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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第三章

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81話 生野城へ

神屋源三と小一郎が生野城へ向かってから、随分時間が立った。


出かけた時には真上にあった太陽が、すっかり西に傾いていた。


(……大丈夫かな?)


少しづつ不安な気持ちが大きくなっていく。


あまりソワソワするのも良くないと分かりつつも、『自分の判断がはたして合っていたのだろうか』『みすみす二人を危険に晒してしまって良かったのか』『リスクを低く見積もり過ぎていたのではないか』『もし二人が殺されたりしたら……」


と、思考はどんどん悪い方向へ引っ張られていき、時が経つごとに焦燥感が増して言った。


「百戦百勝は善の善なる者に(あら)ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」


瑶甫が突然『孫子』を(しょう)した。


「藤吉郎殿のご判断は大軍の将として正しいものと存じます。お二人を信じましょう」


瑶甫の言葉にハッとし、俺は少し落ち着きを取り戻した。


「……すまん」


俺はそう言ってふぅーっと大きく息を吸った。うん。そうだ、二人を信じよう。


それと大将はどっしりと構えないとな。兵が不安を感じてしまう。


よし、俺は今から『鬼柴田』だ。『鬼柴田』……『鬼柴田』……よし、イメージトレーニング終了。俺は厳つい髭面の強そうなおっさんになった気持ちで気分を奮い立たせた。


「ちょっと早いが夕餉にしよう。二人が戻ってきたら、すぐに動く必要があるかもしれない。夕餉を取ったら各隊出撃の体制を整えておくように!」


半兵衛にそう伝えて、俺は本陣の外に出た。


いつの間にか蝉の声は止み、虫の声に替わっていた。日はすっかり暮れて、草むらに蛍が飛んでいた。


しばらくして、半兵衛がやってきた。


「食べませんか?」


と言って豆味噌のおにぎりを差し出した。


「うん、貰う」


一個受け取り、口に運ぶと懐かしい那古屋の味がした――。



「一刻後、神屋殿と小一郎が戻って来なかったら生野城を攻めるぞ」


俺がそう言うと、半兵衛は極めて冷静に「はい」と答えた。


「生野城は山麓と山頂付近の二か所に城が置かれております。お二人は山麓の城に向かいました。こちらはそれほどの防御力を持った城では無いので落とすのは容易です。しかし、もし山頂の城に連れていかれていた場合には、助け出すにも少し時間が掛かるかと思われます」


俺が焦ってソワソワしている間にも半兵衛は城の造りを調べていたらしい。さっすが。


「二人が捕まった場合、すぐに殺されてしまうだろうか」


「いえ、ただ殺すよりも人質としての利用価値を考えるでしょう」


「うん、だよな」


「生野城の戦力はおよそ一千。こちらの軍勢を見れば、おそらく籠城するでしょう。いや既に準備をしている可能性もあります」


「うん。その場合は半数を竹田城攻略に回そう」


「そうですね。竹田城からの後詰めが来ないとなれば、すぐに降伏するでしょうから。時間は掛かりますが、それが良いでしょう」


一通り半兵衛と作戦を立てた後、俺は本陣に戻り夕餉をとった。おにぎりだけじゃ足りないし。


と、食べている時に慌てた様子の兵が一人本陣に入ってきた。


「藤吉郎様!! 生野城へ同行した者が一人戻ってまいりました!」


一人だけ!? どういうことだ?


「よし、通せ!!」


バタバタと慌てたような足音が聞こえ、小一郎達と生野城へ向かった者が入ってきた。


「ただいま戻りました! 神屋様と小一郎様のご説得により、太田垣新兵衛殿がこちら側につきました!」


よっしゃ!! あの二人、やってくれたみたいだ。


「よし!! それで、神屋殿と小一郎はどうした?」


「まだ生野城にて、太田垣新兵衛殿と話をしております」



・・・・・・・・・・・・



次の日、俺達は兵を率いて生野城に入城した。


すぐに神屋源三と小一郎が、生野城城主である太田垣新兵衛を俺のもとへ連れてきた。


「太田垣新兵衛と申します。この度は神屋殿と小一郎殿を派遣頂き、ありがとうございました。お二人のお陰で私もようやく決心がつきました」


太田垣新兵衛によると、実は但馬国の内部では山名氏の力が弱まっており、新兵衛の父親である太田垣輝延ら国人衆の力がかなり強まっているとのことだった。今回の山名祐豊の毛利攻めは但馬の国人衆は反対している者が多かったらしい。


太田垣氏も反対派だったそうで、国人衆の反対を押し切って尼子氏の加勢をした山名祐豊に国人衆達の不満が高まっている所だったそうだ。


「竹田城の父にも使いを送りました。父も山名祐豊への不満を私以上に抱えております。必ずこちらの味方になってくれますでしょう」


「そうですか、それはありがたい」


俺がそう言うと、急に太田垣新兵衛が居住まいを正して頭を下げた。


「城を明け渡した身でこのような事を願い出ますのは差し出がましいことだと重々承知の上でお願いがございます」


うぉ、なんだ! 急に改まってきたぞ……。


「この生野銀山の運営を今後神屋殿と小一郎殿が行うのであれば……私もお二人の下で銀山運営を学ばせてもらえませんでしょうか!?」


へ? そんなこと??


「まぁ、いいけど……」


どうやら、神屋源三と小一郎が生野城に入ってから、太田垣新兵衛とずーっと三人で鉱山について話をしていたらしい。半日も!! どうやら鉱山マニアが揃ってしまったようだ。


その時に『治田銀山』と『畑佐銀山』の運営の話を聞き、その先進的な運営方法に感銘を受けたとのことだった。


へー。神屋源三と小一郎がそんなに先進的な運営方法をやっていたとは。しかし確かに年々二つの銀山からの銀の産出量は増えていたから、色々と工夫していたんだろう。やっぱり二人に任せて良かった、と改めて思った。


色々と心配はしたが、結果、無事に生野銀山は手に入った。


そして、そうこうしている間に竹田城からも伝馬が戻ってきて、太田垣輝延も我々に協力をしてくれるということで話はまとまったのだった。


更に更に太田垣輝延が他の但馬の国人衆達の説得もしてくれて、あっという間に山名祐豊の居城である此隅山城までの道のりの途中にある各城の城主達が我ら木下軍に寝返ることになった。


トントン拍子、ここに極まれり。


この一連の流れが後に『木下藤吉郎がたったの10日間で但馬の国の18城を落城させた』と尾鰭がついて英雄伝説みたいに広がるとは当時の俺は考えもしていなかった――。




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