皆様、おまかせくださいませ!
メグレンとのダンスをし、帝国貴族達の挨拶を受け、リリアヴェルは王族の女性専用の休憩室にいた。
休憩室には専用の御不浄や化粧台も完備してあり、柔らかな長椅子やお茶を飲めるように卓もある。
窮屈な靴も履き慣れているが、長椅子に座ったリリアヴェルの足を侍女達がせっせと揉み解してくれる。
髪も整え、化粧崩れが無いかも念入りに確認して、必要な個所があれば手直しもされた。
その間、いつも通りリリアヴェルは黙り込む事なく、メグレンの素敵語りに花を咲かせている。
侍女達も慣れたもので、にこやかに相槌を打っていた。
そこに扉を叩く音がして、扉の近くにいる侍女が廊下の騎士と言葉を交わしてリリアヴェルの元へ歩み寄った。
「リリアヴェル様にご挨拶をしたいと、ご令嬢方がお外に詰め掛けておりますが、どう致しましょう」
「アニエス、警備上の問題はありませんか?」
リリアヴェルが厳しい顔をしたアニエスに問えば、渋々ながらアニエスは頷いた。
「警備上は問題ございませんが、お疲れでしたら断っても差し支えございません」
「でしたら、お通ししてくださる?」
さっと靴を履かされて、ドレスのスカートの形も直され、リリアヴェルはしゃんと背筋を伸ばした。
入り口から入ってきたのは、煌びやかな帝国のご令嬢達だ。
皆、年若い令嬢ばかりで、中にはメグレンの妃候補に挙がった者もいるだろう。
長年、メグレン様に恋い焦がれていた方もいらっしゃるに違いないですわ!
ここは気合を入れて、是非、わたくしにお任せ頂けるように安心して頂かないといけませんわね!
リリアヴェルはキッと眉を吊り上げて、ふんす、とやる気を漲らせた。
斜め上の方向に。
「皇太子殿下とのご婚約、誠におめでとうございます」
先頭を切ったのは、帝国の公爵令嬢達で、寿ぎの言葉と共に優雅な淑女の礼を執る。
値踏みするような目や、探る様な視線を浴びせられて、リリアヴェルは確信した。
やはり、そうですのね!?
わたくし、今試されているのですわ!!
メグレン様への愛を!
「わざわざお祝いの言葉をありがとう存じます」
リリアヴェルも立ち上がり、帝国式の淑女の礼を優雅に返す。
「今日、改めて皆様が、こちらに足を運んで下さった理由は、存じております」
先手を打ったリリアヴェルの言葉に、皆が背筋を凍らせた。
まるで、以前お茶会を開いた時の、皇后の厳しい姿を彷彿とさせる切り口だったのである。
嫌がらせをしようとしたのが、こうも早速バレたのか?
それを見に来ただけなのに、罪に問われるのか?
そう令嬢達が慄然としている所に、リリアヴェルが微笑みながらぶっこんだ。
「メグレン皇太子殿下は、今世紀最高の殿方でございます」
!?
一同は固まった。
えっ?と間抜けにも声を上げてしまった令嬢さえ、いる。
「皆様が恋い焦がれる御方だというのは、わたくしにもよく分かりますわ!!だって、あんなに雄々しく凛々しく、甘やかで優しくありながら、厳しさと獰猛さも兼ね備えている御仁など、世界中何処を探してもおりませんもの!!」
力強く語られて、令嬢達は度肝を抜かれた。
さっきの、何もかも知っている風なあの言葉は一体何だったんでしょう?
今聞いている限りはただの惚気ですわよね、と皆心の中で自問自答する。
「ですが、安心してわたくしにお任せくださいませ。必ず、どんな手を使ってでも、わたくしがメグレン様を幸せにする事を約束致します。皆様、どうか、温かく見守ってくださいませ」
令嬢達はもう、何を宣言されて、何で惚気られているのか分からなかった。
自分達は此処へ一体何しに来たのだろう、と思う者もいたのである。
作者にも制御不能なリリアヴェルです。皇后とは別の意味で、怖い!




