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ボードゲームは迂闊に出来ない件

――ファイトッ! 


「今度は本気だよ」

「よーし。なら勝っちゃいますよ」


――ドガッバキッ!


 押し入れのダンボールの奥にあった懐かしのゲーム『路上ファイトⅡ』でリアと遊んでいた。

 『路上ファイトⅡ』は総勢8人の主要キャラと4人の隠しキャラがいるいわゆる格闘ゲームだ。


「くっ?」

「えいっえいっ!」


 このゲームをかなりやりこんでいる僕ははじめのころはリアに連戦連勝だったのだが、コツを覚えられてから買ったり負けたりするようになってしまった。

 飲み込みは相当早い。


――ムーンサルトッ


 そこで僕は最強とも言われたガリクソンの『待ちガリ』戦法を使うことにした。

 しゃがみ防御しつつ、スラッシュブームという飛び道具、ムーンサルトキックという対空の必殺技をいつでも出せるようにためる。

 離れたらスラッシュブームで体力を削り、飛び込まれたらムーンサルトキックと撃ち落とすという戦法だ。

 よし! くっ! ぐっ! よし! やった!


――アァン、アァン、アァン……


 僕のガリクソンの勝利だ。

 リアの操作する中国娘シュウカは、なぜか悲鳴をエコーさせながら吹っ飛んだ。

 

