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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第三章

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90話 貰い乳

「抱いて馬に乗る訳にもいきませんでしょう。この籠に寝かせてはいかがですか」


半兵衛がどこからか取っ手付きの籠を持ってきた。籠に藁を敷き詰めて即席のゆりかごの様なものを作り、そこに赤子を寝かせて抱えて運ぶことにした。


「馬上の揺れが赤子にはあまり良くないかもしれませんが、ぐずぐずしてはいられませんからな」


そう言いながら半兵衛はテキパキと赤子を運ぶ準備をしてくれた。


「藤吉郎様が運ばれるのですか? 私がお運びいたします!」


と言う半兵衛を説得し、赤子は俺が運ぶことにした。どうしてもそうしないといけない気がしたのだ。


俺が籠を覗き込むと、赤子は自分を襲った不幸な出来事など知る由も無く、無邪気に小さな足をバタつかせていた。


ホゲホゲと泣きながら、指をチュッチュッと吸っているのでもしかしたらおなかが空いているのかもしれない。


……ってか、やべー。良く考えたら、赤子には母乳しか食い物が無いじゃんか。急いで調達しないと!


「半兵衛。すまんが、赤子に飲ませる(ちち)が必要だ。誰か足の速い者を先に走らせて、村があったら村人から乳を分けて貰えるよう頼んでくれ。礼もたっぷりと渡してやってくれ!」


半兵衛は「分かりました」と短く答えて、すぐに早馬の手配をしてくれた。


俺は赤子を入れた籠を抱えて馬に乗り、林を出て半兵衛が待たせていた殿(しんがり)部隊と合流した。


ふと後ろの方を見ると、先ほど村で乱妨取りを行っていた若い足軽も暗い顔をしつつも部隊に合流しているようだった。


俺が見ているのに気がつくと、若い足軽は深く頭を下げた。なんにしても生き延びる選択をしたことは褒めてやりたいと思い、そいつが顔を上げた時、大きく頷いてやった。若い足軽は今にも泣きそうな顔をしていた。


「藤吉郎殿! 大丈夫でしたか!? こちらの首尾は上々ですぞ」


そう言いながら、明智光秀が近付いてきた。


俺達が林に入っている間に、明智光秀は追っ手の撹乱をしてくれており、朝倉軍の動きの鈍さも相まって、どうやらこのまま無事に越前を抜けられそうだった。


「で、その赤子はどうしたのですか!?」


俺が赤子の籠を抱えているのを見て、当然ながら光秀は驚きながら聞いてきた。


「まあ……色々ありまして……」


俺の煮え切らない回答を聞いて、何を勘違いしてるのか分からないが、


「ふむ、まあ藤吉郎殿のお考えになることが私ごときに読み解けるはずもないですからな」


と、呟きながら一人で納得してしまっていたので、変に説明せずに、そのままにしておいた。説明、面倒くさいしね。


「よし、それじゃあ行こうか!」


俺達は馬を走らせた。



・・・・・・・・・・・・・・・・



途中、早馬の者が見つけてくれた村で、出産したばかりの女性から『(ちち)』を受け取るべく立ち寄る。


「失礼いたします! 乳をいただけるのはこちらですか」


村の一軒の家に立ち寄り、中々恥ずかしいセリフを大きな声で言ってしまってから、俺はしまった!と思った。


ちらりと横を見ると、光秀と半兵衛が完全に吹き出しそうになっていた。……おまえら、あとで見てろよ。


「はーい!」


奥から女性の声がして、いかにも肝っ玉かーちゃんみたいな女の人が赤子を抱えながら出てきた。


周りにもワラワラと子供達が居る。1……2……3……4……5……、で女性が抱えている赤子を入れるとなんと6人も子供がいた。


珍しい客が来たせいか、小さな家は蜂の巣をつついたようにとんでもない騒がしさだった。


「あんたたち!静かにしなさい!!! ……申し訳ないですねぇ。見ての通り子だくさんなもんで。ああ、この子ですね。本当に生まれたばかりの赤子だねぇ。可哀想に……。さて、じゃあ、今ここで飲ませちゃいましょうね」


そう言うや否や、肝っ玉かーちゃんは自分の赤子を子供の一人に抱かせて、俺から赤子を受け取るとその場に「よっこらしょ」と座り込んで、でっかい胸を取り出すと赤子に飲ませ始めた。


俺達は一瞬呆気に取られて呆然と授乳シーンに見入ってしまったが、すぐにはっと気付いて、慌てて戸の陰に隠れて紳士を気取った。


半兵衛が小さな声で俺に聞いた。


「持ち運び用の乳もご婦人にお願いしております。赤子は頻繁に乳が必要でしょうし、いちいち村に立ち寄る訳にもいきませぬからな」


「ああ、ありがとうな」


しかし、母乳って常温保存大丈夫なのかな? 雑菌とか繁殖しちゃわないかな? 


「よーし、オナカいっぱいになったかい? じゃあ、今度はあんたのお弁当を作ってあげるからね」


そう言って、肝っ玉かーちゃんはひょうたんにたっぷりと乳を入れてくれた。


「これで良しと。一晩経っちまったら、飲ませちゃダメですよ。お腹壊すからね」


そう言って肝っ玉かーちゃんは俺に赤子の弁当を持たせてくれた。


「あ、やっぱりそうですよね。はい、気を付けます。本当にありがとうございました」


「良いってことですよ! いっぱいお礼は貰いましたからね! こっちこそ助かりましたよ」


俺達は肝っ玉かーちゃんにお礼を言って、村を後にした。


いっぱい乳を飲んだ赤子は籠の中ですやすやと眠っていた――。



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