575.寂しくなる(シャルロッタ視点)
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☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(シャルロッタ視点)
料理長が上層に行っている間、私は中層の厨房で部下らに指示を飛ばしていた。料理長はカティアちゃんとピッツァを作りたいからって、私に仕事を押し付けるんだから!!
カティアちゃんと料理……私だってしたいのに!! カティアちゃんは、料理長との御名手の儀式の時に盛大に祝福してくれたから……恩人のような子だけど、料理の腕前もピカイチ。
加えて、あの美貌よ? 陛下方とのご親戚だから下手な輩は手出し出来ないだろうけど……閣下がまず真っ先に動いていそうだわ。あの方は、おそらくカティアちゃんを必要以上に思っていらっしゃる。むしろ、お似合い過ぎて御名手だと打ち明けられても納得しそうだわ。
料理長は純粋にカティアちゃんの料理の腕前を尊敬してるから、習いたいだけ。私でもそこは理解出来る。
だけど……ちょっと寂しい。
いつもなら、料理長の尻を叩く勢いでいる私なのに、婚約してからこんなにも寂しさを覚えるだなんて……私、ちょっと弱くなったのかしら?
「シャル」
ほら、今料理長の声が聞こえてきただけで、嬉しさが浮上するわ。……料理長の声??
振り返れば、料理長が何故か花束を抱えて戻って来られていた!?
「お、おかえりなさい。料理長」
「おう。ちょっといいか?」
「え? まだ仕事が」
「少しだけだ。奥に行くぞ」
「え、え?」
クイっと手を掴まれて、引きずられていくように奥へと連れて行かれる。休憩室じゃなく、奥の厨房管理室へ。何をするのかさっぱりわからなくて驚いていたが……中に入ってから、料理長は私をようやく離したかと思えば花束を掲げて跪いた!?
「シャルロッタ。御名手でもある貴殿に改めて申し込みたい……俺と結婚してくれないか?」
誰、この別人なまでの料理長は!?
びっくりしたけど……誰かの入れ知恵にしても、わざわざ料理長がこんな素敵な申し込みをしてくれるのに、私は少し涙が出た。
嬉しくて……嬉しいから、私は理由とかを聞く前に頷いた。
料理長は破顔する勢いで笑顔になり、私を花束ごと抱きしめてから……これでもかと口付けされて酸欠になりそうだったわ!!?
「……イシャール様。誰から、こんな演出を教えてもらったんですか?」
落ち着いてから……呼び方を肩書きじゃない方で呼べば、イシャール様は『あー』と頬をかきながら答えてくださった。
「カティアだ。つか、さっきなんだがエディがセリカに神王妃への申し込みをしたいと告げてな。あいつは倒れたが、まあ大丈夫だろう」
「そこにカティアちゃんがどう関係が?」
「あいつの故郷の習わしだと。御名手とは別に婚姻の申し込みをするもんがあるらしい」
「……なるほど」
カティアちゃんに嫉妬する理由はこれっぽっちもないわね。気遣い上手の彼女が、私たちの仲を壊すわけがないもの。
そしてその後、イシャール様が告げてくださったのには大変驚いたわ!?
「あいつはゼルと御名手になってんぞ?」
「えぇえ!?」
予想はしてたけど、本当だって信じられなかったわ!!
次回は水曜日〜




