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94話 お休み

 3日間にわたる発表会も無事終わり今は静かだ。1つの山場が終わったわけだし、テスト明けの休暇みたいなもんだ。セッティングに時間をかけていた研究所なんかは後片付けにも時間を取られているみたいだが、ウチは終わったらさっさと撤収した。


 モリオンは製作から1か月近く経つので各部の点検を行った。……プロキオンちゃんが。コンピューターによるシミュレートは行ったが実際の稼働試験はほとんどやっていないので想定外の不具合が出ているかも知れないし。


 クリスティーヌさん用の魔導人形に関しては納期は1ヶ月後であるが、余裕があるのでそこまで焦る必要は無い。1日8時間残業なしで余裕で間に合う。外見仕様などが変化するほか性能も落とす予定だが、最終的に作業をするのは工場の機械群であり、製作指揮はレイリー博士だ。

 新金属については性能等については非常に受けが良かったのだが、いかんせんウチは弱小研究所である為信用の問題から(信用がない以前に最近出来た研究所なので判断すらできない)、ギルドの特許を元にそれぞれが独自にお抱えの研究所なり工房なりに依頼するらしい。それでも特許料だけでも膨大な額が入ってくる予定だ。



 ◇◇◇



 そうして1か月。


 この間に何か特別なイベントなどはなかった。東雲君たちの返事を待ちつつギルド側の仕事をこなす日々だ。といってもすでに俺は不労所得による生活がある程度成り立つ基盤ができていた。

 そのため冒険者ギルドでとある申請をした。ギルドのランクの変更である。ギルドのランクは実績と実力によってランク分けがされているが、実は『Xランク』という実力のみのランクがある。それをつい最近知った。ギルドの仕事を副業や空き時間に行っている人用のランクだ。ステータスのみで○ランク相当と判断される。メリットは更新期間がなく、長期間依頼を受けなくても問題ない点。デメリットとしてはギルドのサービスなどに1部制限がかかる他、同ランク帯より一つ低くみられる上、Bランク以上の依頼も受けられない(ギルド長など相応の上位者が許可した場合は例外)。

 俺たちにとって更新期間が無いという点は非常に魅力的だったので、シアンさん達共々すぐにそちらに移行させてもらった。

 俺はそもそも高レベルの依頼は受けられないし、シアンさん達は実力的には受けることができるがその必要性が低い。そのため、全く問題なかった。


 そして俺はこの1か月ちょくちょく薬草などの素材採集をメインに依頼を受けていた。採集程度なら俺一人でも問題ないのだが、必ずモリオンとネルソン(飼い犬)、JC14ちゃん1~2名(どの子が来るかは日によって違う)がついてきた。JC14ちゃん達はおそらく護衛だろう。


ネルソン「ワン! ワン!」

俺「おお、薬草が。すごいぞ、ネルソン」

A2ちゃん「こんな野草を少量だけ採っても大してお金にならないんだよねー」

モリオン「おとーさま、これは何ですか?」

俺「それは……木苺か?」

A2ちゃん「そうだね」


 あと何気にモリオンの性格が落ち着いてきたように感じる。以前は父親大好きっ子だったのだが、過度のスキンシップは控えるようになった。別に嫌われているわけではなのだが、少し寂しいです。もしかしてこのままいけば反抗期などもあるのだろうか。


 研究開発ギルドからも連絡がきた。といっても研究所の立ち上げに際して大型兵器の開発として登録していたが、現状の実績が金属素材と魔導人形なので変更する必要はないのか?という連絡だ。これは別に変更してもしなくても問題ない。(研究開発においては派生技術などで計画と実績がかみ合わないなどもあるし、そもそも失敗して『実績が無い』ということもざらにあるためそこまで厳しくない。)ただ、ギルド側としては仲介をする際に食い違いが出るので適切な支援ができないという事だ。(この辺りは資金問題に直結するので研究者側が自主的に動くことが多い。)

 ……まあ、これは変更する必要はないかな。そもそもダミーだし。とりあえずこのままにしておいた。


 クリスティーヌさん用のオートマタも完成した。金髪碧眼で中背、20歳程度の外見をしている。美人ではあるが髪の色や体格など、この世界で珍しくない外見だ。

 使用人として運用するという要求であったので人間に近づけるため肌を軟質の素材で覆っている。モリオンとの違いは分割線などが限りなく目立たなくなったほか肌色素材の面積を増やしたことだ。これは戦闘などに使用せず各部の強度や出力が必要なくなったため出来た。結果、(長袖長ズボンなどの)服を着たらほぼ人間と変わらない(とはいえ近くで見れば分かる程度には違うのだが)。肌色面積を増やし分割線を隠した結果メンテナンス性が悪くなった他、肌の軟質素材は傷が付きやすいのだが、普段使いであればほぼ問題にならないだろう。

 ソフトウェアはモリオンたちと同じだが、モリオンたちより登録してある知識量は少ない。


 レイリー博士が窓口になっているため彼女が引き渡しにゴッドハート伯爵の屋敷に向かった。結果は上々であったらしい。ベルクさんは仕事が忙しく同席していなかったそうだが、その日のうちにクリスティーヌさんが自慢しまくるだろうから、近々ベルクさんからも注文が入るだろう。

 ちなみにレイリー博士の家(兼研究室)だが、時々ドットカール博士を見かけるようになった。多分共同研究のためだろう。ただ、市販の魔導人形製作はレイリー博士にまかせっきりになっているため現状どういった共同研究がなされているのかよく知らない。一応、工場内はシアンさん達による監視の目があるので変なことにはなっていないと思う。



 そして、最初は気づかなかったのだが知らないうちに基地の人員が増えていた。


 ……ん?

