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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第二章

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31話 姉の恋

馬は無事に借りられた。

松下家に居た時以来の久しぶりの乗馬だったが、問題無く上手く乗りこなすことが出来た。


しかし、頭の中は心配ごとでいっぱいだった。


一体、智は何をしたんだろう?信長は怒っている…訳ではなさそうだったが、いつもと違う感じはした。大丈夫だろうか。


もし、智が信長に切られるような事態になったら、俺はどうすればいいのだろうか…。いや、決まっている。智を殺されてたまるもんか。どんな手を使っても、絶対に智は守る!


改めて決意を固め、馬を走らせた。


馬を借りたお陰で、中々村には暗くなる前に到着することが出来た。家の近くの木に馬を繋いで、急いで家に入る。


「ただいま!!(ねーちゃん)は居るか?」


「兄ちゃん?」


旭がキョトンとした顔でこちらを見る。


グハ!我が家に天使が居る!!!旭はますます可愛くなったなぁ…。やべえ!お土産買ってくんの忘れちゃった!!旭ちゃんに嫌われちゃったらどうしよう!!!・・・って、そんな場合じゃなかった。


「あんた、どうしたの?」


裏の方からナカ(かーちゃん)が出てきた。


(ねーちゃん)に急ぎの用事なんだ」


ナカ(かーちゃん)と旭が顔を見合わす。


「智なら今日も寺に勉強を教えに行ってるよ。もうすぐ帰ってくるんじゃないかい?」

「わかった。ありがと!」


そう言って、すぐに寺に向かって走る。

ちょうど寺の入り口近くまで来た時、向こうから智と小竹が歩いてくるのが見えた。


(ねーちゃん)!!!」


大きな声で呼びかけると、二人はびっくりした顔でこちらを見た。


「兄ちゃん?帰ってたの?」


小竹が嬉しそうに手を振る。おお、相変わらず愛い奴よのう。


「藤吉郎?あんた、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないよ。殿から伝言を預かってきたんだ」


俺の言葉を聞いて智はピクッとした。そして小竹に言う。


「小竹、先に帰ってて。ちょっと藤吉郎と話があるから」

「う、うん。分かった。けど後で兄ちゃんもおうちに帰って来るんだよね?」


小竹は心配そうに俺を見る。


「うん。今日は泊まっていくから、後で家に戻るよ」


おれは頷いてそう言った。


「わかった!じゃあ、また後でね!!」


そう言って小竹は走り去った。

走り去る小竹を目で追って、遠くに行ったのを確認すると智が口を開いた。


「ちょっと、こっち来て」


そのまま二人で歩いて、寺の『裏山』へ行く。

・・・なつかしいな。ここで一太達と戦ごっこしたっけ。あの時に初めて信長(さぶろう)に会ったんだよな。


「三郎はなんて言ってたの?」


裏山に着くと智が口を開いた。


「えっと。『早く返事をよこせ』と『嫌なら強制はせん』って…一体何があったんだ?ねーちゃん?」


一瞬の沈黙。


「弥助・・・」


急に智は俺のことを幼名で呼んだ。・・・その声は震えていた。


「私、どうしたらいいか分からないの・・・」

「え?」


「・・・三郎が、側室にならないかって」


「え゛?」


絶句。




しかし、俺の頭の中には『パパパパーン♪パパパパーン♪』と場違いなほど高らかにメンデルスゾーンの結婚行進曲が鳴り響く。



「・・・そんなに驚かなくても良くない?」


固まった俺を見て、智が少し笑う。


「そ…側室と言うのは…その…殿と…その…あの…夫婦になるってことだよな?」


ようやく声を絞り出す。


「ふふ。弥助、私と同じこと言ってる」


智は泣きながら笑っていた。

・・・智が泣くなんて、久しぶりに見た。そんなに悩んでいるのか…。


「ねーちゃんは嫌なのか?三郎と結婚するのは?」

「・・・ううん。嫌じゃない」

「じゃあ・・・」

「でも、色々考えちゃうの。私なんかが三郎の側室になっていいのかって。こんな村娘を嫁にしたなんてなったら三郎も見縊られるんじゃないか、とか。他の奥方とかもいるわけでしょ?その人達も迷惑なんじゃないか、とか…」


へー。そんな殊勝なこと考えてたんだ。智らしくないな。ってか、マリッジブルーってやつじゃないか?良く分からんけど…。そんなに難しく考える必要あんのかな?


「ねーちゃんはさ、そのー、三郎のことどう思ってるんだ?」


自分の姉にこんなこと聞くのはこっ()ずかしいが、小さい頃から一緒に育ってきたこの姉には、絶対に幸せになってほしいとは思う…。だから後悔する判断はさせたくない。


「…好きよ。たぶん…初めて会った時から、ずっと」


マジかよ!?知らなかった・・・。


「ねーちゃんに断られたら、三郎はどう思うだろうな」

「・・・べつに。何も思わないわよ。殿様だもの。代わりの女の人はいくらでもいるでしょ」


そうかなー?でも、さっきの信長は心ここにあらず状態だったしなぁ。


「さっき殿に会ったときは、すごく元気なかったぞ。落ち込んでんだよ。ねーちゃんから返事が来ないから」


「え?」


「そもそも、殿が返事を待つってことがあり得ないからな。即答しか許さないぞ、部下には」


「…そうなの?」


「ねーちゃんの返事を辛抱強く待ってるんだよ。あんなに短気な人が」


「うそ…」


なんか自分で言っててだんだん信長が可哀想に思えてきた。きっと今はステイさせられてる犬状態だ。


「かわいそ…」


最後にボソッと呟いてみる。




「・・・ごめん!弥助!!ありがと!!!」


そう言うと(ねーちゃん)は走りだした。


あー。こーいうの昔漫画で見たわ。お互い好きなのに意地張っちゃう、みたいな。ま、俺は漫画で随分予習してたから、分かるよ。そういう気持ち。…実際に体験したことはなかったけどね!…おっと、なぜか目から汗が…はぁ、この人生はガンバろ。


そんなことを取りとめも無く考えながら、家路を急ぐ。辺りはいつの間にか薄暗くなってきていた。


家の近くまでいくと、バタバタバタッ・・・と鳥が飛び立つ音が聞こえた。

見上げると鳩が六羽、清洲の方角へ飛んでいくのが見えた。…飛ばし過ぎだろ、と思ったのは内緒だ。



まぁ、これでこの問題も丸く収まるかな。


・・・あれ?

ってか、冷静に考えてみると信長が俺のお義兄さんになるってこと?



えーっと。信長と秀吉が義理の兄弟なんて話あったっけ?あったような無かったような…えーと。



・・・ま、いっか。




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