【2】剣士ウォーレス、レベル9999
ありきたりな、よくある話である。
突如世界に現れた「魔王」を名乗る厄介な野郎が魔族やモンスターどもを扇動して、人類に対して挑戦を仕掛けてきた。
そんなはた迷惑なやつらに対抗するため、人類は「勇者」と呼ばれるとびきり腕の立つ冒険者を任命し、魔王討伐へと駆り立てた。
……というのが、今から十年くらい前の話。
当時の勇者によって魔王はつつがなく討伐され、その体は分割されて各地に封印された。
人類は魔族との戦いに勝利して、連中をこうして各地のダンジョンに押し込めることに成功した。
何もかもが順風満帆めでたしめでたし、世界は平和になりました――と言って終わりたいところだったが、最近になって少し話が変わってきた。
各地に点在する魔王の封印が、何者かによって破られているというのだ。
10年前に世界を混乱に陥れた魔王。仮にその封印が破られてしまえば、世界は、いや、人類は再びとんでもない危機に直面することになる。
だからこそ、この事態を重く見た国王は、ある予防策を取ることにした。
10年前を最後に廃止されていた唯一職「勇者」を復活させて、任命された「勇者」に、封印の調査を命じたのである。
かくして勇者とその仲間たちとして選ばれたのが、俺たち「勇者パーティ」。
「紅蓮剣」エレン。レベル56。
星によって選ばれた、正真正銘この世にただ一人の「勇者」クラス。
「鋼嵐」ゴウライ。レベル65。
鋼のような筋肉で巨大な斧を軽々操る、攻守に秀でた上級職「重戦士」。
「万象の繰り手」ルイン。レベル57。
10歳という若さにして魔術師の頂点「賢者」の称号を得た天才少女。
「癒やし手」ラーイール。レベル63。
死者蘇生の秘蹟すら可能とする回復職「聖女」として認定された癒やしのプロフェッショナル。
そして俺が――「剣士」ウォーレス。
なんの変哲もない、剣を手に取れば誰しも名乗れる最下級職「剣士」。
ただしレベルは、9999だ。
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