 地下の施設で奇妙な人と出会った。シアンさん達に話があってやってきたのだがその際に遭遇した。


 見覚えがない……わけではない。以前にギルドのクエストを受けた時に見たことがある。


「A1ちゃん?」


 その姿は以前に見たA1ちゃんの姿……アイマスクを外した姿によく似ていた。あの時の記憶を手繰り寄せるがおそらく間違いないだろう。

 

 JC14ちゃんたちはA1、A2共しばらくここで過ごすうちに個体差というものが出てきた。

 一番分かりやすいのは髪型だろう。ツインテールやらポニーテールやらお団子やらいろいろな髪形の子がいる。外見は変わらないが髪型だけで結構印象が違う。あとは服装は統一されているので変わらないが、そこに付けているアクセサリー類が微妙に違う。そして武器を持っている場合は武器のアクセサリー類にも違いが出てきた。


 最初はそういった変化かとも思った。

 だが、確か彼女のアイマスクは視覚情報の制御が目的で軽々と外したりできないはずだと聞いていた。

 目の前のA1ちゃんに向けた視線に疑念のこもった視線を向けた。


 すると目の前のA1ちゃんは俺の目を見てあからさまに「やばっ」ていう顔をしていた。そうしてすぐにあきらめたように息を吐いた。


「はぁ、初日で見つかるとは……」

「……は?」


 俺はついつい間抜けな声を出した。だって、A1ちゃんは喋らないし、俺の中でもそういったイメージが固まっていた。だから目の前のA1ちゃん?が喋ったことに混乱した。


「JC14A4です。会ったら連れてくるように言われているわ。ついてきて。」


 そう言って、俺の手を取り歩き出すA1ちゃん……ではなくJC14A4?

 ……え?


 そうしてずんずん進んでいく自称JC14A4ちゃん。そして引っ張られる俺。

 しばらく移動して入った部屋にはアークさんがいた。


「会ったので、連れてきました。」

「あら~早いわね~」


 アークさんの態度はいつも通りだ。ということは特に心配することもないのだろう……か?


「それで、えっと……」


 この子は何なのかと聞こうとしたのだが言い終わる前に説明が始まった。


「じゃあ、説明するわね~。その子はJC14A4。まあJC14強装歩兵(オートドール)ね。――」


 JC14A4型強装歩兵(オートドール)。人手不足の解消のためこの基地で生産されたA1のコピー品だそうだ。各種能力はA1ちゃんと同じ。正規品ではないのでA4として区別しているだけだという。

 尚、アイマスクが無いのはA2ちゃんの技術を一部取り入れた結果。ただA2ちゃんを完コピする設備はこの基地にはなかったそうだ。

 そして、必要な希少材料の問題から少数しか生産されず、現在生産されたのは64機。A1ちゃんより少なく、A2ちゃんよりやや多いといった程度。そのため、人手不足の件はいまだ解消されていない。

 尚、A4ちゃんの主な任務は他大陸の調査のために不足した人手を埋めることである。ちなみに大陸の調査はA1ちゃんが送り込まれているという。


「マジで何やってんの!」


 それが感想である。ただでさえ300人近い人がいるのに(実際は他大陸に行っていて300人も居ない)これ以上人を増やしてどうするのか。しかも総司令、俺だし。俺は別に優秀な人間ではない。人を使う立場になどなったことがないのに。

 それに他大陸とか。いまだ俺たちはこの大陸の事すら理解しきれていないのに。


 その日、俺はA4ちゃん64人分のジャケットに番号を書くことになった。滅茶苦茶頑張った。

 ちなみにA4ちゃん用のジャケットはA1ちゃんとは色やデザインが少し違う。ぱっと見、分かりやすくするためだという。



 余談ではあるが、A1、A2ちゃんの次がA4ちゃんとなっているのは、A3型は古代魔法文明に存在していたからである。

ロボットがロボットを生産して増えていく。そしてそれを人間側が把握していないとかホラーですよね。


JC14ちゃん、A1ちゃん、A1001ちゃんなど呼び方がその場でバラバラですが、それは主人公がどの程度相手を認識しているか等により変えています。

JC14ちゃん:強装歩兵オートドール全体やA1ちゃんとA2ちゃんをまとめて指す場合等。

A1ちゃん:遠目に見ている、すれ違う程度の距離感、複数を相手にする場合、重要でない回想など。

JC1001ちゃん:個々に絡んだり、話したりする場合。


 ジャケット、ジャンパー、ブレザー。この辺の細かい分け方が分かりません。本文中でジャケットとしているのはイメージとして近いかなと思ったからです。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ロボットがロボットを生産して増えていく。 作れ、増えよ、地に満ちよ。
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