きっと、こやつ、何も分かっていない(国王とヨシュア王子)
幾ら丈夫な王子だとしても、ヨシュアは国王陛下の決定には逆らえない。
皇太子との決闘で約束した事を破ったのはれっきとした契約違反である。
公衆の面前での論戦で、ボロクソに元婚約者と現婚約者に論破されたとしても。
同時に、ヨシュア王子に入れ知恵をしたディアブル侯爵も罪科が問われた。
あわよくば婚約を解消させて、孫の妻に優秀なリリアヴェルを迎えたかったというのがその動機だったのだが、王子も優秀だと思い込んだ故の暴挙でもあった。
学園に通っている子女がいれば、ヨシュア王子の評価も耳に入っただろう。
社交界に出入りしていれば、また。
だが、偏屈ゆえに領地に籠っていた老人だったのが災いしたのだ。
周囲に焚きつけた人間も居たが、カインの指揮の元ハルヴィア公爵家の騎士達によって全て捕縛された。
帝国の皇太子との婚約にケチを付ける内容であり、軋轢を生みかねない問題だから、国王も厳しい処遇を言い渡したのである。
そうしないと、あの皇后陛下がまたやってくるだろう。
ハルヴィア公爵と宰相の進言に、ぶるりと国王は身を震わせた。
ディアブル前侯爵はしがみついていた爵位を息子に譲り、領地にて生涯幽閉となった。
その腰巾着として煽っていた低位貴族もまた、爵位を譲渡したうえで労役を科されたのである。
ヨシュア王子も王太子への昇格は向こう三年見送られ、公費も半分に削減となった。
「そんな、ただ、私は国の為を思って……」
「よい、もうその様な言い訳はいらぬ。本当に国を思うのならば、まず約束を破るべきではなかった。模擬とはいえ、帝国の皇太子に剣を抜かせてまで決めた約束事を、簡単に反故に出来ると思ったか」
「ですが、私は王子として公爵令嬢に物を申したのです」
はあ、と国王はため息を吐いた。
「それが国を代表する人間として通用する言い訳だと思っているのが問題だ。他国の留学生もいる前で、お前は言い訳を加えて約束を破る者と思われているのだぞ。その様な人間が王としている国と、誰が条約を結ぶのだ。それに、レミシア嬢とリリアヴェル嬢に言い負かされるなど……公衆の面前で負ける戦いばかりしているではないか。お陰で今までの功績もお前の物ではないと、貴族達には広まっておる」
「私は女性に花を持たせただけです」
何とか保身の言い訳を続けるが、国王どころか王妃すらも冷たい目になっている。
「うむ。だとしても、女性に花を持たせたお前の名誉は失墜した。地に堕ちたのだ。これは生半可な功績では払拭する事は出来ない。唯一、王家に残された奇跡はレミシア嬢の躍進よ。ハルヴィア公爵とカイン殿にリリアヴェル嬢の尽力があって、王妃として遜色ない令嬢と周囲にも認められ始めておる」
笑顔でヨシュアが何かを言おうとしたのを、国王は手で制した。
「お前の功績ではない。これもハルヴィア公爵家とレミシア嬢の努力の賜物であって、お前の功績など1つもない。例え彼女を見出したとしても、ハルヴィア公爵家が手を出さなんだらここまでの成長は無かったし、そもそもリリアヴェル嬢を手放したのが大きな間違いだ」
大きく息を吐いて、爽やかにきりっと凛々しい顔を見せているヨシュアを国王は半眼で見る。
きっと、こやつ、何も分かっていない。
王家の威信を守り、ヨシュアを王子として盛り立てるという利害が一致していれば良かったのだが、それはもう張りぼてだと露呈してしまっている。
今更裸の王を作り上げたとて、他国の笑い者になるだけだ。
それならば、優秀な王妃であるレミシアに全てを託した方が良い、と決めていた。
要するに丸投げである。
「まあいい。お前が何と言おうと、処分は変わらぬ。余計な事はもうするでない。次に何か問題を起こせば廃嫡もあり得ると心得よ」
流石にその言葉には驚きを隠せないヨシュアだったが、今何かを言っても無駄だという事くらいは理解出来たのである。
「仕方ない……レミシアに相談しよう」
処分の記された書状を持って、ヨシュアはレミシアの元へ向かった。
似た者親子二代による、丸投げ合戦なのである。
丸投げ大会開催中。
次回からリリアヴェル帝国へ……!




