第14話:女子校生、過去へ……
葉子という一つの〝個〟と、ついに融合を始めて……異変は起きた。
争害負破呪血変変変邪汚堕死獰争暗狂敵穢痛殴恨変変変変変猛壊怒蛆斬業病醜殺苦乱犯亡愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛敵戦悪凶魔恋恋恋恋恋恋恋蔑虐罪糞毒癌災屑清清清清清清清辛恐憎腐闘棒棒棒棒棒棒棒棒怨鬱獄獣争害負恋恋恋恋恋恋恋恋恋破敵呪血邪汚堕変変変変変変変変死獰争暗狂穢痛殴恨猛色色色色色色壊怒蛆斬業病醜殺色色色色色色色色色色凶魔蔑虐罪糞毒癌災屑辛性性性性恐憎腐闘怨性性性性性性性性性性性性性鬱獄獣争害負挿挿挿挿挿挿挿挿憎腐闘乱乱乱乱乱乱乱乱獄交交交交交交交交
――ッ!?!?
怨嗟ばかりであるハズの思念波に、異物が混じり始める。
葉子の脳を侵蝕しようとする側であるハズの存在が混乱を始める。
それは、怨嗟の念の奔流にとってはイレギュラーな事態だった。
人格の主導権はこちらが握っているハズだ。なのになぜ侵蝕する相手の精神が、こちらに異物を発生させるのか。
というか、怨嗟の念の奔流は知らなかった。
葛原葉子という一人の少女が、いかなる存在なのかを。
彼女の存在は、現代人からすれば少し特殊だった。
別に異世界転生して、チートを手にしてそのまま帰ってきた、などの荒唐無稽な在り様ではない。
ただ、性欲が……強い方なのだ。
性欲が強い母の影響もあるかもしれない。似たようにイケメンな男を求める同性のクラスメイトに囲まれて育ったせいかもしれない。とにかく葉子はそんな環境のせいで清も呆れるほど性欲が強い。そしてそんな彼女の性欲は、今まで相手に敵意や殺意や悪意ばかりを向けてきた怨嗟の念の奔流にとってはあまりにも余計な……刺激的すぎる要素であった。
おかげで怨嗟の念の奔流は、どうすればこれを除去できるのか分からず、対応に時間がかかっている。まるでウイルスに感染し、動作が遅くなったパソコンのような有様……というよりは、今まで異性を知らずに育ち、いざ異性を知った時に暴走する童貞や処女のような状態に近いだろうか。
そして幸か不幸かその影響で、怨嗟の念の奔流の、葉子への侵蝕が遅くなった。葉子は、遅れてそれを認識した。いったい何が起きたのか疑問に思うが、とにかく清が己を助けに来るまでの時間稼ぎはできた、と考え直し……そんな現状の自分にできる事を模索し始めた。
とその時。
己へと侵蝕してきた怨嗟の念の奔流の中に、あるイメージが紛れている事に彼女は気づく。
薄茶色い空間内での場面のようなイメージだ。
精神を侵蝕された影響だろうか。ところどころがぼやけて見える。なんとなく、モザイクをかけられたエロ画像の如く気になった葉子は、そのイメージに対して、試しに意識を集中してみた。
すると、その瞬間。
彼女の意識は……そのイメージの中へと堕ちていった。
…
「うわっ!?」
気づくと葉子は、学校の中にいた。
と言っても、葉子が通う附属渡海中学校の校舎ではない。微妙にだが、校舎の色合いと、机椅子のサイズが異なる。
「…………高、校?」
なんとなくだが、そんな気がした。
次に彼女は、周囲を、より細かく観察してみた。
――もしかしてこの場所は、あの幽霊と関係がある場所ではないか?
