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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行前で一緒。
102/144

昨夜の結果と説教とあだ名の話。

次の日ですー。


 翌日、学校に行くと、すぐに東城さんに捕獲された。

「ゆっぴー、痛い」

「……色々お話はありますけど……まず! ゆっぴーはやめてくださいと言ったはずですの!」


「でも昨日……」

「勘違いですの!! ……まあいいですの。幸いまだ藤森くんには伝わって無いようですし」


 ? と言うことは、昨日はただツッコミ忘れただけ?

 ……そうか、なら……まだからかい甲斐があるね。

 あだ名に慣れてしまったなら、もうからかいには使えないとか思ったけど、心配はなさそうだ。



「とりあえず、本題に入りますの。こちらを」


 そう言って東城さんは書類の束を渡してきた。


「……これは?」


「作成した夜羽さんの情報ですので、しっかり内容を把握して置いてください」


「ず、随分早いな……」

 昨日の夜に頼んだはずだが。


「あまりお待たせしすぎるのもよくありませんの」

「……だな。ありがとう」


「……そうですね。今回はそのお礼を受け取っておきますの。あなたから頼まれた事(・・・・・・・・・・)ですので」



「いや、そんな暗い顔されても困るんだけど? 昨日のは東城さんが正しいんだよ。……あのままだと、俺は何も言わずに、責任も何も、東城さんに全部押しつけるところだったから。……だからむしろ、ああ言ってくれて感謝してる。……ってことで、はい解決! この話は終わりな?」


 俺の言葉を聞き、東城さんは一つため息をついて、口を開いた。



「わかりましたの。…………では、もう一つのお話をいたしましょうか……」

「ん、ん……?」


 ……おや? 何か空気が変わったぞ?


 具体的に言うなら、シリアスからお説教な感じに……。


「神尾くん? 確か昨日やっと飯田さんに連絡先を教えたと仰ってましたね?」

「は、はい」


 つい敬語で、そう返すと、東城さんから怒気が発せられた。


 な、なんで!?


「神尾くん! 矢島獣医には連絡先を教えて、飯田さんには教えないというのは、少し失礼ではありませんの!?」

「い、いや、出会ってちょっとしてから、矢島さんは聞いてきたけど、飯田は聞いてこなかったから……です」


「そうだとしても、そこは神尾くんから教えるなり、聞きにいくなりすべきでしたの! 全く、あなたは「おっはよー!」……」



 俺が勢いのまま正座して東城さんのお怒りを受けていると、その話の中心人物が元気よく教室に入ってきた。




「おはよ、マナちゃん。どったの? 今日は機嫌いいね」

「おはよー(ひとみ)ちゃん。えへへ、ないしょー」

「なにそれー」



 飯田がクラスメートと仲良く話している様子を、俺と東城さんが無言で確認する。


 気づいたら東城さんの怒気は落ち着いていたので、そっと立ち上がる。


 そんな俺をジト目で見ながら、


「……まあ、飯田さん本人がそれで喜んでいるなら、わたくしが言うことはありませんの」

 と言い残して東城さんは自分の席に戻っていった。


 な、何なんだ……?






「んやー、よくわからんが災難だったっぽいな」

 自分の席に着くと、藤森がしれっと話しかけてきた。


「いつから見てたんだ?」

「神尾が委員長に捕獲されたあたりから」


「最初からかよ」


「んで? どうしてああなったんだ? ちなみに俺の予想だと、神尾が女心をわかってないことを委員長に怒られたと見た」


「どうして……って言われても、なぁ……?」


 わからないものはわからない。


 俺がそう言うと、藤森は頬をポリポリとかきながら呟いていた。


「…………あながち、ハズレでもないのかもにゃー……」



「まったく、ゆっぴーにも困ったものだ」


「俺から見ると、神尾が困ったものなんだけどな」



 と、藤森と他愛もない話をしていると突然、


「……瞬君! 藤森君! それズルい!」


「うおっ!」「なんだぁ!?」


 飯田が駆け寄ってきた。


「なんなんだよ……」

「そのゆっぴーってやつ! ゆりかちゃんだけズルい!」


「「はい?」」


「だからー、ゆりかちゃんだけあだ名で呼ぶのズルいよー! 私もあだ名ほしい!」


 何だそりゃ。

 あだ名ほしいって言われても……。


「そのあだ名付けたのは俺じゃなくてこっち。頼むならこっちに」


 俺は藤森を指差す。

 ゆっぴーと言うあだ名も、藤森が言い出し、東城さんの隠れファンに広めていったものだ。


「んん……飯田さん、そんな変なとこで張りあわなくても……。神尾だって通常時は苗字にさん付けで呼ぶし。……てか実際、神尾がクラスの女子で呼び捨てにしてるのは飯田さんぐらいなんだがなぁ」


「それでも! 何かたまに瞬君とゆりかちゃん、ものすごい息ピッタリだし……」


 ……ボケとツッコミで……?

「……それは、ボケとツッコミと言う意味かな……?」


 藤森も同じように聞こえたらしい。


 訳のわからない展開になってきたので、とりあえず口を挟む事にする。


「飯田。何か勘違いしているようだが、俺が東城さんをあだ名で呼ぶのは、理由がある」

「……理由……?」


 俺は少し間を空け、力強く、かつここにいるメンバーにしか聞こえないように宣言する。



「ゆっぴーと呼んだほうが、面白いツッコミを返してきて、からかい甲斐があるからだ」




「不愉快ですのっ!!」


 ………………ビックリした。

 少し離れた場所で、突然東城さんが声を上げていた。


 当然、この距離で今の声が聞こえたわけでは無いだろうが……。



「ど、どうしたの? ゆりちゃん……あたし、何かしたかな……?」

「あ、ごめんなさい(わたり)さん。違いますの、どこからともなく不快な思考を感じ取りまして……」


「瞳でいいのに。……え、てかゆりちゃんはエスパーか何か?」



 ……………………。


「……と、こんな感じに遠隔でツッコミを入れてくれるくらいには、からかうのが面白い」

「いやー……今のはさすがに凄すぎるだろぉ……」

「瞳ちゃんビックリしてたね……」


 クラスメートの(わたり)(ひとみ)さんには同情する。



「とにかく、あだ名があっても、あれくらい面白い反応見せてくれなきゃ、恐らく呼ばないぞ?」

「うぅ……あそこまでは無理だよぉ……」

 ……それは俺も同感だ。


「まあまあ、考えといて、しっくり来る奴あったら、神尾に教えとくさね」

「うん……! ありがとう藤森君……!」


 友情を確かめ合う二人に、ため息をつきながら、軽く水をさす。


「そんな事してる暇があるなら、勉強をしたらいかがかな? お二人さん?」


 俺の言葉に飯田は、

「あぁ! そ、そうだね! ありがとう瞬君! 頑張るね!!」

 と言って、自分の机に戻っていく。


 そして藤森は、

「ぐはっ!!」

 と言って、机に突っ伏し、動かなくなった。


 こいつはもう……駄目だ。

 ちゃっかり新キャラ……まあ、サブキャラですが。人気が出ない限り。

 三章の修学旅行編で、もう一人新キャラを出す予定です。……次出るのは男子ー。


 感想お待ちしております!!

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