27みんながおかしくなった
私はロベルト様から言いたい放題の事を言われてひどく腹を立ててあの屋敷を出た。
何よ!私は良かれと思って‥
ロベルト様はルシア様が心配だろうと。
ううん、これは任務私情は禁物よ。被害に遭った女性を救った。ただ、それだけの事。
彼は被害者の関係者で少し、いやかなり熱くなっただけなんだもの。
もう、私ったらつい感情的になったわ。
ロベルト様はただの潜入捜査のためのおとり。
そんなことわかってたはずよ。
最初は嫌な奴と思った。
でも、一緒にいる時間が増えて行くと意外と紳士的なんだと思った。
今までの婚約者とは全く違う彼の態度や優しさに心は緩んで行った。
だから‥もしかしたらって。
胸にずっと隠していた彼への気持ちがむき出しになって行く。
ロベルト様が好き。
次第に今度の婚約は‥なんて思い始めていて。
もぉ、ばかばかばか!!
ティートン侯爵家の者としてこれじゃあ失格だわ。
はぁぁ~しっかりしなさい。
ロベルト様を後にして走り出すと私はぐしゃぐしゃになった気持ちを叱咤した。
そうよ。私にはメルディもいるしグンネルやアイスにボリもいるんだから。
ロベルト様なんかいなくたって平気なんだから。
今までだってそれで良かったんだから。
馬は少し離れた場所にいたが3頭だったのでグンネルとメルディ。アイスと私。ボリにわかれて馬に乗った。
「アンドレア大丈夫か?」
アイスが優しく私を気遣ってくれた。
「も、もちろんよ。それよりあなたは?」
「まったく問題ない!さあ、帰ろうか」
「ええ」
アイスは先に私を馬に乗せると前に乗った。
王都までは少しかかる。
王都中心街は建物が密集しているが少し離れれば家は点々としてまばらにしかない。ところどころには林があり牧草地帯や麦畑などが広がっている。
私は緊張がほどけたせいかアイスの背中にもたれながらまどろみそうになった。
「疲れただろう?でも寝るなよ。ほら、しっかりつかまれ」
アイスにそんな事を言われ私はアイスのお腹に回した手に力を込めた。
ほっと息を吐く。
いつも安心できるあったかい背中に頬をこすりつけた。
「あ、アンドレア?」
少し強張った声でアイスが呼ぶ。
「なに?」
「‥いや、何でもない。帰ったら話がある」
「改まって何?」
「いいから、帰ってから言う!」
アイスが珍しく動揺したように言ったがその時はそれ以上突っ込むきにはなれなかった。
しばらくしてアイスがこっくりこっくりと首を揺らした。
「アイス?大丈夫?」
アイスも疲れてるだろう。だって昨晩も見張りでほとんど眠っていないはず。それにあんな騒動もあったのだ。
「‥‥」
返事が返ってこない。
あれ?ほんとに大丈夫なの?
「アイス?」
もう一度さっきより大きな声で呼ぶ。
突然ががばっとアイスが身を起こしたので私は後ろに倒れそうになりぎゅっとアイスの腰を掴んだ。
「おまえを殺す!」
振り返ったアイスの瞳がぎらぎらしていて恐い。
「なっ!何を言って‥」
頭の中がぐるぐる回って何が起こっているかわからない。
それでも馬で走ったまま。なのにアイスは構わず腰に差していた剣を抜いて私にめがけて振り回した。
私は上半身を後ろに反らして反転して馬から飛び降りる。というか落ちた。
勢いのある馬のせいで身体がバランスを失ってしまいそうになったが何とか地面に着地出来た。
「やめて!何するの?アイス。アイスどうしたの?」
そう叫ぶがアイスは私が馬から飛び降りたのを見て慌てて馬の手綱を引き馬を止めると飛び下りて来た。
みればグンネルの馬も勢いよく止まった。
ボリの乗った馬も同じように勢いよく止まってみんなが殺気を帯びた目つきで私に迫って来る。
「何?どうしたの。みんなおかしいわ。な、なにを‥」
みんなの視線が恐くてじりじり後ろに下がる。
どうやらさっき着地した時、少し足首をひねったらしくじくじくと痛みが押し寄せても来る。
どうしよう‥このままじゃ私。
「メルディ?ねぇ、メルディどうしたのよ。もう、みんなしっかりして!」




