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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行で一緒。
127/144

番外の話――公園七日間。木と金の話。

やっぱり先に番外編を放出してしまうことにしました!


アイス屋の店員さんでお腹いっぱいになるかと思いますが、どうぞ!


 木曜日、東城ゆりかの場合。


 ……失敗したのですね、わたくしは……。

 わたくしの表情を見てか、目の前の彼女は問いかけてきましたの。


「どーかしましたかー?」


「いえ、急に甘いものが食べたくなったからと言って、ここに足を運んでしまったことを思いっきり後悔しているところですの」

「そうでしたかー」


 …………最初にあった時は気づきませんでしたが……そうですか、ここの店員さんはわたくしの天敵となる部類の方でしたのね……。


「そんなことはないと思うんですけどねー?」

「そこですの! そういうところが天敵ですの!!」


 会っていきなり考えていることを当てられたときはびっくりしましたの。

 でももしかしたら表情にでてたかもと、そこから先はポーカーフェイスに努めていたはずですのに……。


「結局無駄でしたの……それどころかこちらから表情をうかがっても全く何を考えているのか読めません……あなた……いったい何者ですの?」

「なにものですかー? いえいえー私はただのーアイス屋の店員さんですよー?」


「…………そちらがそのつもりなら、別にかまいませんの。こちらにも考えがありますのよ」

「むむー、色々使って私の事を調べるつもりですねー? そんなことをしたらとんでもないことになりますよー」


「どうしてわたくしのやろうとしたことをすぐに理解したのかはわかりませんが、やはり調べられたくないのですね。……ちなみに? その、とんでもない事とは?」


 わたくしがそう言うと、少し溜めて店員さんは言いましたの。


「……私に手を出すと…………すべてのアイス屋さんが敵になることになりますよー」


 ……………………っ?


「…………えっと、どういう理由で、どうしてそうなるのかはわかりませんが……そ、それくらい、なら……」



「すべてですよー? 私の事を調べたその時から、日本に限らず、世界中のアイス屋さんは敵ですー。さらにはRPGでストーリー進行上、重要な情報を持ったNPCのアイス屋さんの店員も、私に手を出せば、すべて敵ですー。話してくれないどころかエンカウント扱いですー」



「どういう事ですの!? 何をどうすれば出来上がったゲームのシステムまで変更になるんですの!? 本格的に何者ですの!!?」


「冗談ですよー?」

「当たり前ですの!!」


 ……つ、疲れてきましたの……。


「いやー、それはそれとしてもー………………調べたところで、何も出ないと思いますけど、ね……」


「え……? 今、最後なんと……?」


「はいー? 何かありましたかー? それより、ちょうどよかったですねー。疲れた時には甘いものですよー」

「え!? あ! また読まれましたの!」


「ふふー、そんな訳あるはずないじゃないですかー。そういうのは、隠そうとすればするほど、表情に出やすくなるんですよー?」

「……そ、そういうものですの……?」


 た、確かに言われてみればそんな気も。


「ふふー、はいーご注文の品ですよー。私の長話に付き合わせてしまいましてごめんなさいねー? おまけでサービスしておいたので、許してくださいねー?」


 そう言って、アイスの他に、焼き菓子が添えられてましたの。

 ……こんなものまでありましたのね。


「おまけ、ありがとうございましたの。こちらこそお店の前で騒ぎ立ててすみませんでしたの」

「いいえー、ついつい面白くなってしまって、からかいすぎてしまいましたー」


「え!?」

「ではー、ありがとうございましたー」



 ………………………………。


「……はぁ……またわたくしをからかう人が増えましたのぉー…………わたくしは、からかいやすいんでしょうか……」





 金曜日、藤森宗一の場合。


「…………ここかぁ。神尾と飯田さんとゆっぴーが揃って『謎』と言い切ったアイス販売車」


 今日学校に行ったらそれぞれ、神尾が疲れた顔で、飯田さんが興奮したような顔、ゆっぴーが複雑そうな顔をして何かを話してるから気になって聞いてみたら、このアイス屋のおねーさんの情報を得た。


