黒に染まる
学校の屋上で使は空を見ていた。
雲が流れ、隙間から日が差す。
それは使を照らした。
使は僅かに目を見開く。
「方針を変更するのですか?」
周囲には誰もいない。しかし使は問いかける。
「魔界が彼を使うことにした、と?」
返事はない。しかし、使は納得したように頷いた。
「ならば」
ゆっくりと、唇を動かす。
「代理戦争という形になりますのね」
返事は、やはりない。
雲が動き、日が陰った。
使はしばらくその場で、天を眺め続けていた。
彼らには、残酷な運命になるだろう。そう思った。
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花園の男は微笑んで、手をかざした。
その手に、闇のオーラが凝縮される。
異界にいるだけはある。
彼はやはり魔の者だ。
僕はそう思った。
「あなたにこれを授けましょう。これはあなたを危機から守ってくれる切り札になるでしょう」
「切り札……?」
男は手を差し出す。
その手に掴まれたオーラの凝縮体が、僕の手の中に吸い込まれた。
その瞬間、僕の体は黒いコートに包まれていた。
「使い道は、おいおいわかるでしょう。今後、あなたの前には過酷な道が待っています。それを乗り越えることを期待しています」
「……なにが起こるっていうんだよ」
「じきにわかりますよ」
そう言って、男は微笑んだ。
周囲の景色が歪み始める。
「それでは、この異界は消しましょう。またの再会を楽しみにしております、琴谷様」
そう言って、男は消えた。
景色は歪み続ける。異界が消えていく。
「コトブキ、大丈夫?」
優子が、不安げに言う。
「大丈夫だって、なにがだ?」
「だって、そのコート」
優子は、ためらうように言葉を紡ぐ。
「魔物の匂いがする……」
僕は絶句した。
今の僕はまだ、魔物に送られたこの装備の意味がわかってはいなかったのだった。
続く




