この二人を何とかして欲しい(レミシア)
時は戻り、カインの執務室。
一か月記念に貰ったリリアヴェルたん人形を、懐から印籠のようにメグレンは二人に見せつけた。
「これは婚約一か月記念に最愛のヴェリーから贈られたリリアヴェルたん人形だ」
誇らしげに言う長身の皇太子は確かに格好は良いが、手に持っている物と発言が残念なのである。
レミシアは、腰に手を当てて言った。
「本人が作った本人の人形があれば良いではないですの。わたくしだけが何故広く売られているのです!」
「もしかして、リリアヴェルにも恥ずかしい思いをさせたいというのであれば、無理だと思うよ。長らく王子妃候補として公の場に居たから、そういう意味での恥は無いからね」
と言いつつ、メグレンもカインも分かっていた。
レミシアがあのヨシュア王子の小人形と並びたくはないんだろうなぁ、と。
「今から本人に話を着けて参りますわ!」
「ああっ!ちょっと待ってくれ、俺も行くから!」
くるっと身を翻して、スカートを見事に捌きながら早足で歩いて行くレミシアをカインが追いかけた。
その後ろをメグレンも追いかける。
結局三人で公爵邸に帰り着けば、リリアヴェルが笑顔で三人を出迎えた。
「まあ、メグレン様、戻っていらっしゃいましたのね!」
「ああ、二度も会えるなんて、今日は良い日だ」
早速二人だけの世界に引きこもろうとしたメグレンとリリアヴェルの握り合った手を、レミシアが無造作に解いた。
「今はその話ではなく、これ!ですわよ!」
リリアヴェルの目の前に出されたのは、握りしめられてくしゃっているレミシアたん人形である。
きょとん、とリリアヴェルは金色の目を大きく開いた。
「こっ、これは今人気爆発中の!レミシアたん人形ではありませんかっ!」
「そういう小芝居はお止めなさい。人の許可も取らずに勝手に売り出して!貴方の人形も作るわよ!?」
段々とレミシアの口調が崩れてきたが、その言葉にリリアヴェルは笑顔を浮かべた。
「はい。分かりました」
「駄目だ」
頷いたリリアヴェルの決定を遮ったのはメグレンである。
メグレンを見上げたリリアヴェルに、大人の色香を載せて微笑み、リリアヴェルの好きな低音で囁く。
「私は、君を独り占めしたい。人形とはいえ、誰かに触れられるのは我慢ならないんだ」
「は、はひ………」
リリアヴェルが瞬時に赤く染まった。
そして、レミシアには済まなそうに眉根を下げて謝罪する。
「申し訳ございません、お義姉様。メグレン様のお言葉には逆らえませんの。お義姉様と店頭に並びたかったのですが…。それにわたくしもメグレン様のお人形に誰かが口づけなどしたら、耐えられませんもの!」
ばっと顔を覆うリリアヴェルの肩を抱き、メグレンはその頭を撫でる。
「私も同じ気持ちだよ」
「嬉しゅうございます、メグレン様」
「ちょっと待って?私が見も知らぬ人々に口づけされるのは良いっていうの!?」
一瞬、時が止まった。
レミシアの怒りは尤もだが、メグレンはにっこり微笑んだ。
「民に愛されているな、と思うな」
「まあ!素敵ですわ!」
その言葉にリリアヴェルも追従する。
「こいつら……」
怒りにぷるぷると手を震わすが、カインがレミシアの肩に優しく手を置いてふるふると首を左右に振る。
「分かっているよ。ヨシュア王子と並びたくないのは。でもこれはもう国策と言っても過言ではない。あの馬鹿が喜ぶと思うと腹に据えかねるが、王室の人気を保つのは民の為でもある」
「……良いですわ。仕方ないですもの。出来上がったヨシュア殿下の小人形は幾つか頂けまして?むしゃくしゃした時に使いますわ」
三人とも笑顔のまま、レミシアがヨシュアの小人形をどう使うのかには言及しなかったのである。
ラブラブバカップルに挟まれてしまった悲劇の人2号(1号はカインお兄様)




