四章六幕=大事なこと=
初めてなろうにて感想をもらえまして感動している男、法相です。
また感想いただけたら喜びすぎて鼻血が出るかもしれないですね笑
「それでじいちゃんの墓参りに行ってあのピエロに会って、今に至るわけです」
今までの流れを説明し終え、俺は気まずくなって天井を見上げる。
さて、ここまで話をしたのはいいけどどうしたものか。追い出されるのは覚悟をするとして……
「……これ、龍臥くんは別に悪くないわよね」
「え?」
キョトン、とする俺に響さんははぁ、と呆れたようにため息を吐きながら「いい?」と前置きを置いて言葉をつなげた。
「龍臥くんがあのクソを憎む理由はよくわかった。でも私じゃない響ちゃんが死んだのは、君のせいじゃないわよ」
「そんなわけないですよ。俺が黄金に……」
「あほたれ」
「あいた」
デコピンを放たれ、思い切り仰け反る。さすがに悪魔憑きだけあってただのデコピンでも威力が高い。
額をさすりながら涙目になる俺に響さんは俺の肩に手を置いて、真正面から向き合う。
「彼女は周りから疎んじられていたことも話の中にあった。だから程度はあれなにかしらの行為は受けていた。そして加えて言うなら……どんな奴でも手を下した、指示をした奴が根本的に悪いの。あなたとその娘は被害者。だから自分を責めるのはやめなさい」
「そう、です……これでは主人様が……あまりにもご不憫です。なぜ、ご自分が悪いなどと言われるのですか!」
珍しく、千代さんが語気をあらめて泣きそうな声で言う。
なぜ、と言われても俺にはそうだとしか思えないからだ、としか言えなかった。
だって俺が目をつけられていたから仲良くなった響が酷い目にあい、死んでしまったのだ。それを俺のせいじゃなくして、なんだというのか?
「それは龍臥くん、あなたの根っこが不器用なほどにまっすぐすぎるからよ。何をどうしたらそんな風に育つのかはわからないけど、よっぽど性根がいい人が君を育てたのね」
「それは、間違いないですね。俺には勿体無いほどいい母親と祖父でした」
母さんはとても真っ直ぐな人だった、と幼いながらに記憶していた。
どれくらい真っ直ぐかと言えば、散歩中にまったく見ず知らずの不良にカツアゲされていた学生を助けに入って普通にキレた不良を返り討ちにしたり。向こうから手を上げさせて正当防衛を狙っているあたり抜け目もない。
そんな母さんと一緒に見ていた仮面ナイトも面白かったし、そこが母さんにとっての原点だったらしいから俺も影響を多少は受けていたと思う。
でも現実にヒーローなんていないし、母さんも俺もそれを知っていたからこそ身体を鍛えてたりしたわけだ。
そんな母さんでも病には勝てず、眠るように息を引き取った。
小さい頃とはいえ、母さんの亡くなった日のことは未だに鮮明に覚えている。
『大事な人を守れる子になりなよ、龍くん』
病気で苦しかったのは自分だったろうに、俺のことを思ってくれていた。それだけはよく伝わった。
けれども俺はその言葉を守れず、響という大事な人を護れなかった。
だから、俺は自分を許せない。彼女はそれだけ俺の中で大事な人だった。
「……ふん、一つの呪詛みたいね」
だからだろう、初めて響さんに苛立ちを覚えさせられたのは。
「……ぁ?」
「龍臥くん。私から見ればあなたはあなたが想像している以上に気高いの。あなたはあなたが思っている以上に……他人を優先している」
「んなわけ、ないだろ……響さんに俺の何がわかるってんだ」
「そうね、君のいう通りなのかもしれないわ。だって私たちは根本的には他人だもの。これは血の繋がりがあってもそういうもの。だから私の言葉で龍臥くんが怒るのもしょうがないこと」
けれど、と響さんは区切って言葉を紡いだ。
「でもね……私と千代ちゃん、そして蒼ちゃんは君に助けられた。だからこそ君が大切だというのも事実なのよ」
「……は?」
「君の自己評価の低さはそう簡単に払拭できるものじゃないっていうのはよくわかったわ。言っとくけど、君のお母さんのことを否定する気はこれっぽっちも思ってないわよ。ただ龍臥くんが自分で思っている以上に真面目に受け止めて、それに従おうとしちゃってる君の不器用さに呆れてて、すごいとも思っている」
「……? あの、よく意味がわからないんですが」
「ま、ようするに……龍臥くんは自分が思っている以上に気高い人間で、そして私たちは龍臥くんを大事に思っているっていうだけよ」
うまく言葉にするのは難しいわね、と響さんはぼやきながら頭を搔く。
「……よし、どれくらい大事で君を好きかっていうことを簡単に教えましょうか」
「いや、それどういう」
意味、と聞く前に頭を掴まれ固定される。そして……唇が重ねられた。




