お兄様、問題ありませんわ!
「……食べ物を粗末にしてはいけないよ」
公爵家だから金銭の問題ではないのだが、敷石の前に置かれた菓子は無駄になってしまう。
一応注意すればにこにこと笑顔を浮かべたリリアヴェルから返事が返ってきた。
「問題ありませんわ、お兄様。あのお菓子は明日、学校で友人の皆様にお配りする予定ですの。皆さま、わたくしの作ったお菓子に興味があると仰ってくださって」
「え、リリが焼いたのかい?」
色々な事を王城で覚えたのは知っていたが、時間がなく、作って貰った事は無かった。
というか、今まではヨシュアの為にしか作っていなかっただろう。
「はい。メグレン様の為に焼きました、余りのクッキーですの。お兄様もおひとつ如何ですか?」
「……貰おうかな」
余りのクッキーだけど。
変な祭壇の上にあったけど。
兄の扱いが雑だな、と思いつつも食べない選択肢は無かった。
敷石という珍妙な物に一度捧げられた供物だと知ったら、皆様は仰天するのではないだろうか。
小間使いが気を利かせて小さな皿の上に載せて目の前に差し出される。
色々と頑張ったのはカインなのに、何故か敷石よりも序列が下になっている気がした。
目を離した数分で、可愛い妹が初対面であるはずの男に落とされてしまうし。
そこで、何だか少し張り合いたい気持ちが芽生えて。
「リリ、私の口にそれを入れてくれ。あーん、してくれ」
「あーん?……あっ、それは、読んだことがありましてよ、恋人同士でする儀式でございましょう!?」
「そうだけど、お兄様を練習台にするといい、ほら」
確かに、突然メグレンに対して行うのは緊張する。
緊張しすぎて手が震えて、もしも口以外の場所にぶつけてしまったら、と思うと怖い、とリリヴェルは思って兄の提案に頷いた。
焼き菓子を指でつまんで、兄の口に近づける。
「ほら、あーん、て言わないと」
「はい。お兄様、あーん」
「あーん」
馬鹿な兄妹を、使用人達は温かく……いや、生暖かく見守っていた。
兄で練習したけど、多分、メグレンを前にしたらあり得ない程手が震えると思うんですよ。
もう中二病の人が腕を押さえなきゃいけない位のブレッブレ状態になりそう。
鼻どころか目に入るんじゃないかと思います。




