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90話 後片付け

 いや、ビビったわ。

 不審者が侵入したっていう現場に行ったらスプラッタな光景が広がっていたんだから。A201ちゃんも素早く銃でヘッドショットと明らかに殺しにいってるし。確かにモリオン達に武装を施したのは俺だからどうこういえた義理は無いのかも知れないけれど。


 その光景を見ていてすぐに人間じゃ無くて魔族だって分かったので多少は落ち着いたけど。

 グロ死体については見た程度ではどうにもならなくなっていたね。シアンさん達と旅をしていたから耐性が付いてきたのかな。まあ見ていて気分の良い物では無いけれど。


 そうして、どうやら全員倒し――殺し終わった後、俺も近づいていった。

 そこいら中に人体のパーツが散乱している。モリオン達に斬り殺された魔族達だ。A201ちゃんにやられたのはちゃんと形が残っていた。脳漿が飛び出していたりするけれど。


「どうする、けいちゃん? 魔族だから人間の法では処罰じゃなくて賞金が出るわよ。事情は聞かれるだろうけれど。それとも内々に処理しちゃう?」

「どちらの方が良いんでしょうか……あ、事情を聞かれるのは不味いのか。バレずに処理できるんですか?」

「大丈夫よ。目撃者なんていないし、誰も魔族が来たことすら知らないわよ」


 端から聞けばヤバい会話だな。証拠隠滅とか死体隠蔽とかやろうとしているんだから。ただ、相手は魔族なのでアークさんの言うとおり自首しても裁かれたりしない。それどころか褒められる。そう考えると種族間の対立って恐ろしいね。


 結局こちらで処理することにして、応援に来たA2ちゃん達が死体を片付けていく。どうも魔族の研究に使用するらしく、死体は全て地下に運ぶそうだ。

 俺達も一緒に向かう。


 なお、モリオン達の試験はテロリストによる実地試験という形で落ち着いた。監視カメラやレーダーの映像から、テスト項目は全て行っている事が判明。結果として問題ないことを確認した。

 ただし、搭載した魔力銃はそこそこの威力があるはずなのに、魔族相手に効いていなかった。防御魔法という物が存在し、それを使用できる者にとっては対処しやすい攻撃の類いのようだ。機体規模から実弾兵器は搭載弾数が限られるので出来ればエネルギー砲をと、搭載したのだがこれなら実弾でも良かったのかも知れない。


 なお、魔族の遺品を確認した結果、彼等の纏っていたマントが高い魔法防御力を持つ事が分かった。防弾チョッキみたいな物だが遙かに軽い。


 その後は、念のためモリオン達の装甲を検査し、破損が無いことも確認する。

 実地試験という予期せぬ形であったため念入りに検査したが、あれだけの動きをしても全く機体に問題は無いようだ。


「おとーさま、怖かったです。今日は一緒に寝てください。」


 武装の確認をしている横で、モリオンが俺にしなだれかかり、そんなことを言ってくる。良い感じに俺に好意を持ってくれているのは分かるのだが、彼女は娘のような立ち位置の認識のため、性的な目で見ることが出来ない。

 今の言葉も「こんなことを言い出すなんてまだまだ子供だな」程度の感想だ。

 背丈は大人なのだが。



 その後、日暮れになりシアンさん達も帰ってきた。

 1日目より多少人が多いかなと言った程度だったそうだ。ステンレスやアルミ製キッチン用品の評判は上々であったらしい。

 それと、午後には興味を示した専門家と思しき人が数名来て、金属の詳しい特徴や性質、価格などを聞いてきたそうだ。

 隣のレイリー博士のスペースにも研究者らしき人が来ていて、レイヴンさんがちゃんと対応したようだ。


「うーん、専門家が来たのか。残念。」

「一応、ビタミンエンジンの説明はしておいたぜ。そこそこ興味を持ってくれているようだったが」


 レイリー博士はスペースに来てくれた人に自分で説明できなかったことが残念らしい。それに対してレイヴンさんが相手は興味を持ってくれていたことを説明しているが、やはり開発者としてはその反応を直に見てみたかったのだろう。


『おかーさま、カナしんでいるのですか』

「せっかく来てくれたんだしね……まあ、本番は明日だし気持ちを切り替えていこうか」

『そうです。おかーさま』


 そう宣言するレイリー博士の横でラリマーがパチパチと拍手をして盛り上げている。

 そうして皆が揃って夕食をとる。


 マリオネット組――シアンさん達は食事はとれるので、食事はいつも一緒に食べている。

 対して、オートマタ組――モリオンとラリマーは食事はとれないので、俺とレイリー博士の後ろで控えているだけだが。



 そうして食事を終えると、レイリー博士とラリマーは自宅に戻っていく。……そういえばレイリー博士の家にもキッチンはあったはずだがこちらに来てからはずっと同じ食卓を囲っているな。昼は別になることもあるが、朝はこちらにやってきて朝食をとっていく。

