8今までの婚約(3)
そして4回目の婚約は1年前。私が21歳。もうかなり無理がある気もするけどそこはティートン侯爵家の力をごり押ししたみたい。
相手はチャーリー・ラーション伯爵。
彼はお父様が体調を崩して爵位を引き継いで2年でラーション伯爵家は領地経営が傾いてかなりの借金があった。
そこにうまく話を持って行ったわけ。お父様さすがです。
お見合いは王都のレストランでお父様と私とチャーリー様。
資金援助の申し出にチャーリー様が二つ返事で婚約を受け入れた。
ラーション伯爵家は王都に近く朝出発すれば夜には着く距離で私は婚約が整うと早速伯爵家に行儀見習いとして入った。
もちろんメルディとグンネルが同行する。
ラーション伯爵家は領地で違法薬物の栽培をやっているらしい嫌疑がありその場所の特定と取引の証拠を押さえたかった。
ここもロドミール商会の息がかかっているのはほぼ間違いないとの事。
ロドミール伯爵家は困っている貴族に無理な交渉を持ち掛けあくどい商売で金を稼ぎそのお金を宰相のノーマン・シュバック公爵に貢いでいるらしい。
ノーマン・シュバック公爵は次期国王を甥のハロルドにするため貴族を買収しようとしているのだ。
ラーション伯爵家もお金に困ってこんなことをしているのだろうが、決して許される事ではない。
私達はラーション伯爵家に来て3か月目にやっと薬物栽培の場所を見つける。
そして取引の日時を突き止め摘発予定。
その間チャーリーからの猛攻撃を避けるのに大変だった。
だって一緒の屋敷にいるせいで彼は26歳で元気の盛り。
爵位も継いだ伯爵だから、結婚式まで待たなくてもいいだろうとそれはもう押しの一手で。
それに4回目の婚約って言うこともあって初めてではないと思われていて彼は積極的。
~伯爵家に行って1週間目あたり
「アンドレア。どうだろう?今夜、僕の部屋に来ないか?」
「チャーリーそれはいくら何でも出来ませんわ」
速攻でお断り!
~またある時は
「週末はホテルにでも泊まって美味しい物でも食べて行ってゆっくり過ごさないか?」
「ごめんなさい。週末は実家に帰るんです」
~はたまたある時は
「両親も孫の顔が早く見たいと言ってるんだ。結婚式は後にして籍を先に入れよう」
「チャーリー、それは父にも相談が必要です。早速明日にでも相談してみるわ」
もちろん父から断ってもらった。危ない‥
~これは摘発前日
「だって僕はこんなにアンドレアが好きなんだ。いいだろう?何もおかしい事は言ってない。好きな女を愛したいだけなんだ」
「そ、それはうれしいけど‥そんなの困るわ」
「アンドレア‥今夜は離さないから」
チャーリーはとうとう私を抱き上げて部屋に連れて行った。
「きゃぁ~メルディ助けて!グンネルすぐに来てちょうだい!」
そう言いながら私はチャーリーの脇腹に蹴りをぶっこむ。
チャーリーがお腹を押さえている間に素早く部屋の外に出て叫んだが強い力でまた部屋に引き込まれた。
グンネルが慌てて夫婦になる予定の寝室に入って来て捕まった私の腕をチャーリーから引きはがしてくれた。
それもかなり力を加減して。
「旦那様、お嬢様は生娘です。こんなことをするなんて恥ずかしくないんですか!全く。お嬢様に嫌われても知りませんよ!」
グンネルの一言は相当効いたらしくわたわたと慌てふためいた。
顔色は悪く私の目の前で跪いて許しを請うチャーリー。
「悪かった。僕はアンドレアが好きすぎて‥だから、傷つけるつもりはなかった。許してくれるかいアンドレア?」
私はそんなチャーリーの手を包み込むとにっこり微笑んだ。
「もちろんよ。気持ちはすごくうれしい。でも、待ってくれるわよね?」
「ああ、もちろんだよ。でも、結婚式は年内でいいだろう?もう教会に式の予約を入れてあるんだ。ウェディングドレスも予約して‥そうだ!明日は王都の宝石店に行って指輪を予約しよう。なっ、アンドレアそうしよう?」
「まあ、チャーリーったらすごくうれしいわ」
その翌日一斉摘発となった。
ラーション伯爵一家は監察局員に捕まった。
そして伯爵領の3分の1を没収され子爵位に落とされた。
罰金も10年間払うらしい。
お父様もかなり気落ちされたが一緒に違法薬物の栽培をしていたのだから仕方がないだろう。
爵位剥奪は許してほしいとお父様に頼んだのは私とメルディとグンネルだった。
だって、チャーリーはほんとはいい人だったからせめてもの償いだった。
摘発されて監察局で私が暗示を解くとチャーリーは私を散々けなし罵詈雑言を並べ立てた。
まあ、あの甘い言葉はすべて暗示のせいだってわかってたけど。
私だってあの後チャーリーに同情したせいで自己嫌悪にもなった。
それを考えると潜入捜査ってホントに大変だと思う。
ティートン侯爵家で働くみんなには改めて敬意を表した。
ちなみにほんの一部の人たちを紹介するわ。
グンネルは私の護衛も務めるけど基本は小隊の隊長。魔力は土や木を操れるって言ったわよね。
彼が率いている小隊の隊員は4名。
・ボリ。皮膚攻撃が得意。いきなり全身がかゆくなったり火傷したみたいにヒリヒリ痛みが走ったりさせれる。あっ、くすぐりも出来るみたい。
・アイス。名前の通り氷攻撃が得意。数人を一気にフルーズするのは圧巻だ。
・ジンジン。雷攻撃が得意。痺れさせて敵を倒す。たまに疲れた時腰にものすご~く弱いビリビリをしてもらうとすごく気持ちがいい。
まあ、ジンジンの機嫌が相当いいときしかしてもらえないけど。
・ピチュ。水魔法が得意。ピチャがなまってピチュになった。あっ、これ私が言い始めたんだけどね。
一気に噴き上げる水柱は数十メートルにもなるので追っ手から逃げるときにはすごく頼りになる。まあ攻撃もすごいんだけど。
みんな20代男性。時には変装して女にもなったりもする。
私に取ったら絶対に信頼できる仲間。
今回のエークランド辺境伯の任務もこの小隊で動く手はずになっている。
何だか最初につまずいた感じでこの先が心配なんだけどきっとみんなが力を貸してくれるはず。
頑張るしかないよね。
私はやっと嫌な記憶を思い出すのをやめて目を閉じた。




