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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第三章

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53話 青天の霹靂

青天の霹靂――。


「藤吉郎。妹の旭を松平蔵人佐へ嫁にやらぬか?」


信長に突然上段之間に呼び出されると、いきなりそう切り出された。

え!? 何を急に!?


「旭を……ですか?」


混乱の中、なんとか言葉を絞り出す。


「うむ。先方からのたっての希望でな。側室としてだが、智も良いのではないかと言っておる」


(ねーちゃん)……なんで反対してくれないの……


「……はい。大変ありがたいお話ですので、さっそく旭に話してみます」


信長から言われたら、俺に断れる訳がないではないか……。あの慎ましい旭が一人で三河の地になんて、行けるはずがない。もし旭が嫌だと言ったら、処分覚悟で旭を連れて逃げるしかない。


そう心に決めて、上段之間を辞去する。


旭と二人きりで話をしてみよう。もしかして(ねーちゃん)に強引に勧められているかもしれないし。俺はいつでも旭の味方だぞ!


その日の夜、旭を部屋に呼んだ。


「兄さま。御用とはなんでしょうか?」


旭は清洲城で働くようになってから、俺のことを『兄さま』と呼ぶようになっていた。以前の『兄ちゃん』も可愛かったが、『兄さま』と初めて呼ばれた時は本当に体が震えるほどの感動だったのはここだけの話。


「うむ。実はな、その……三河の松平蔵人佐殿が……その……お前を嫁に欲しいと……」


俺が旭の反応を気にして、しどろもどろに伝えると、途端に旭の顔がみるみる赤くなっていった。


「……はい。姉さまから聞きました」


俯きながら旭が嬉しそうに答えた。 あれ?


「も、もし旭が嫌なら、兄さまが先方に断りをいれても良い……」


俺が震えながら聞くと、旭は俯きながらゆっくりとかぶりを振った。 あれれ?


「いえ。……とても嬉しいです」


俺の心配は杞憂だった。これはむしろ旭が恋している顔だ。ああ、これは反対なんてできない……幸せになれよ、旭。嫁に行っても、時々は『兄さま』って聞かせてね。


こうして旭は三河の松平元康の下へ嫁ぐことが決まった。



そうと決まったら、旭の婿がどういうやつかしっかりと見極めなくてはならない。俺は信長の許可を取り、石川与七郎へ松平元康への面会をセッティングして欲しい旨を伝え、すぐに岡崎へ向かった。


「この度はわざわざご足労いただき、ありがとうございます」


松平蔵人佐と名乗った青年は、格下であるはずの俺に対して慇懃に述べた。非常に感じの良い青年であった。幼い頃から今川家で人質生活を送っていた苦労人と聞いたが、そのせいもあるのだろう。


「こちらこそ突然の面会申込みでご迷惑をお掛けいたしました」


俺も不作法を丁寧に詫びた。


「いえ、本当は先日の清洲茶会の席でお礼を述べたかったのですが……」


松平元康がそう言ったので、俺は聞き返す。


「お礼?」


「ええ。今川家との人質交換についてのご助言は貴殿から頂いたと石川から聞いておりましたので」


ああ、あの時の事か。旭のことで頭がいっぱいで、すっかり人質交換の件は脇に追いやられていた。


「いえ。私は提案をしただけですから。言うだけなら簡単ですからね。実行してのけた石川殿が素晴らしかっただけで、私はお礼を言われる程のことはしておりませぬ」


思ったままのことを口にすると、松平元康は少し驚いた顔をした。


「あなたの様な方には初めてお会いした気がいたします……これまで自分の手柄ばかりを声高に主張する方達ばかりを見てきましたので。中々に潔い考え方ですね。さすがは旭殿の兄上ですな」


なんだ? ヨイショされてるのか? と一瞬思ったが、松平元康は本当に感心したような顔でこちらを見ていたので……ああ、結構大変な感じの環境で育ってきたんだな、と改めて思った。


松平元康はここで一度、居住まいを正して話し始める。


「改めまして、この度はこちらの申し出を受けていただきありがとうございました」


松平元康は俺に対して頭を下げた。そして、顔を上げると再び話し始める。


「藤吉郎殿にはきちんと話しておきたいのですが……私には既に正室がおります。今川家の血をひく女性で瀬名姫と申します。先日の人質交換で取り戻した一人はこの者です」


俺は頷く。


「……しかし、訳あって瀬名姫とは別居をすることにいたしました」


「え?」


急な話の展開に松平元康の意図を掴みかねる。


「旭殿には側室として入っていただきますが、奥の仕切りは旭殿にお任せするようになるかと思います」


あ、もしかして遠まわしに正室扱いしてくれるよって言ってるのかな? どうやら松平元康は、かなり律儀な性格のようだ。


この青年の下であれば、旭も幸せに暮らせるかもしれない。段々とそんな気持ちになってきた。 


「旭のこと、くれぐれもよろしくお願い申し上げまする」


俺は松平元康に深々と頭を下げた。



こうして松平元康との面会を終えた俺は、そのまま岡崎城内で石川右馬允・与七郎の親子にも会うことが出来た。


その時に石川与七郎に聞いた話によると、どうやら先日の清洲茶会の時に、松平元康が旭に一目惚れをしたのが事の発端だったらしい。


遠目から見ていた石川与七郎は主君のその様子に気づいたらしく、そのため俺に旭の事について尋ねたのだということだった。


ちなみにさっき話題に出ていた元康の正室『瀬名姫』については、美しいのだが大変に気位の高い女性ということで今川家の手前、元康も扱いに苦労をしていたということだった。


別居することになったのも、その辺りが関係しているみたいだ。どちらにしてもそんな性格のお姫様なら別居で本当に良かったと思う。同居だったら絶対に旭ちゃん虐められちゃうよ……。


松平元康の采配に心の中で喝采を送る。


こうなってくると、やっぱり松平元康が徳川家康ならいいな。そうすれば、旭も天下人の嫁として……。


おっと、ちょっと待てよ。たしか、豊臣秀吉と徳川家康ってあんまり仲良くないんじゃなかったっけ? 豊臣家を滅ぼして、徳川幕府を作ったはずだから……あれ? こうなると、どうなるんだ?


うーん。分からないけど、松平元康が徳川家康だとしても違うとしても、旭の旦那として仲良くはしていきたい。ま、いつも通り俺は俺の出来る範囲で頑張るしかないよな。


現状一番の懸念である『本能寺の変』だって、まだ明智光秀が周辺には出てきていないからまだ大丈夫だろうし、まだ時間はある。なんとか歴史を変えられるように動ければいいのだけれど。


また少し、頭が痛んできたので考えるのを止める。


どうやら歴史を変えようと考えると頭が痛くなるようだ。なんか変な力でも働いてるのだろうか? まあ、そもそも俺がこの世界に存在していることが変なことだからな。ある意味、変な力は既に働いているのだ。


俺にどこまでできるだろうか。 けど、少なくともこの世界で出会った人たちができるだけ幸せに暮らせるように頑張るのが俺の役目なのかもしれない。



そんなことを考えながら、俺は岡崎をあとにした――。




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