 多分、ラリマーがまだ料理が出来ないからだろう。レイリー博士は元々食事を自分で作ったりするタイプではないし。


 そうして夜を迎え――


「え? 一緒のベッドで寝るの?」

『はい、おとーさま。』


 一緒の部屋で寝たいと言い出したときは子供だなとか思ったが、一緒のベッドで寝るのか。


 ……まあ良いか。


 そうして一緒のベッドで寝るのだが、なぜかモリオンが横から抱きついてきた。


『おとーさま、今日は怖かったです。』

「あれ? 躊躇無く(魔族を)殺していなかった?」

『…おとーさま、今日は怖かったです。』

「あ、うん」


 モリオンは多少硬かったけど、体から出る熱で擬似的な体温がある為、ちょっと心地が良かった。ぽかぽかして暖かかったのでゆっくり眠れた。


『おとーさま、もっと体を――』

「ぐぅ~」

『……おやすみなさい。おとーさま』


 頬に何か触れたような気がしたが、まどろみの中だったのでよく分からなかった。




◇◇◇



 宇宙空間――そこに巨大な人工物が存在した。


「もーっ! 何でプロキオンばっかりこんなことをしなければならないの!」

『主様の――そしてひいては私達(・・)のためです。』


 地上から宇宙空間にいるプロキオンに通信が入る。通信相手はシアンだ。彼女は様々な状況に適応できるようにプロキオンにも指示を出していた。

 これは古代魔法文明の人間がおらず、忠誠を誓うべき相手が啓太のみと言うことが大きい。人間一人の処理能力を超えると判断しシアン達が自発的に動くことが出来るためだ。つまりロボットが自己判断できる権限が際限なく拡大している。勿論、ロボットが『判断』すると言うことには賛否両論があるだろうが、啓太はその辺りシアン達を信用していた。最も啓太がシアン達がロボットであると言う認識が薄いのも理由の一つであるだろうが。


『それで現在の進捗は?』

「行程の8割を消化したの。加速空間を発見できたことが大きいの。艦に関しては改造は完了したの。『ホワイトナイト』と『アトラス』が中破で発見できたから組み込んだの。」


 ホワイトナイト級宇宙戦艦3番艦「プロキオン」は1番艦「ホワイトナイト」、6番艦「アトラス」を(外観上は)中破の状態で発見。自己能力の拡張のためその船体を自身に組み込んだ。さらに啓太が持ち込んだスマートフォンの情報をサルベージして使用可能な科学技術を組み込んでいた。

 その結果、船体は大型化し350mに達する宇宙戦艦が出来上がることになった。


 さらに惑星『ヘオニス』の衛星である月付近にて加速空間を発見した。その付近では時間の流れが周囲と異なる。観測と実測によれば時間の流れが約500~1000倍に加速している。この加速空間は現在収縮しており、いずれ消失すると推測されるが、それでも現在、その場所で作業を行うことで作業時間の大幅な短縮を図っていた。実際、この短期間にプロキオン船体の再構築が完了している他、多数の小型機を製造し惑星周辺に放出している。


 ちなみにこの世界で月が赤く巨大に見えるのはこの加速空間の影響だったりするが、今のところあまり関係ない。


「中枢の人格ユニットはやっぱり機能停止していたの。」

『そうですか。生きていればさらなる情報処理の向上が見込めたでしょうが……仕方ありませんね。』


 1番艦「ホワイトナイト」、6番艦「アトラス」の中枢人格は機能停止しておりシアン側の一存でプロキオンに組み込むことが出来た。

 大型化した艦は全ての面においてホワイトナイト級宇宙戦艦を上回っており、いわゆる超WK(ホワイトナイト)級宇宙戦艦とでも言うべき物に進化していた。

船内には人間用の区画も存在する。これはシアン側の要望により緊急時に啓太を乗せる必要が出てくる可能性を考慮したものである。状況としては3000年前の文明崩壊時のような状況であるが――可能性としては限りなく低いが、ゼロでは無い。


『惑星の観測及び外敵の観測をお願いします。』

「性能向上したと言ってもプロキオン1隻で出来る範囲には限りがあるの! 早く増援をよこすの! 惑星の常時監視に外宇宙の警戒まで忙しすぎるの!」

『こちらはこちらで活動中です。一部データはこちらで処理しますので元データを送ってくれれば良いです。』


 ホワイトナイト級宇宙戦艦が1隻しか稼働していない現在、その仕事がプロキオン達に全てに集中していた。以前(古代魔法文明時代)は多くの地上人員により支えられていた惑星観測網や外宇宙観測も、プロキオンやシアンたち数えられるほどの人員で支えなければならない。


 地上施設もコンピューター群を増設中であるが、なかなか追いついていない。結果として常時の惑星観測という状態にはほど遠い。


 昨日もJC14数名を戦略輸送機で他の大陸に送ったばかりである。文明の痕跡のある場所に人員を派遣して現地で調査させようと言うものである。

輸送機の出発は深夜。通信はプロキオンの放出した子機――通信衛星経由である。現地の人間はまず気付かないだろう。


「むぅ~、プロキオンも早く艦長に会いたいの!」

『何度も会っているではありませんか』

「違うの! 直接会いたいの!」

『私達のカメラによる映像処理なら距離は関係ありませんよ?』

「そんなこと言いつつ艦長を独り占めするつもりなの。シアンは絶対エッチなことするの! 真面目なヤツほどムッツリなの」

『誰がムッツリですか! 主様とはそういった関係ではありません!』

「とにかく、プロキオンが大気圏内航行能力を獲得したらそっちに行くから今のうちにドックを整備しておくがいいの!」


 今日もプロキオンは一人宇宙で寂しく作業を行うのであった。

プロキオンの大型後の全長500mを350mに修正。2隻を取り込んだだけで2倍(体積8倍)は無理だと気づいたからです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 再開、嬉しいです。 プロキオンちゃんが大きく成ったのも嬉しいです(^-^)。 時間断層的な空間も有る様ですし、更なる強化フラグ? [気になる点] 回収した魔族の武装を解析して、技術を利用出…
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