聖獣同盟
スマートフォンが鳴ったので画面を見ると、冬馬の名前が表示されていた。
そう言えば、この前の大会で番号を交換していたのだった。
電話に出る。
「なんの用だい、冬馬」
「いやな。妙案を思いついたのだ」
「妙案?」
なにか、嫌な予感がした。
「俺達全員探索庁に登用されるような超名案さ」
「探索庁ねえ……」
バンチョーが探索庁に登用されるなりアークスに勧誘されてからというもの、あの団体にはあまり良い印象がない。
もしかしたら、自分も道を違うのではないか、という不安がある。
しかし、冬馬の提案は、馬鹿にできないものだった。
「少し、考えさせてもらってもいいかな」
「怖気づいたか」
からかうように冬馬は言う。
「僕達の独断専行で仲間達を命の危機には陥れられないよ」
「ま、それが普通の考え方というものだよな。だけど、俺は本気だぜ」
上昇欲の強い男だ。
だからこそ、聖獣のホルダーにまで上り詰めたのかも知れない。
「一週間、待つ。返事を期待している」
そう言うと、電話は切れた。
外を見ると、すっかり暗くなっている。
剣也との修行の時間だ。
こっそりと、家を出た。
公園にたどり着くと、剣也は心做しか上機嫌に缶コーヒーを飲んでいた。
「ご機嫌ですね」
戸惑いながら問うと、剣也は得たりとばかりに微笑んだ。
「コースケ君と面会した。そして。確信したことがある」
「コースケと?」
「歌世は生きている」
その一言で、僕は自分の心に桜吹雪が舞ったような気分になった。
「表立って活動していたら暗殺の危険が伴うから身を隠しているだけだ。お主達に身の危険が訪れれば、自ずと姿を表すだろう」
そう言って、空になった缶をゴミ箱に投げる。
「馬鹿らしい話じゃ。わしのこの地域での活動も終わりじゃ。また魔王のホルダーでも出てきたらかなわん。老人は早々に去ることにするわい」
「師匠は、本当に……?」
「ただでさえ生き汚い奴がフェニックスのカードを持っておるんじゃぞ。死んどるわけあるまい」
僕は心が浮き立つのを感じた。
師匠は生きている。
心の中の氷が溶けて、涙となって瞳から自然と溢れ出た。
続く




