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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第二章

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42話 又左衞門の事件

信長の尾張守護任命、先生との再会、と実りの多い上洛は無事に終わった。


その後、信長と俺達家臣団は京都のほかに堺を見物し、尾張へ帰ってきた。


堺見物は俺にとっては感慨深いものがあった。


以前、津島の大橋清兵衛に会ったときに「清洲を堺以上の商いの町にする!」と大口を叩いたことを思い出す。…なるほど、実際に見てみて堺を超えるのは並大抵ではない事を改めて認識する。


この時代において既に自治都市の様相を呈している堺は、ここだけなんだか懐かしい資本主義の雰囲気が感じられたのだ。


しかし、できないことは無いはずだ。清洲も堺のような資本主義に近い町にしたい…俺の心の何かに火が点いた様な気がした――。



・・・・・・・・・・



こうして上洛を終えてから、しばらくは平和な日々が続いた。


このまま平和な日が続いてくれたらいいなぁ…なんて考えていたが、悲しい事に平和は長くは続かなかった。


又左衞門が大事件を起こしたのだ。


信長の目の前で、信長の同朋衆の拾阿弥と言う茶坊主を切り捨ててしまったと言うのだ。


確かに拾阿弥は事あるごとに又左衞門に絡んだり嫌がらせをしたりしており、又左衞門も前からイラついてはいたが。しかし、いくらなんでも殺すのはやり過ぎだろ…。


当然、信長は激怒して危うく又左衞門は手打ちになるところだったという。


鬼柴田のおっさんと森可成というおっさんが謝ってくれて、出仕停止の処分でなんとか事は収まったという危うい事態だったそうだ。鬼柴田が案外良い奴だと言うことは分かったが…。


又左衞門…どうすんだよ。子供も生まれたばっかりだってのに…。


午前中、熱田に所用で出かけていた俺がこの話を一若から聞いたのは、その日の夕方だった。

又左衞門はすでに城から立ち去ったと聞き、急いで家に向かう。


「又左衞門!!」


俺ん家の隣の前田家へ飛び込む。


「藤吉郎様!」


又左衞門の嫁のまつが赤ん坊を抱いて、泣きそうな顔で立っていた。


「何しに来た? 藤吉郎?」


又左衞門が部屋の荷物をまとめながら、俺を睨んだ。


「何しに来たじゃねーよ。一体どうしちまったんだ? なんで拾阿弥を斬ったんだよ? 出仕停止になったって本当か?」


立て続けに質問する。


「本当だよ、だから出ていく準備をしてんじゃねーか!! 拾阿弥についてはどうしても許せねーことがあったんだよ!!」


理由はそれ以上は言いたくないようだった。又左衞門の野郎、酷い剣幕だ。こりゃそうとう頭に血が上ってるな。


「待て待て、落ち着けって。 出ていくってどこに出ていくつもりだ?」


「知らん。この機会に他の主君を探すのもいいかもな!」


「…ちょっとこっちに来い」


俺は不安げにやり取りを見ているまつに心配を掛けないよう目配せをして、又左衞門を外に連れ出す。


「殿には俺からもなんとか頼んでみるから、少し頭を冷やせって」


「俺は冷静だ! 殿はもう俺を要らぬと言ってたんだ。他に行くしかないだろう!」


「せっかく、柴田殿と森殿に庇っていただいたんだろ。お二人の為にも早まった真似はするなって」


「む…しかし…」


うーん。このままだと、こいつ路頭に迷っちまうな…どうしようか…。えーと、誰か…お願い事し易くて…金持ちで…余裕があって…信頼できる人は居ないか…?


一瞬で色々な候補者を頭に浮かべる・・・居た!!


「熱田に知り合いが居る。そいつに頼んでやるから、しばらく熱田で暮らすといい。折を見て、殿にはお前を許してもらえるよう進言するから、な?」



・・・・・・・・・



「…と、言う訳で、すまんがこの又左衞門と嫁と赤子を匿ってもらいたく」


「…藤吉郎…おま…いきなり来て…」


呆れたように、七郎左衛門が呟いた。


うん。わかるよ。そういう反応になっても仕方ないよね。


あの後、又左衞門はどうしてもすぐに清洲から出ていくと言って聞かなかったので、そのまま又左衞門と俺でまつと赤子を連れて、4人ですぐに熱田へ向かったのだった。


で、いきなりアポなしで七郎左衛門にお願いしている次第だった。


「伯父様。困っている方がいらっしゃったらお助けするのは当然のことです!」


黒髪の美しい少女が口添えをしてくれた。


なんとこの日、七郎左衛門の所にちょうど寧々ちゃんが遊びに来ていたのだった。寧々とは久しぶりに会えたので俺にとっては嬉しい誤算だった。


「七郎左衛門!!頼む!!」


俺は七郎左衛門に頼み込む。これでダメならスライディング土下座をしよう!



「…わーかったよ。わかった。離れが空いてるから、そこに住んで貰って構わないぞ」


「本当か!? さすが七郎左衛門!! ありがたい!!」


俺を見て肩を竦めると、七郎左衛門は又左衞門の方へ話しかけた。


「荒子前田家の方とお聞きしましたが、このような商家でよろしければどうぞお気の済むまでご滞在下され」


又左衞門も丁寧に返答をする。


「かたじけない…突然転がり込んでしまい甚だご迷惑をお掛けしているのに、そのようなお気遣いまでいただき。…このご恩はいつか必ずお返しいたします…」


「では、さっそくわたくしが離れにご案内させていただきますね」


寧々が嬉しそうに立ち上がった。


「さあ、こちらへどうぞ」


寧々が又左衞門と赤子を抱いたまつを案内する。


「あ、俺も行ってみたい」


なんとなく寧々の近くに居たくて、俺も一緒に付いていく。


「かわいいですね…お名前はなんと?」


(こう)、と言います」


「あ、笑った!」


寧々とまつが赤子を見ながら話しているのを、ほんわかした気分で見守る。


「藤吉郎…迷惑を掛けてすまんな…」


ふいに又左衞門が口を開いた。


「いいって。困った時はお互い様だろ。それよりもさっき言った通り、早まった真似はするなよ?」


一応、釘を刺しておく。


「ああ、やっと頭が冷えたよ。俺はやっぱり上総介様の下にお仕えしたいんだ。なんとか許して頂けるよう、頑張ってみるよ」


「おう。俺も殿に掛けあってみるからさ」


こうして又左衞門は清洲城から出奔したことになり、熱田で浪人生活を送ることになった。


その後、何度かタイミングを見ては信長に又左衞門の赦免を願い出たが、未だ信長の怒りは解けないようでなかなか聞いては貰えなかった。


そうこうしてる内に年が明け、春が来た。



そして永禄3年5月、更に大きな事件が起こってしまったのだった――。





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