちは自主練してなさい」


 その女子はきれいな赤い髪をショートカットにした可愛い女の子だ。女の子はリリィに手を差し伸べながら言う。


 「リリィさん、行こう。」

 「うっ、うん。」


 欲望のままにリリィを誘おうとしていた男子生徒たちを注意した少女はきれいな赤い短髪をしている。


 彼女に瞳はそのきれいな髪と同じく赤色で、青い髪のリリィをサファイアというならば、その少女はまるでルビーのようだ。


 しかし男子生徒たちも簡単には逃がしてくれない。


 「おい、待てよ」

 「そうだ、リリィさんは俺たちと自主練するんだ」

 「そうだ、いくらクラス委員だからって横暴だ」

 「そうだぞ」


 男子生徒たちが、リリィのことを連れ出そうとした赤髪の少女に対して文句を言う。


 どうやら彼らの中ではリリィは自分たちと自主練をすることが決定しているらしい。そんな男子生徒たちに対して赤髪の少女が見下すかのように言う。


 「自分の欲望で暴走しないで。それとも、決闘で決める?」


 突如、赤髪の少女から放たれた威圧感。


 それは訓練生のものとは思えないほど洗練されており、男子生徒たちはその威圧感に怯む。


 赤髪の少女はそんな男子生徒たちを無視して、教室からリリィを連れ出す。そして中庭へと移動した。


 噴水がある中庭、その周りにはベンチなどが多数あり、二人はそのうちの一つに座る。


 「リリィさん大丈夫? ごめんね、うちのクラス男子が」


 そんなことを言う赤髪の少女には、先ほどまでの威圧感はなく、とても優しげだ。


 リリィはそんな彼女に対してお礼を言おうと思ったが、彼女の名前がわからない。


 「えっと、その、ありがとう。えっと……」

 「あっ、ごめん。名前、まだだったよね。私はリリィさんと同じクラスで、クラス委員をやっているナーリ。ナーリって呼んで」


 赤髪の少女はナーリと名乗る。

 

 「ありがとうナーリ! 私はリリィ、リリィでいいよ! あと敬語はなし!」

 「そう、じゃあリリィ、よろしくね」

 「うん!」


 この時、リリィはナーリのおかげでいつもの元気を取り戻していた。


 「ところで、リリィはどっかからの転校生?」

 「違うよ」

 「じゃあ魔法学園は初めて?」

 「うん!」


 リリィが魔法学園が初めてだと聞くと、ナーリは急にお姉さんのような雰囲気を纏い、リリィに提案する。


 「そっか、じゃあ私が案内してあげるよ」

 「本当? ありがとう!」

 

 その後、二人は二時間目の時間を使い学園中を歩き回った。


 途中、ナーリたちの担任の教師に見つかってしまったが、事情を説明すると案内を認めてもらい、二人は堂々と学園中を探検することができた。


 二人が一通り学園中を見終わると、ちょうど二時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。


 「中休みだ。教室に戻ろうか、リリィ」

 「あっ!」


 中休みという単語を聞いてあることを思い出すリリィ。


 「どうしたの、リリィ?」

 「リリィ、中休みになったら学園長室に行かなきゃいけないの。入学のあいさつとかで」


 リリィの言う通り、リリィとセイヤは中休みにあいさつのため校長室に呼ばれていた。それを聞いたナーリは理解したようにリリィに聞く。


 「学園長室の場所はわかる?」

 「わかんないけどその前に行くところがある!」

 「どこへ?」

 「えっとね、二年A組!」


 リリィはセイヤと合流して校長室に行く予定となっていたため、まずはセイヤのところへと向かう。


 「そっか。場所は大丈夫?」

 「なんとなくわかるから大丈夫!」

 「じゃあ私は教室にいるから、終わったら教室に来てね」

 「ありがとうナーリ!」

 「いいよ、友達なんだし」

 「うん!」


 そう言って二人は別れる。


 ナーリは教室に戻り、リリィはセイヤのところへ行くために校舎へと入る。


 セイヤの位置は契約の副産物でなんとなくわかるため、リリィは迷わずにセイヤの下へと向かう。


 そして、盛大にやらかすのだった。


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