表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/274

合流

 僕と徹は仲間を探して駆け続けた。

 優子は無事だろうか。

 愛しい恋人の笑顔が脳裏に浮かぶ。


 そして、僕達は袋小路に迷い込んだ。


「行き止まり……? 違うな」


 徹が壁を観察しながら呟くように言う。


「確かに」


 僕も同意した。

 肉塊が蠢く壁に、僅かな切れ目がある。

 扉だ。


 徹が切れ目に手を入れて引っ張り、押す。

 しかし、壁はびくともしない。


 僕は壁の向こうに気配を感じ、確信を持って言った。


「この向こうに、聖獣のホルダーがいる」


「俺は禍々しい気配を感じるよ」


「師匠と敵のボスが交戦中なのかな」


「かもしれないな」


 数秒、沈黙が漂った。

 問題は、どうやってこの扉を開くかだ。


「ブレイクスペルを試す?」


「いや、ブレイクスペルが効くなら最初の時に開いてたはずだ。これはこの異界特有のギミックと考えたほうがいい」


 徹の分析は的確だ。

 やはり彼は頼りになる。


「なら、後の手段は一つだね」


「ああ。多少力技になるがな」


 徹は潮風斬鉄を鞘から引き抜くと、虚空に十字を切った。


「ホーリークロス」


 勇者だけに許された聖属性の範囲攻撃。

 その威力はそこらの異界のボスすら一撃で屠るほどだ。


 壁が消滅し、その奥にいた男に光の奔流が襲い掛かった。


「プロテクション」


 男は呟く。

 六角形を連ねたようなバリアが現れ、ホーリークロスを防ぐ。

 プロテクション。

 これもまた勇者固有のスキルだ。


 勇者が敵?

 思いもしない展開に僕は絶句した。

 プロテクションはホーリークロスを完全に防いだ。


「やっと見せたね、隙を!」


 緑髪に長い耳のエルフの外見になった師匠が疾風のように駆ける。

 瞬きをする間に十数メートルの距離を詰め、槍を男の胸へと突き出した。

 男は苦い顔をして回避するが、完全には避けきれなかった。


 右肩に槍が突き刺さる。

 男は右腕をだらりと下げ、後方へと下がった。

 そこに、さらにコースケが追撃する。


「パワード!」


 筋力増強スキル、パワード。

 コースケの十八番だ。


 金棒を振り下ろすと、それはプロテクションに阻まれた。


 そして、五人は対峙した。


 師匠は愉快げに口を開く。


「さて。ここにいるのは県下でも指折りのメンツだ。どうだい。最後まで立っていた奴がこの県の最強ってことで」


「愉快な提案だね」


 コースケが後方に退きながら言う。


「まあ、多少不利な条件が揃ってる人もいるけどね」


 飄々とした口調で言う。


「どうだい。乗るかい。反るかい。混沌種の勇者!」


 師匠の声に、男はしばらく黙っていたが、目を閉じて溜め息を吐いた。


「二人相手に防戦一方。そこに援軍。認めざるをえないだろう。このままでは、勝てない」


「降参かい?」


「いいや?」


 男は目を開いた。


「こちらも仲間を呼ばせてもらう」


 男がそう言った次の瞬間、部屋が歪んだ。

 そして、僕達は、体育館程の広さの広い部屋に放り込まれていた。


 師匠がいる。コースケがいる。徹もいる。

 そして、その正面には、四人の若い男女が禍々しい気配を放って佇んでいたのだった。


「ヒール!」


 女が唱えると、男の肩の傷がみるみるうちに癒えていった。


「ヒーラーから叩くよ。きりがなくなる」


 師匠が言う。

 僕は頷いた。


 師匠とコースケの攻撃を凌ぎ続けた相手。

 簡単には終わらないだろうという確信がそこにはあった。



続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