この場に至るまでの経緯は、脳を侵蝕されたせいかぼんやりしていてよく覚えていないが、清や幽霊についての事は覚えている。そして幽霊に関わってここにいるのだから、そうかもしれないと思った。
周囲には、葉子より少し大きい男女混成の生徒達がいる。
そして彼ら彼女らは、ある方向へと視線を向け……なぜかギョッとしていた。
気になった葉子も、その方向を見る。
すると、そこにいたのは……なんと机の天板を手刀で叩き割っているあのドブスな幽霊……否。生前の彼女だった。
思わず葉子もギョッとした。
生前の幽霊がそこにいたからではない。
現幽霊の、机の天板を手刀で叩き割る、その身体能力と行動力に対して、そしてつい先ほど知った情報と異なる部分があった事に対して驚いたのだ。
「え、あの幽霊……なんで…………ッ!?」
というか、ギョッとするだけに留まらず声に出た。
途中でその事に気づき、葉子は慌てて自分の両手で口を塞ぐ。今彼女が目にしている場面が、幽霊の生きていた時代に実際にあった場面であれば、叫ぶくらいでは何も変わらないのであるが、その事に気づく寸前……葉子は別の事に気づいた。
――ブス香のクセに。
――生意気。
――キモい。
――なんで学校来てんだよ。
――とっとと死ねよ。
――来るんじゃねぇよ。
――ブスが感染るだろ。
周囲の生徒達の、聞くだけで吐き気を催す思念波だ。
確かに相手は、葉子でさえ顔を認識した瞬間に悲鳴を上げちゃうような不細工な顔つきではある。だがこの思念波は思念波でキツかった。これではいったいどっちがキモいかなんて分からないな、と葉子は思う。
それから葉子は、いろんな場面を目撃した。
まず初めに目撃したのは、破壊した机が、現幽霊の机椅子に画鋲を置いた上で、それらを接着剤でガチガチにくっつけた、イジメっ子の机だった事が判明した場面だ。報復と呼ぶにはなんと物理的に凄まじい報復だ、と葉子は思った。
その後に続くのは、陰惨なイジメの場面だ。
後に幽霊となるドブスな彼女が、水をかけられたり教科書を破かれたり落書きをされたり私刑に遭ったりと……見ていて鬱になるような場面ばかりである。
だがそんな彼女の学園生活の中には、葉子が思わずほっこりする場面もあった。
なんとドブスな幽霊に生前、凄まじいくらいイケメンな彼氏がいたのが発覚してからの場面である。
せんせぇ並みにイケメンだなぁ、と思いつつ、葉子はドブスな少女とその彼氏のほんわかな場面を視聴する。嫉妬などは覚えない。なぜならば葉子としては、今の清との関係性だけでも充分、幸福ラインに到達しているのだから。
イケメンによって、彼女の人生に少しは華が出てきたかと思うと……意外とそうではなかった。むしろそのせいでイジメが酷くなったり、イケメン彼氏が襲撃されたり、さらには強姦未遂事件まで起こった。さすがの葉子もドン引きした。学校一のイケメンをドブスに取られたからといってそこまでするか、と。
葉子にも、イジメと呼べるモノを受けた経験はあったが、さすがにここまでではない。もう原形を保っていないかもしれない幼馴染が、自分の恥を上塗りするために葉子の嘘の噂を流したり、葉子が学校一の美少女であるが故に、男子から人気が高いのに、彼女がいつも清の事ばかり話すせいで清関連の変な噂が広まったりと、葉子としては、今となっては幼稚ささえ感じる程度のイジメばかりだ。
とそんな陰惨な場面ばかりが続いたが、時系列的に夏休みを境に……さらに衝撃的な事件が起こった。
なんとドブスだった少女が……美少女へと華麗に変身を遂げた事件である。
クラスメイト達が呆気に取られる場面が、葉子の前で広がった。
そしてそんな中で、葉子だけは頭上に豆電球を輝かせ「ああっ!! そういう事かぁ!!」と一人納得していた。
「おかしいと思った!! せんせぇが空けた穴から――」
そして葉子は、笑顔でうんうん頷こうとした……まさにその時だった。
「…………ん? この辺りの奔流が……遅くなってる? どうなってんだ?」
彼女が待ち焦がれていた存在の声が、近くから聞こえてきたのは。
【兇殺狂界】
ランク:術者の実力による
レンジ:1~3
最大補足:1000
由来:なし
概要:謎の存在の怨嗟の念によって構築された精神世界。他者の精神世界へと侵入し、相手の精神をも狂気に染め上げる宝具。ただしある程度の霊能力を持ってさえいれば抵抗できる可能性はある。




