わたくしが欲しいのは勿論!メグレン様です!
毎日のようにメグレンは公爵邸に通っていた。
「やあ、お帰り、ヴェリー」
「ただいま戻りました、メグレン様っ!」
今日も帰れば優しい笑顔で出迎えるメグレンがそこにいて、リリアヴェルは初めて会った時と変わらず歓喜に胸を震わせる。
何度見てもカッコいいのである。
勿論、ヨシュアと違って顔だけではない。
何より優しさと思いやりと愛情と、男らしさにも……というか存在の全てがリリアヴェルを虜にしている。
自分だけ呼べる愛称が欲しい、と言われた時は正直心臓が止まるかと思った。
思い返してみれば5秒くらいは軽く停止していたかもしれない。
未だに呼ばれるたびにリリアヴェルは顔がふにゃっと蕩けてしまう。
お茶を飲みながら、メグレンはじっと甘い顔でリリアヴェルを見つめて、問いかけた。
「ヴェリーは何か欲しい物は無いかい?あれば贈りたいのだが」
「……じっ、実は、ございます……」
普通の高位貴族の令嬢なら宝石やドレスが定石なのだが、メグレンはリリアヴェルが何を欲しがるかと気になった。
勿論、それで失望することなどないのだが、リリアヴェルの答えは全くの予想外だったのである。
もじもじと顔を赤らめて言うには。
「……その、メグレン様の絵姿が欲しいのです………」
顔を真っ赤にしながら、リリアヴェルに言われて、一瞬メグレンは思考が停止した。
毎日会いに来てるのに?
だが、リリアヴェルは慌てた様に付け足す。
「このくらいの大きさでですねぇ」
手で大きさを示しているのだが、大体筆記用具の大きさくらいだ。
「学園にも持ち込んで、あの……授業中でもお姿を見れたらなって……きゃっ」
顔を覆い隠して恥ずかしがっているが、本当に予想外過ぎる答えにメグレンは口を押えた。
「ああ、うん……では手配しよう」
メグレンも恥ずかしくない訳ではないが、了承した途端に物凄い素早さで、リリアヴェルはすらすらすらっと紙にペンを走らせた。
何行かに渡って書かれていたのは、画家の名前とアトリエの場所である。
「こちらが王宮でも活躍している王都にいる画家の目録でございます!」
無駄に仕事が早いのである。
何時この情報を使う機会があったのか。
「分かった、他には無いかな?例えば宝飾品とか」
そういえば高価な物を強請るかな?という興味で聞いてみる。
リリアヴェルはあっ、と口に手をやって考え至ったようだ。
別の意味で破壊力のある答えに。
「首飾りが欲しいと思っておりましたの……」
「そうか、どんな石を使おうか、鎖はどの金属がいいかな?」
メグレンの問いに、にこにことリリアヴェルが応える。
「鎖はどんなものでも構いませんの。宝石ではなく、こう、飾り部分が扉になっていて、中に絵姿を入れられるものがございますでしょう?」
絵姿かぁ……。
カインが聞いたらきっと遠い目になるに違いないな、とメグレンは思った。
「首飾りならば、歩いている最中にでも、メグレン様の御姿を見る事が出来ますので!」
「いや、歩いている最中は、よそ見をしては危ないよ」
それだけ注意をするのがやっとだったが、リリアヴェルはにこっと無邪気な笑顔を見せる。
「ご心配には及びませんわ!きちんとメグレン様を拝見する時は足を止めますので」
そういう事じゃない。
そういう事じゃないのだが、可愛い我儘過ぎてメグレンには注意する事が出来なかった。
リリアヴェルの話を聞くうちに、メグレンもリリアヴェルの絵姿の首飾りが欲しくなってくる。
「よし、それも手配しておこう。他には?」
「ええと、いつも色々な贈り物を頂いているので、これ以上は特に思いつきません。いつも、有難う存じます、メグレン様」
地位や名誉や権力とは無縁に、ただ一途に思われるのはむず痒く、それでいて幸福だ。
もうすぐ正式な婚約を結べる。
その時にはもっと素晴らしい贈り物をしよう、とメグレンは心に誓った。




