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顔だけ王子の奴隷は卒業します!~私も運命の恋人を見つけましたので、お構いなく~  作者: ひよこ1号


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魔女の道案内

森に踏み入るリリアヴェルの背を守るように、護衛侍女のアニエスと侍女のメツィアが続く。

強い愛を抱く婚約者と彼女に忠心を持つ女性達に命運を託して、ラウレンツは長期滞留用にと天幕を用意させ、見張りに立つ騎士達の予定を組み始めた。

天幕を中心に、合図が見える範囲に騎士を配置し直し、交代時間を決める為だ。

休息も取らせなければ、騎士達の士気にも関わるし、いざという時に機動力を欠いてしまう。

黒々とした森は、漸く明るみ始めた空を覆うようにそびえていた。


森に分け入ったリリアヴェルは、迷う事なくずんずんと森を進んでいく。

いつの間にかそんなリリアヴェルの前には、光を灯した虫がふわりふわりと導くように飛び始めた。


「まあ、道案内をしてくださるのね!」


リリアヴェルの明るい声に、メツィアの優しい声が応じる。


「これは……北の魔女様の遣いでございましょうか」


「ええ、そうね、多分そうではないかしら」


もう五年にも前になるが、初めて北の魔女の住まう黒羊の森に出向いた時にも、同じように案内を受けたのだ。

たとえば北の魔女(リーシア)が此処にいるとしたら、メグレンは酷い状況にはない筈だと思いたい。

もしも、これが魔女の定番の道案内だとしても、少なくとも黒檀の森の魔女は追い返す気は無いという事だ。

少しの希望が胸に点り、リリアヴェルは歩を速める。


一刻も早く、メグレン様のご無事を確認しないと……。


離れ離れになるというだけで泣き崩れていたのだが、いざ離れてみるとそれどころではないのである。

まず泣く前に探し出さなくては、安心して泣けないというものだ。

リリアヴェルはふんす、とやる気を漲らせて、根が這って歩きにくい森の道をものともせず奥へと突き進む。

夜が明け、空が白み始めた頃に、漸く開けた場所に出て。


「まあ……何て立派な樹なのかしら……」


丸く周囲を開けた短い下草の広場に、見上げる程に大きな黒檀の樹がどっしりと生えている。

その前には、儀式に必要な祭壇と、ぽつんと黒い枝が一本取り残されていた。

メグレンが持ち帰る予定の枝だ。


「これは……あら?」


だが、祭壇の前には帝国の貢ぎ物と思える豪奢な箱も置かれている。

それは、メグレンが無事此処までは辿り着いたという事。

そして持ち帰る前に何かがあったのだ。


「まさか、魔女様の裏切り……」


アニエスが押し殺した声で物騒な事を口にして、リリアヴェルの背を見つめた。

リリアヴェルはといえば、ふむ、と考え込んで、背後のアニエスとメツィアを振り返る。


「いいえ、アニエス。斯様な事があれば、此処まで道案内はしてくださらなかった筈です。きっと魔女様にも何かご事情がお有りなのでしょう。それは直接確かめないとなりませんわね」


にっこりと穏やかに微笑んで、リリアヴェルは自身を鼓舞するように心の中で唱えた。


きっとメグレン様はご無事でいらっしゃるわ。


それ以外を考えないようにして、再び踵を返す。

石と木で造られたこじんまりした魔女の家が樹の横にちょこんと佇んでいた。

その家の苔と蔦に覆われた煙突からは、もくもくと煙が上がっている。

窓からも優しい明かりが漏れていた。


さくさくと草を踏みしめながら、リリアヴェルは魔女の家に向かって行く。

アニエスは武器に手をかけ警戒しつつ、メツィアは魔女への手土産の箱を大事そうに抱えなおした。


こんこん、と木の扉をリリアヴェルが叩く。

暫くして、中から聞こえてきたのは、愛しいメグレンの声だった。


「お入り」


「メグレン様……!?」


キィ、と音を立てて勝手に少し開いた扉を、リリアヴェルは勢いよく開いた。

中からは温かい空気が流れ出でて、穏やかな明かりの中には探し求めたメグレンがいる。


わくわく!

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― 新着の感想 ―
むむ。ホントにメグレン~?? メグレンならもっとこう「お入り」なんて言わず「ヴェリー!」つって飛び出して来ない?
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