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顔だけ王子の奴隷は卒業します!~私も運命の恋人を見つけましたので、お構いなく~  作者: ひよこ1号


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メグレンの帰還とお菓子争奪戦

心の底から純粋に喜ぶ二人を前に、やっと一段落した、と気づいたメツィアは漸く手土産の箱を手にした。

リリアヴェルが命じて、急遽用意されたお菓子類である。

使用人達が急ぎ王都中の菓子店を走り回り、ものによっては公爵邸で作り上げた渾身のお菓子だ。


「魔女様方、こちらはリリアヴェルお嬢様からの御土産でございます。どうぞ、御納めくださいませ」


「ああ、良いな。流石はりりだ」


嬉しそうに受け取ったのは慣れ親しんだリーシアで、アディラも胸の前で小さくぱちぱちと拍手をする。


「嬉しい!食べてみたかったのよね!」


引きこもりのアディラは、客人が来ない限りは森の外へは出ない。

たまに訪れるのもリーシアくらいである。

それも、年に一度あるかないか。

リーシアから、リリアヴェルと彼女の用意する菓子の話は聞いていた。

まるで物語に出てくるお菓子が、現実に目の前に現れたような、そんな嬉しさである。


嬉しそうに菓子を並べる魔女と、新しく紅茶の準備をするメツィアを見て微笑んだリリアヴェルは、ハッとその目をまあるくした。


「いけませんわ!外では騎士達がメグレン様のお帰りを今か今かと待っている筈です。急ぎ、帝国へとお戻り頂かないと」


「ああそうだった……君とまた離れるのは辛いが……」


名残惜しそうに抱擁をして、メグレンは大きな武骨な手でリリアヴェルの柔らかい頬をそっと包んだ。

見上げてくる蜜を含んだような瞳も、膨らんだ可愛らしい丸い頬も、果実のように潤った唇も全てが愛おしい。

メグレンは理性を総動員して、色々と堪えた。

母の元侍女であるアニエスの殺気も感じたので。


「アニエス。メグレン様を森の外までお送りして」


「は。仰せの通りに」


「ヴェリー、君も帰らないとならないだろう」


メグレンはせめて森の外までその柔らかな手を引いて行きたかった。

リリアヴェルとて、メグレンの姿を森の中に見ながら帰りたい気持ちはある。

けれど、とリリアヴェルは申し訳なさそうに、眉根を寄せた。


「わたくしは、ここで少し魔女様達とお話がございますの。どうぞ、メグレン様はお急ぎになってくださいませ」


「む……そうか。ならば、仕方ない。アニエスはまたここに戻らせよう」


「はい。どうか、お気をつけてお戻りください」


もう一度強く、ぎゅうと別れの抱擁をしてメグレンは後ろ髪を引かれるような思いを断ち切るように、外へと続く扉を開けた。


「では魔女殿、失礼する」


「はーい。気を付けて帰ってね」


既にお菓子を頬に詰め込んだアディラが、元気よく手を振って見送った。

その横ではすっかり菓子に魅了された様子のキャスリーも口を動かしている。

リーシアは慣れたもので、優雅に紅茶を片手にしつつ、味わうように菓子をつまんでいた。


扉の外に出たリリアヴェルは、歩き去るメグレンを見送る。

森に入る前に一度だけ振り返り、メグレンは大きく手を振った。

リリアヴェルも応えるように小さく手を振り、広い背中が暗い森に消えるまでじっと見守る。


「さあ、中に戻りましょうメツィア」


「はい、お嬢様」


後ろで控えていたメツィアを伴って戻れば、アディラとキャスリーが菓子の取り合いをしている。

どうやら好きな菓子が被っていたらしい。


「ちょっとくらいいいじゃないの」


「嫌よ!これは私のだもん。あんた悪い事しかしてなかったでしょ!」


割と普通の女の子、みたいに騒ぐ魔女達にリリアヴェルはふふっと笑い声を立てた。


「お気に召したのでしたら、またお贈り致しますわ。ちょうど、新年度版の菓子目録スイーツ・カタログも出来ましたのよ」


用意してきたのは、リーシアとアディラ、二人分だけではあるが、さすがにゲルガン帝国まで送る販路はまだないので、仕方がない。


「いいなぁ」


唇を尖らせながらその菓子目録スイーツ・カタログを横目に見ていたキャスリーには新たな地獄が始まると、その時は気付けなかったのである。


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― 新着の感想 ―
地獄。 あー。 砂糖漬け地獄ですね、わかります。
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