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魔王になって復讐を  作者: 桐生紅牙
魔王の誕生
12/13

激怒と惨劇

グロ系が苦手な方は途中を飛ばしてください。



 俺たちは領主の屋敷に到着した。

 屋敷と言っているが大貴族だけあって、その外観はもはや城と表現した方がいいだろう。

 門をくぐり屋敷の中に入ると、内装も絢爛豪華という言葉が浮かぶほど贅が尽くされている。

 しばらく廊下を進むとひとつの部屋に通されたが、その部屋は護衛を控えさせるためか広くはあるが、さっきまで見せていた豪華さはなりを潜めている。

 おそらく、歓迎されない客を通したり荒事が起こっても問題ない部屋なのだろう。


「貴様らはここで大人しくしていろ、領主である父を呼んでくる」


 レイアの兄がそういって部屋を後にする、もちろん兵は俺たちの監視のために扉の外に残っている。

 すると何者かの気配がこの部屋に向かってくる、スピードから考えてかなり急いでいるようだ。

 気配の主は部屋の前に来ると、そのままの勢いで部屋に入ってくる。


「無事でしたか姉上!」


 部屋に入ってきたのは吸血鬼の男で、レイアと同じ髪と瞳の色をしている。

 長男は金髪碧眼で姿も似ていなかったので兄だとは思わなかったが、この男はどことなく似ていてレイアの兄弟だと分かる。

 よほど急いでいたのか息を切らせているが、レイアの姿を見て安堵の表情を浮かべている。


「久しぶりですねクラウド、お母様は元気にしていますか?」


 レイアがそういうとクラウドと呼ばれた男は勢い込んで話してくる。


「母上は姉上が奴隷に落とされたと知って寝込んでおります。それよりも何処に居たのですか、私もできる限りの伝手を使って探していたのですよ!」


 どうやら一族の中にはレイアを奴隷にすることに反対の者もいたようだ。

 詳しく話を聞いてみると男の名はレイアも呼んでいたようにクラウドといい、レイアの弟であるそうだ。

 髪や瞳の色が長男の男と違うのは、レイアとクラウドの母親は第二夫人で、長男の男は第一夫人の子供であるからだ、ついでに言っておくと第一夫人にはもう一人男の子供がいてレイアよりも年上らしい。

 レイアを奴隷にして売ることにしたのは父親の領主と第一夫人、長男と次男の二人、私兵を指揮している親族でクラウドと第二夫人だけは最後まで反対していたが、家長として領主が決めてしまったために逆らえなかったらしい。

 売ることは止められなかったので、自分たちでレイアを買おうとしたが領主たちに妨害されて何処に居るかも分からなくなっていたらしい。

 次にレイアが話をする。


「私は奴隷にされた後に首都の奴隷商に連れていかれ売られていましたが、死の呪いがあるために売れ残っていました。そのまま売れ残っていれば呪いで死ぬだけでしたが、ご主人様である夜行様に買われて、今は呪いも解けています。ここに来たのは傭兵として依頼を受けたからです、なので依頼が終わればまた出ていきます」


「そんな、呪いが解けたのならば戻ってくることもできるではありませんか、母上もその方が喜ばれます」


「私は父上たちを恨んでいますし、許すつもりもありません。それに私はいやいや従っているのではなくご主人様を愛しています。心配してくれたクラウドや母上には申し訳なく思うけれど、私は前よりも幸せなんです」


 クラウドはレイアの話を聞くと目を見開いて驚き、次いで険しい顔でこちらを見てくる。


「ヤコウさんといいましたか、姉上の呪いを解いていただいたのは感謝していますが、私は姉上があなたといるよりも家に帰る方が幸せになれると思っています。あなたはどう思いますか?」


 こちらに向けている顔にも敵意が浮かんでいるが、それ以上に魔力を使ってこちらを威圧してくる。

 敵意を向けレイアを連れて行こうとするならレイアの弟で奴隷にすることを反対していたことを鹹味(かんみ)して死なない程度に思い知らせてやろうとする。


「そちらがその気なら俺にも考えが」


 俺はそう言って魔力を解放しようとした瞬間に部屋の扉が開けられる。

 そこには俺たちを連れてきた長男と長男と同じ金髪碧眼で壮年の男がいた。


「これは何の騒ぎだクラウド」


 熱を感じさせぬ声で壮年の男が言うと、クラウドが青ざめる。

 感じる気配とクラウドの様子から考えるとかなりの実力があるようだ、恐らく眷属になったことで進化した、レイアとサリアと同等か少し上だろう。

 これから戦闘に発展する可能性が高いので鑑定をかけておく。


ステータス

名前:ジルドレ・スカーレット

種族:最上級吸血鬼

称号:『魔将』『辺境伯』


スキル:【再生】【吸血】【身体変化】【火魔導】【闇魔導】【詠唱破棄】【身体強化】【剛腕】【大剣】【指揮】



 どれも見たことのあるスキルであるが、一人がこの数だけ持っているのは眷属の二人以外は初めてである。

 さらに種族は最上級魔族で今まで出会ったことはないが、スキルを抜きにすれば上級のレイアよりも身体能力は高い。

 魔王に長く仕えることで手に入る『魔将』があるので戦闘経験もかなりあるだろう。

 俺が観察しているうちにクラウドが返事をする。


「何も騒ぎは起きておりません、話に熱が入っただけでございます父上」


「・・・ならばいい、私はこれからそこの傭兵と話がある控えていろ」


「わかりました、父上」


 クラウドが下がるとレイアの父親であるジルドレがこちらを見てくる。

 視線は一通り俺やサリアを観察した後にレイアに向けられるが、娘に対する感情はない。

 そして口を開く。


「そこの男はその女とレイアを置いて失せろ」


「それはどう言うことでしょうか?」


 俺は感情を抑えて、相手が辺境伯として敬語を使う。


「聞こえなかったのか、その女とレイアを置いていけ。女はかわいがり、レイアは私が有効に使う」


 その瞬間、俺の中で何かが切れる音がして、抑えていた感情が荒れ狂う。

 