「負けちゃった~。やっぱりトール様が本気を出すと強いですね」

「ま、まあね」


 リアは知らないだろうが、『待ちガリ』は禁止されたゲーセンもでたほど完成された戦法なのだ。

 それでもなんとか勝てたといった感じだった。

 リアはパソコンは使えないけどドローンの操縦が素晴らしかったようにゲームも上手のかもしれない。


「よーし、今度はこの黒っぽいダルーって人で」

「ダルー!? そろそろ他のゲームしようよ」

「そうしますか?」

「うん」


 危ない。完成された『待ちガリ』も手足が伸びるインド人のダルーには崩されてしまうことがあるのだ。


「ゲームって本当に面白いですね」

「だろ~」

「他にはどんなのがあるんですか?」


 僕はガチャガチャとゲームカセットを物色する。

 うーむ。ゴリオカートにナシ鉄か。

 どちらも名作ではあるが、車と鉄道という文化に馴染みの薄い異世界人には面白くないかもしれない。

 虎クエ、ラスファンは一人用だし、時間がかかる。


「お、ナローポンがあるぞ」


 懐かしいなあ。これなら異世界人にもピッタリかもしれない。


「どんなゲームですか?」

「リアがいる世界風のスゴロクゲームみたいな感じかな」

「どんなところが私の世界風なんですか?」

「モンスターがいたり、魔法を使えたり。それに自分のコマを騎士、魔法使い、盗賊、僧侶……無職みたいな職業でキャラメイキングできるんだ」

「なんだか私達みたいですね」


 確かにそうだな。

 リアは騎士、ディートは魔法使い、ミリィは盗賊、立石さんは僧侶、無職は……皆まで言うまい。


「どうやって勝ち負けを決めるんですか?」

「自分のコマを勝利して一定期間で一番資産がある人が勝ちみたいな」

「モンスターを倒してお金を貯めれば良いんですね」

「そそ。ただ妨害とかも出来てさ……」


 はっそうだ。

 ナローポンは妨害もできることを忘れていた。

 というかむしろナローポンは勝つためなら他プレイヤーの命や資産を奪ったり、妨害するのを推奨しているのだ。

 そのため非常にエキサイティングしやすく、友情破壊ゲームとも言われるほどなのだ。

 僕はゲーム機差し込みかけたナローポンを抜き出す。


「え? どうしたんですか?」

「他のゲームをやろうよ」

「えーやりたいなあ。私、騎士になりたいです」

「まあ二人でやっても楽しいゲームじゃないんだ。大人数じゃないとね」


 僕は席を立った。


「あれ? トール様、どこか行くんですか?」

「夕飯の食材が無くなったから、ちょっとトンスキホーテ行ってくる」

「私も行きますか?」

「いいよいいよ。ゲームしてて」


◆◆◆


「ふ~。まあ実際ナローポンは女の子と二人でするようなゲームじゃないよね」


 買い物袋をプラプラさせながら夜道を歩く。


「まあ、さっきは大人数って言っちゃったけど……」


 もしリアとディートとミリィがナローポンをやったら大変なことになりかねない。

 ナローポンはこっそり隠しておくか。


「それにしてもディートもミリィも帰ってこないなあ」


 二人は異世界に行っている。

 そんなことを考えながらマンションに着いた。

 ドアを開ける。


「ただいま。ん?」


 普通だったら聞こえる程度の声でただいまを言ったが、誰も気が付かないようだ。

 それどころかガヤガヤとした話し声が奥から聞こえる。

 玄関を見るとディートのものらしきブーツや競馬のお金でミリィが買ったものらしきスニーカーがある。


「皆、戻って来たのか!?」


 僕は嬉しくなって急いで靴を脱ぎ捨てる。

 やっぱりだ。リビングに入るとディートとミリィの後ろ姿があった。


「ただいま……げっ!?」


 帰ってきた僕に気が付かず、皆が見ていたものはテレビ画面だった。

 しかも……。


「もう! 魔法使いって攻撃力も防御力も低すぎ! スライムすら苦戦するじゃない! あら? トオル帰ってたの?」

「ああ。うん」


 ディートが僕に気がついたようで微笑む。

 テレビ画面は『ディート』という魔法使いキャラがモンスターを倒したところだった。 


「他のゲームを……」

「あ、やったー! レベルが上ったわ」


 止められそうにない。


「へー他のステータスは1とか2しか上がらなかったけど魔力は3も上がったわ。魔法使いだからかな」


 魔法使いは妨害特化キャラだ。大きな魔力を使って遠距離から魔法攻撃ができる。

 順調に進んでいるときに魔法で倒されたときの怒りははかりしれない。


「おっす。トオル。にゃはははごめん。三人ではじめちゃった。あ、俺の順番?」


 ミリィが楽しそうに盗賊キャラを動かす。


「あ、モンスターだ! 私には盗むってコマンドがあるぞ」


 『ミリィ』という盗賊キャラがリスバットから薬草を盗んでいた。

 盗賊はモンスターや他プレイヤーからアイテムを盗むことも出来る。

 苦労して手に入れたレアアイテムが盗まれたときの怒りははかりしれない。


「次は私の番ですね! えい! やった6だ!」


 『アリア』という騎士キャラが動く。

 攻撃力・防御力ともの高い。それはモンスターのみならず他プレイヤーにも発揮される。


「あ、ディートさんのマスに重なることも出来ますね」


 やばいっ!


「でもこっちの村を支配してる大きなモンスターのところに行ってみよう」


 よかった他のマスに行ってくれたようだ。


「あ~ん。決着が付かなかった。次のターンに持ち越しなるのかぁ」


 リアは村を支配しているモンスターを1ターンで倒すことができなかったようだ。

 ディートの番に戻る。


「あら。なら私が魔法で支援してあげようか?」


 ディートはリアル魔法使いなので肉弾系を支援することが癖になっているようだ。


「お願いします!」


 一難去ってまた一難!

 同じマスにいるモンスターに魔法を使おうとしたらリアにも魔法攻撃が出来ることに気が付かれてしまう。


「ちょっちょっとストップ!」


 三人が振り返る。


「どうしたのトオル?」


 僕はディートに言った。


「折角、皆が集まったんだからゲームで冒険してないで日本の街にでも繰り出さないか? 飯でも食いに行こうよ」

「あ~いいわね」


 リアとミリィも同意する。よかった。

 なにもわざわざ喧嘩になりかねないゲームなどする必要はない。


「ゲームは帰ってきたらしよっか。トオルも入れてねっ!」


 ディートがニッコリと笑って腕を取る。

 数時間後、結局は僕も入ってナローポンをやったのは言うまでもない。

電子書籍の配本開始しました。

2巻は6月10日に発売されます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 電車に乗ってない〇鉄ですね(~∀~;) ああ言う妨害ありのゲームで友情が壊れるのは性格の悪い人と一緒にプレイするからなんですよ(遠い目)
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