第7話『天文部』
お久しぶりです
俺と琴音、彩華、柚葉は天文部を見学するために、校舎のある教室のドアを開けた。
「――って、誰もいない?」
「天文部の部員って一人だけじゃなかったっけ? 部長さんがいると思うんだけど……」
教室に入ると、琴音と彩華が続けて呟き、辺りを見渡す。だが、誰もいない。
「あれ? いつもいるんじゃなかったか? 今日はないのかな……」
仕方がない。部長がいないのであれば一度出直すか。そう思って、俺が琴音達に呼びかけようとすると、
「あれ、四人もいる。どしたの? 一年生だよね?」
驚いた顔で教室に入ってくる女子生徒がいた。金色の髪を肩まで下ろしている可愛いらしい子だ。
そして、俺たち一年生のリボンの色は赤なのだが、彼女は青色のリボンをつけている。つまり、二年生ということだ。この教室に来たということは、この人が部長なのだろうか。
「えっと……あなたが天文部の部長ですか?」
「うん! そだよー。もしかして、四人とも入部希望者!?」
「あ、今日は見学で……」
俺がそう答えると、部長は両手を合わせて笑顔で喜び、教室に入ってきた。
「良かった〜。新入生入ってこないと思ってたよ〜。アタシの従姉妹も一年生なんだけど、誘っても断られちゃったんだよね〜。だから来てくれて嬉しいな〜」
「そうなんですねー。部長さんは星が好きなんですか?」
「凄い好きだよー。毎日星空眺めてるし。――あ、入るんだったら名前教えてくれない?」
両手をパンッと合わせ、名前を聞いてきた。なので俺たちは、
「早乙女逸希です」
「早乙女琴音でーす!」
「酒井彩華です。よろしくお願いします」
「七瀬柚葉です」
と、それぞれ名前を言った。すると、部長は、
「おっけーおっけー。アタシは弥優奈。別に敬語とか使わなくて良いからねー」
そう自己紹介しながら、俺らの名前を入部届け用紙に書いていた。
「え!? ま、まだ入部するとは……」
「一応書いてるだけだってー。入りたくなったらアタシに言えばいいからさ」
見学のつもりだったのに入部届けを勝手に書かれ、焦ってしまうが、無理やり入れるつもりはなさそうなのでまあ安心する。書いているところを見つめていると、彼女は口を開いた。
「男子一人に女子三人で来るなんてねー。仲良いの?」
「琴音は双子の妹なんです。彩華は幼馴染で、柚葉は……と、友達です」
さすがに初恋の子……とは言えない。俺が知ってる柚葉ではないのだから。俺らの関係を教えると、弥さんは目を見開いて頷き、
「敬語使わなくて良いって言ったのにー。ま、いっか。てか双子なんだ〜。……あんまり似てない?」
「――言われると思いました」
まあ似てないと思われるのは日常茶飯事なので気にしない。苦笑いをして頭をかいていると、俺らの名前を書き終えた弥さんがゆっくりと立ち上がった。
「今日は来てくれてありがと。ま、今日はすることないし帰っていいよ。明日から活動しようねー」
なんともう終わりらしい。名前聞かれただけで終わってしまった。まあ、することがないなら残る必要もないので、俺らは顔を見合せ、教室から。出ていった。
だが一つ思うことがある。あの人多分――
今日活動するのがただめんどくさかっただけなんじゃ?
◆◇◆◇
「――わざわざありがとうね。一緒に来てくれて」
「良いって。そんなに離れてないしさ」
四人で帰っている時に、俺は「送っていくよ」と柚葉に言って彼女に着いて行った。先日、一度送ったことがあったが、本当にすぐ近くなのでまだ一分程度しか歩いていない。
「それにしても、逸希くんが星好きだったなんてね。意外だったよ」
「そうか? まあ確かに意外かも。――ってか、最近は全然星を見てないんだけどな。天文部を見に行ったのも琴音が頼んできたからだし」
「琴音ちゃんは星好きなの?」
と、柚葉は聞いてきた。――あいつはどうなのだろうか。元々星が好きという子ではない。双子なんだし、それくらいはわかる。多分、というか、絶対にそうだ。
琴音はただ、俺がゆずちゃんと仲良くなりたくて星を観察したりしていたのを真似していただけだ。
「あいつは……俺が星を見てたから真似してただけだと思う。そんな子だったし」
「ふふっ、琴音ちゃんらしいね。逸希くんのことが大好きらしいし」
「そんなこと言ってたのあいつ?」
「うん。話してた時にね。すっごく笑顔で言ってたよ」
あいつが俺のことを大好きなのは知っている。もちろん、家族愛としてだが。だが、そんなことを友達に言っていると知ったのは正直恥ずかしい。もう少し抑えてもらいたいと思う。
「――あ、もう着いちゃった」
「ほんとだ。早かったな」
気がつくと、柚葉の住むマンションの前まで来ていた。柚葉は何やら名残惜しそうに俺の顔を見て、明るい笑顔になった。
「また明日ね。バイバイ。気を付けてね」
「ああ。じゃあな」
――そう言い残して、マンションに入っていく柚葉の姿が見えなくなるまで、俺は彼女を見つめていた。