「ふざけたことを言うな老害が、貴様ごときに二人を渡すわけがないだろうが」


「貴様、傭兵の分際で辺境伯である父上に対して無礼だろう!」


 長男は怒り、クラウドは青くなっている。

 ジルドレは顔に感情を浮かばせていないが、魔力を発して怒りの雰囲気をまとっている。


「不遜だぞ小僧、その命を持って償え<ダークウェポン>」


 そういうと同時に、黒色の大剣を右手に出現させて斬りかかってくる。

 闇魔導で創り出したようだ。

 上からの斬り下しをソファーに座っていたため変則であるが居合術を使い、刀を抜く動作で受け流して、首を斬りつける。

 ジルドレは俺の斬りかかりを避けようとするが、避けきれずに浅く首に傷を負う。

 しかし再生のスキルによって傷はすぐにふさがり、こちらを窺ってくる。


「どうした老害、俺を殺すんじゃないのか?」


「調子に乗るなよ、小僧が!」


 俺に首を斬られたことがジルドレの怒りに火をつけ、さっきまでの無表情がうそのように怒りを顔に浮かべている。

 ジルドレの攻撃を刀で受け流し、翻弄する。

 周りから見ているとジルドレの大剣が自ら避けているように見える。

 そうしてジルドレが俺に傷を負わせることができずに焦れて、隙ができた瞬間に両手を斬り飛ばす。

 ジルドレは距離を開けようとするが、即座に詰め寄って今度は両足を斬り飛ばす。

 四肢を失った状態になっても、今度は魔導を使って攻撃しようとしてきたので、顔面を蹴り抜き魔法名を言えないようにする。

 しかし再生のスキルがあるため、このままだと元に戻ってしまうので魔族の弱点である光魔導と火魔導を混ぜて使い、再生できないように傷口を焼く。

 この時、長男が逃げ出そうとしていたので、術理魔導で重力を操り動けなくする。

 周囲にいた兵たちはレイアとサリアがすでに倒していた。

 俺はジルドレが魔導をつかえないように、再生するたびに顔を蹴りつけながら、呆けているクラウドに声をかける。


「お前も俺に敵対するか?」


 俺に声をかけられ、気が付いたクラウドは顔を蒼くさせて何度も首を横に振る。

 今回は明確に敵対するわけでもなく、レイアを思っての行動であったので見逃してやろう。

 

「レイア、サリア、クラウドを連れて母親の場所に行っていてくれ、俺は少し片づけをしてから向かう」


「ヤコウさんだけ残してはいけないですよ」


「そうですご主人様、私も残ります」


「すぐに済むことだし、早く無事な姿を母親に見せてやれ。サリアは俺たちのことを話しておいてくれると助かるんだが」


 二人は渋っていたが、何とか説得してクラウドとともに部屋を出てもらう。

 これから起こることは二人に見せたくはないのだ。



 ジルドレに目を向けると再生しだした顔に、まだ俺への殺意が浮かんでいる。

 長男と同じように重力を加え、自身の体重で内臓がつぶれ悲鳴を上げることすらできないようにする。

 動けないようにしただけなのに魔法を使うこともしない長男に近づいていく。

 俺が近づいてきたことに気付いた長男の目に恐怖が浮かぶ。

 必死に逃げようとしているが四肢を斬り飛ばしたあと再生しないようにする。

 動けなくした二人を並べる。

 この時点で音を聞きつけた使用人や兵士が様子を見に来ていたが、顔を蒼くするだけで何もしてこないので無視する。

 並べた二人に声をかける。


「今からお前たちを交互に剣で刺していく、魔力が切れて再生しなくなったら終わりにしてやろう。今回はレイアの一族ということで、これで許してやるが次はないからな」


 そして宣言通りに刀で全身をめった刺しにしていく、長男のほうが魔力が少なく先に再生しなくなった。

 ジルドレを刺しながら様子を見ると、死なない様に気を付けていたので魔力が戻るころには魔導の効果も切れているので全身元に戻るだろう。

 目が死んでいるが気にしない。

 ジルドレも再生しなくなったので部屋を後にする。

 今からレイアの母親に挨拶をしなければならないのだ。



 部屋に残ったのは四肢のない長男とジルドレ

 顔を蒼くさせた使用人や兵士

 声を出す者や音を立てる者すらいない

 これが魔王を怒らせたものの末路

 しかし夜行はまだ魔王として知られてはいない

 使用人や兵士は、最上級魔族を一方的になぶっていた少年の背中に

 視線を向ける

 その眼には、恐怖と畏怖が浮かんでいるが

 化け物を見る視線と変わらないものがあった


騒動のその後



今回は少しだけ戦闘描写を書いてみましたが、うまく書けないものですね。

夜行は切れていますが、まだまだ余裕があります。

今回見逃したのも、いつでも殺せると分かったから、という理由もあります。


戦闘は強い夜行ですが、次の話でレイアの母親相手にどうなるのか

テンパっている夜行というのも書いてみたい気もします。

悩みどころです。


評価数が昨日と比べて、いつもより多く増えていたのでびっくりしました。

読者の皆様に感謝を

ありがとうございます。

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