「こんな面白そうなところに見に来ないなんて嘘だろ」

「そうね。三人の反応の違いの理由が知りたいわー」


「いや、三人と言うか、神尾とゆっぴーの二人と飯田さんとの違いだがなー……って、なんでいるか」


 びっくりして横を見るとなんでか渡さんもいらっしゃったよー。


「いや、あたしもちょっと気になってねー。まあこれも何かの縁だしさ」


「……なんからしくないんですけど」

「ああ、もちろんここは藤森君のおごりだもんね?」


「それか!? たかりに来たか!」

「ね?」


「嫌に決まって「……ね?」…………はい」


 釈然としないけど、勝てる気がしないよねー。

 てな感じで駄弁ってると、おねーさんがフラフラと現れた。


 ……なんかゆるキャラみたいだ。


「いらっしゃいませー。あらー? ふふふーデートですねー?」


「「違います」」


「あらー意外とローテンションな切り返しですねー」

「「事実ですし」」


「でも息はピッタリですねー」


「とりあえずそれは置いといてください……にしても……」

「……うーん、今の所はなんとも……」


 と、渡さんと軽く目を合わせる。


「なーんですかー?」


「「あ、いえいえ何でも」」


「やーっぱり息はピッタリですねー」



 その後、アイスを購入して、設置してある椅子に座りながらおねーさんを観察してみる。


「………………」

「………………」


「ありがとうございましたー」


 多いとは言えないが、ちょいちょいお客さんは来る。

 でも、別段変わったとこもない。


「…………普通に見えるんだけどなぁ」

「…………でも、あの三人が揃って、だからさー」

「そうですねー。常連さんによって私の印象は様々ですからねー」


 ……………………。


「うぉっ!!」「ひゃっ!!」


 気が付いたらおねーさんが隣にいた。


「ふふふー、ごめんなさいー。視線がくすぐったかったからついー」

「バレバレですか……」

「藤森君、まず謝る。すみませんでした」「でした」


「いいえー気にしてませんよー。おなじみの常連さんのお友達が、今日新たに常連さんになってくれましたからー」

「え? 常連って、あたしたち、今日初めて来たのはそうですけど、また来るかはわからないですよ?」


「一回来てくれただけで、私の大切な常連さんですー」


 そうニコニコキラキラ笑いながら断言するおねーさん。

 ……そのきれいな笑顔が、ま、眩しいっ!


「あららー、お二人とも同じように褒められるなんて、照れちゃいますー」


 おおっ! 照れた姿も不思議なかわいらしさが……!


 俺が(恐らく)年上の女性のかわいらしさについて考えていると、

「あれ、ちょっと待って……今……」

 何やら渡さんが不思議そうな顔をしていた。


「こらこらー、女の子と二人の時に、その女の子をほったらかしにして、あんまり他の女の子を褒めてはいけませんー。これはサービスですから、これを食べてお二人とも仲良く帰ってくださいねー?」


 そう言って、かわいらしいスプーンが二つ付いた、ちょっと大きめのカップに入ったアイスに持たされ、渡さんと一緒にぐいぐい背中を押されてしまう。


「……え!? あ、どうもー!」「いや、ちょっと、あたしまだ聞きたいことが……!」


 背中を押されるのが終わり、パッと後ろを振り向くと、


「「早っ!!」」


 すでにおねーさんは元いた場所に戻っていた。


「「……………………」」


「……ねぇ」

「……んー?」


「さっき、すごいいい笑顔でいいこと言ったとき、藤森君何て考えてた?」

「え、きれいすぎる笑顔が眩しー」


「……あたしも似たようなこと思ってたんだよね」

「…………そういえば、その後誰も声に出してないのに褒められたってわかってたよな」


「…………しかも同じように褒めてたのもわかってたっぽい」


「「……………………」」


「…………アイス、食うか」

「…………そーね」


「うん、うまい」

「何で二人仲良く一つのアイス食べてんのかはわかんないけどね……あれ? これ、クッキーになんか文字書いてる?」


「ん? えーっと……『訂正 金曜日、藤森宗一と渡瞳(・・・)の場合。』……なんぞ? これ」

「……さあ……」



 …………確かに『謎』って言葉がよく似合う……かも。




ツッコミどころの判断はお任せします!


ここらで怖いのが、アイス屋の店員さんの行動が単調になってしまうことです。

少々変化はつけてるつもりですが……。


もうそろそろお腹いっぱいかと思いますが、もう一話この手の話が続きます!

どうぞ、くどくなって胸やけなどせぬよう……。


感想お待ちしております!!

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