七章一幕=因果=
いよいよラストスパートです。
ここから完結か、また別の続編を作るか悩みどころですが続編作る方が意識強いです。
微睡む中、誰かが頬をつついている。
「ん……ん?」
重いまぶたを必死に開けば、どこか見覚えのある天井だった。
「やっと、起きたわね。寝坊助」
そしてそれを遮るように、真横から声が聞こえた。
慌てて顔を横に向ければ包帯を巻かれている響さんがいた。
「え……ひび、きさん?」
ここは鉄華城? ……いや、だとしても俺はなんでこんなところに?
俺は確かにあの時、黄金と一緒に死ぬつもりで全力を使った。文字通り一歩も動けないくらいの全力だ。
それが一体どうして鉄華城にいるんだ。
「まさかここは死後の世界? 俺の脳みそが作り上げ……いやでもそれはあまりにも死んだというには都合が……」
「ストップ。焦らなくてもちゃんと教えてあげるわよ」
人差し指で俺の口を押さえ、にっこりと微笑む彼女。
「少し長くなるけどしっかりと聞いてね?」
❇︎
━━時は龍臥が意識を失う少し前にまで遡る。
暗闇の中、風峰響は宙に浮かんでいた。
すぐにこれが現実ではなく夢のようなものだと気付き、ため息を吐く。
(戦場の中で意識を失ってるってわけね。まぁこれだとまだ生きてるのかしら? 確かあのクソ野郎の剣をぶっ壊したとこまでは覚えてるんだけど)
その分身体もかなり酷使して、反動の痛みが許容量を限界以上に超えてしまい意識を強制的にシャットダウンしたのだろう、と推測する。
それにしたって戦場で意識を失ってしまうのは致命的である。約束を守るためにもさっさと意識を取り戻さなければいけないというのに。
『ちゃんと全員で帰らなきゃ、約束破りだしね』
だとしてもどうやって意識を取り戻せばいいのか、悩んだ。
ほんの少しの静寂の後、周りの空間に変化が起きた。
暗闇があっという間に光で溢れ返り、すぐにまるで映写機によって映されているかのように龍臥と出会ってからの一ヶ月足らずの光景が流れる。
初めて会ったときのこと、千代を助けてくれたときのこと、響を守ると真剣に言ったときのこと。
全てが彼女にとってはとても嬉しく、輝かしく、胸が熱くなる思い出だった。
例えその行動が、自分と同じ名前の大切にしていた人を守れなかったことに起因していたとしても、その想いに心打たれたのは確かだったのだから。
そんな中、響にとって知らないはずの映像が映し出された。
以前夢の中で見た、顔のボカされている誰かが自分を助けてくれた映像。
けれど、そのぼかしはどんどんと剥がされていき、その顔が顕になった。
『これ……龍臥くん?』
驚く響をよそに次々に映像は流れていく。一緒に食事をしたこと、勉強をしたこと、出かけて楽しんだこと。そしてその幸せは長く続かず、黄金竹虎によって破壊されたこと。
けれどこれで納得したこともあった。
『はは、だからか。不思議だったのよねぇ』
なぜ出会って間もない彼に対して信用も信頼もできたのか。異次元道化師が縁をつないで彼を連れてこれたのかが。
なんのことはない、響は無意識にとは言えすでに龍臥に『出会って』いて『知って』いたのだ。
そしてその縁が異次元道化師によって再び繋がれた。
『天寿を全うしたらあいつにお礼言わなきゃね』
よし、と響は微笑む。そうと決まればこのようなところでもたついてはいられない。
『とっとと起きなきゃね』




