突入
やけに遠回りしてしまった気がする。
禁断の異界の存在を知ってから数週間。
使の来訪。先輩の父親の死去。
色々片がついて、ついにレベルアップに集中できる環境が整った。
そして、僕は今、そのワープゲートの近くに立っていた。
隣には優子が。
前には師匠がいる。
山の頂上の神社の境内だった。
賽銭箱の横を通ると、師匠は家屋の内部へと入っていく。
僕らもその後に続いた。
厳重に鍵で封印された一室。
その前には、監視カメラがついていた。
師匠はそれに向けて、首からぶら下げたパスを見せる。
鍵の開く音がして、扉が自動で開いた。
地底から唸るような声がしていた。
まばゆく光るワープゲート。
師匠の言葉を思い出す。
不死鳥のホルダーでなければ腕の一本は持っていかれたかもしれない。
それほどの猛者がこの先に待っている。
「優子」
「うん」
優子の声は強張っている。
やはり緊張しているのだろう。
「僕が守るから」
優子は一瞬ぽかんとしていたが、すぐにくすぐったげに微笑んだ。
「わかった」
「行こう、コトブキ。とりあえず狭い通路を探して一体づつ対処していくぞ」
「はい!」
師匠の指示を頭に叩き込んで、僕はワープゲートへと一歩を踏み出した。
光の渦の端を踏む。
その瞬間、周囲の景色が歪み始めた。
続く




