少女に対する照れと、彼女に対する照れと、の話
こちらが先にできたんで、投稿します。
遅くなりました。
「おお……飯田さんが勉強しとる……」
漫画片手に藤森が戻ってきた。
「うん! 瞬君に教えてもらってるから!」
確認したが、一応今日も飯田の家で勉強をしていいらしい。
……昨日は正直やりすぎたから、今日は加減でもしてやるか。
そんなことを考えていると、藤森が半笑い、かつ茶化す口調で言ってきた。
「いやー、それにしても……休みごとに一緒に勉強、帰ってもお家で一緒に勉強。仲良しこよしだのー。にやにや」
「ふぁっ!! ふ、ふじもりくん!?」
「…………お前にその情報を教えた覚えが無いとか、口で『にやにや』って言うなとか、色々言いたい事があるけど、とりあえず、辞書を貸してくれないか?」
「はい? いや、持って無いけど、いきなり何なんだ?」
「いや、言い方が腹立ったからそれで叩こうかと思って」
「ひどっ!! 暴力反対! いや、せめて武器反対!! 学生の身で使用していい武器は『ハリセン』に限られてるんだぞ!?」
何でだよ。
「まあいいや。ハリセンならいいんだな? おい田中、ハリセン持ってない? 厚めの型紙で出来たやつ」
「わ、わざわざ厚めの紙を指定しなくても……ま、まあ、ハリセンで叩くぐらいなら、いくら固くてもたかが知れてるが」
後ろで呟く藤森の声を聞きながら、田中に商品を求めた。
「ふぅ、喉渇いた……あ、神尾君。ハリセンですか? ありますね。じゃあ、この一番固いやつでいいですね?」
「あ、ああ」
俺から頼んどいてなんだけど、田中……どうして鞄からハリセンがスッと出てくるんだ……?
……いや、深くは突っ込まないでおくか。
「ありがとな、じゃあ俺はもう行く」
俺は田中に礼を言って、振り返り、
ちゃりーん。
不運にもそこで俺のポケットから百円が零れ落ちる。
「あ、神尾君、お金落としたよ?」
「あー、拾うの面倒くさい。やるわ」
「いいんです? ちょうど飲み物がほしかったとこだったんですよ」
「そりゃよかった」
元の場所に戻ると、律儀にも藤森はちゃんと待ってた。
「神尾、田中ぽんの支払いが上手いのか下手なのかわからん」
「誰だよ田中ぽんって。……まあ、今はそれよりこれだろ」
「よし来い!」
ハリセンを手の平で叩く俺に、潔く言い切る藤森。
俺は無言で構えを取る。
「…………」
「が、牙突だと!? 何故ハリセンと言う叩く道具を持ちながら、突きの体勢を!?」
「こっちの方が痛いだろ」
「ことごとくひでぇ!」
喚く藤森を無視して、攻撃に移ろうとしたが、意外な人物から意外なストップがかかった。
「わ、わ、わ! 瞬君かっこいー!!」
「は、え……?」
「確か何かのマンガの技だよね? すごいね瞬君、様になってる!」
「な、何言って……」
飯田の目を見ると、悪気やからかいなどは一切感じられず、純粋にほめているらしい…………それだけにたちが悪い……。
なんだこの妙な恥ずかしさ。
俺の困惑をよそに、飯田はさらに追い打ちをかける。
「えへへー、私は瞬君に会えて良かったよ。一緒にいて楽しいし、勉強も教えてもらえるし、かっこいい姿も見れたし。……こう言ったらあれだけど、シアンに感謝だね!」
…………なんだこれ。
満面の笑みで何を言っとるんだ、こいつは……てか、どのタイミングで俺はこんなに飯田に懐かれた……?
顔が熱い。
そして気がついたら周りが静まり返ってた。
な、なんだ貴様ら、なぜそんな妙な目線を送ってくる!?
「え、えーっと……」
「ん? 瞬君どうしたの?」
「い、いや……話が逸れた。勉強だ勉強」
「あ、そうだね! ゴメンね?」
「いや、謝るな。悪いのは藤森だから」
「うん、そうだったね」
…………周りの多数の人間からため息と、小さく「……逃げた」と言う単語が聞こえてきたが、面倒くさいからスルーだ。
藤森が「俺に対するフォローはぁー!?」と叫んでいるが、それもうるさいからスルーだ。
結局、学校が終わるまで、妙な目線はやむ事がなかった……。
「た、ただいまー……」
疲れ気味に言うと、
「………………おかえり」
少し考え込んでいるような夜羽の返事が聞こえた。
「……どうした? 夜羽」
「ん……? ……んーん、大丈夫」
と、明らかに大丈夫じゃなさそうに言う。
表情は、なんと言うか、困惑気味だった。
「……そうか。なら、大丈夫じゃなくなったら、必ず、俺に言ってくれな?」
「…………ん……シュン?」
「どした?」
「前に、ワタシと一緒にいたいって言ったの、まだ同じ?」
「ああ、当たり前だろ。変わらない」
「……ん。……ワタシもシュンと一緒にいたい」
夜羽はそう言って、俺をじっと見つめる。
「おお、なら問題ないだろ? ……よし、じゃあとりあえず今日も勉「待って」……お?」
「一緒にいたい。まだ……ワタシのそばに、いて……?」
……………………。
「……お、おお……!?」
な、なんだ、どうした!? なんだそのセリフは!
学校に引き続きまた顔が熱くなったぞ……。
最近は恥ずかしくなる様なことを言うのが流行なのか……!?
「……? シュン?」
動揺する俺を見て、コテンと首をかしげる夜羽。
ど、どうすればいいんだろうか……。
さてさて、瞬君どうするのやら。
お楽しみに……?
あ、ついでに、あとがき小話を一つ
――会長と副会長の会話。
「……飯田さん、いつもと違ってさらっとすごいこと言ったなぁ」
「あー……まなちゃん、何か感動するようなことあると、無自覚にああいうことやらかすみたい。あたしも似たようなこと言われたし。……後、まなちゃんの中学の友達から聞いたんだけど、昔、まなちゃんにああいうこと言われた男子が、別高校に行って、どんなに人気者になっても、未だにまなちゃんのことが忘れられないって言ってた」
「なにそれこわい。どんな魅了だよ」
「と言っても、結局告白する勇気が無くて諦めたヘタレらしいけど」
「ふーん……でも、今はそんなことより……見たか?」
「ええ、見たに決まってるわ」
「「ついに神尾(君)が飯田さん(まなちゃん)を意識しだした」」
「顔、赤かったな」
「誤魔化して逃げたわね」
「面白くなってきたわい」
「言っちゃ悪いけど、そうね」
「俺たち」「あたしたち」
「「『見守る会』の楽しみが増えた」」
「みんなに心して見守るように言っとけよ」
「もちろん……すでに言ってあるわ」
続く?
……感想お待ちしております!




