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88話 午後のひととき

「戻りました。明日に備えて工場に行きますね」

「あら、お帰りなさい。早いわねー、まだお昼前よ?」


 出迎えてくれたアークさんへの挨拶もそこそこに研究所兼工場に行く。


 そうして、用意していた装甲ユニットを全てモリオンに装着してみる。……うーん、盛りすぎた。各部を覆うフライトドレスに加え、腰から生えた安定翼にドロップタンク、両肩に長砲身魔力砲に背部大型魔力コンデンサ、脚部にアンカー他、両腕には魔力ライフル2丁持ちと陸戦用装備と空戦用装備全部乗せの変なモ○ルアーマーみたいになってしまった。中身が華奢な女性型なのでアンバランスさが凄い。走るどころか歩くための関節の可動範囲すら確保できているのか怪しい状態だ。宇宙空間とかだと関係ないのかも知れないが。俺は「足なんて飾りですよ」とは言わない。足だって重要な要素だ。見よ、この太もものムッチリ感を!

 さわさわ……


『おとーさま、くすぐったいです』


 とりあえず全部乗せは止めておこう。個々の動作テストはシミュレーション上で行っているが、実機試験はやっていないし全ての装備を接続なんて勿論初めてだ。


 とりあえず陸戦装備類は下ろして、空戦装備類のみとしてみた。

 単純に空戦装備の方が事故などの場合を考えテストの必要性があるからだ。ただ、結果としてはあまり急ぐ必要は無かったことになるが。


 飛行ユニットはドレスのように纏っているのでこれを装着するだけでも多少見栄えは良くなったかな。実際のドレスとは違い硬質な軽金属製であるが。武装は両腕に装着した盾のような空力制御板(魔法による)に仕込んである魔力砲。空力制御板自体も先は高硬度金属製で刃の代わりになる。これで最低限の空戦は可能だ。もっとも相手がいないが。

 両腕、背中、スカートなどにより関節の動きは制限されるが飛行系モ○ルスーツのようなスタイリッシュさがある。後ろ姿等はどう見てもオートマタでは無くロボットですよね。

 なお、これらの装備を装着させる為にモリオンの各アクチュエータは強化済みだ。ラリマーは未強化なので同様の装備をするとどうしても速度などが落ちる。

 俺は妥協しない男なのだ。モリオンに関して、完成からもちょっとずつアップデートを重ねている。外見は変わらないし、人格AIもプロキオンちゃんがいないといじれないが、外装に関しては俺だけでも改良できる。その結果、腕と足のパワーが初期の1.2倍程度までになっている。

そう、俺は妥協しない男なのだ。まあ元々のスペック自体が高いのでそれより上げても使い道が無いのだが。

 

「ラリマーにはこれとかどうです?」


 そう言ってモニター上に表示させたのは、金属や樹脂を使用した硬質なドレスだ。戦闘能力などは有していないただの飾りともいえる。ロボっぽさを殺さずオシャレをするための素材の一種として制作したものだ。

 モリオンが装備している飛行用装備に比べれば大分おとなしめだが、まあ多少の装甲強化しか機能の無い装備だしね。

 現在はモリオン用に黒系の塗装をしているが、色の変更だけなら小一時間で出来る。


「へぇ、格好いいね」

「でしょ?」

「でも、そっちの方が良いなぁ」


 そう言って流し目? を送るレイリー博士


「あの装備ですか? 別に良いですけど……当初のラリマーの使用法からかなり離れてしまいませんか?」


 一応、テスト用装備としてスペアも用意している。シミュレーターでは完璧でも実機試験でどうなるか分からないので欠陥が見つかった場合素早く対応するためだ。

 外見はロボットを着た美少女と、完全に趣味の領域である。


 とりあえず、スペアとして用意していた機体のカラーリングを変更。


「何というか……凄く似合ってはいるんだけれど人間っぽくは無いね。なんと言えばいいのだろうか?」

「近未来っぽい仕上がりを意識しましたからね」

「『近未来』か……あまり聞かない言葉だが、確かに未来にはこういったものがありそうだね」


 装甲を纏ったラリマーを見ながらそんな感想を語り合う俺とレイリー博士。


『おとーさま、私はどうでしょう』

「うん? モリオンも似合っているぞ。SF感満載で格好いいぞ。それに美人さんだ。」

『ありがとうございます。寝室に行きましょう。』


 モリオンが俺の所に寄ってきて、自分のことを聞いてきたので感想を言ってみる。さすが俺の娘だ。自分が作ったのだが可愛いと自画自賛してみる。俺は褒めて伸ばすタイプなのだ。叱って伸ばすとかあり得ないよね。ガラスのハートがブレイクしちゃったらどうすんだよ。

 モリオンも笑みを浮かべ満足げな表情だ。


「さて、これのテストを行うわけだが、演習場とか無いよな?」


 明日の発表会に向けてこれらの実機テストを行いたいのだがどこでしようか? この研究所、敷地は無駄に広いし、どこかの開いているところでテストしようか。


「そんなときこそ、私の出番ですよー!」

「「わっ!」」


 いきなり後ろから誰かに抱きつかれ耳元でそんなことを叫ばれた。横を見るとアークさんだった。いきなり出てこないで、ビックリするだろう。あ、でも抱きつくのはオッケーです。


「演習場が必要かと思いましてやってきましたー」

「あ、うん」


 登場以外は普通だった。いつもの穏やかな表情にいつもの口調。


 施設外に出ると用意の良いことに、既に車が横付けされていた。運転席にはA2……えーと……A201ちゃんがスタンバっていた。まあ、それは良いんだけれど、モリオンとラリマーは外部装甲のせいでおそらく車内の席に座ることが出来ないと思う。


「モリオンとラリマーは後部の荷台に乗ってくださいねー」


 ハン○ィーっぽい高機動車だが後部をピックアップトラックのように露天にも出来るため今日はその仕様でやってきたようだ。

 そうして高機動車に乗り込み出発する。運転はいつも通りA201ちゃんが行い、助手席にアークさんが、俺とレイリー博士は2列シートの後席に、さらにその後ろの荷台にモリオンとラリマーが乗っていざ発進。ちなみにモリオンはやはりと言うか装備の関係で『椅子に座る』と言う事が出来なかった。背もたれの無い椅子なら座るだけなら出来るかも知れないが、格好良いので些細な問題だ。

 ところでどこに行くんだろう? 演習場なんてあったっけ? その問いに助手席に座っていたアークさんが答えてくれる。


「北側滑走路をはさんで射爆場があるのでそこに向かうわねー」

「へぇ、そんなところも作っていたんだ。……え、滑走路!? そんなものあったの? 何のために?」

「少し前に出来たのよ。今後調査が進めば大陸中、さらに惑星(ヘオニス)中に人員を派遣するかも知れないからってシアンちゃんが。まだ正式に決まってないけどねー。」


 ……あれ? 俺の知らないところでどんどんと話が大きくなっていっていないか? この世界に骨を埋める覚悟をしているとはいえ、どんどん退路が断たれているような気がするのだけれど気のせいだろうか……。


「滑走路ってなんだい?」


 そんなことをアークさんと話していると横からレイリー博士が質問してくる。この世界には航空機が無いので『滑走路』というものも無いのか?


「空を飛ぶ乗り物の離発着場ですね。……ここって空を飛ぶ乗り物ってあるんですか?」

「ああ、少数だけれどワイバーンやグリフォンなんかを軍で使っている国もあるね。それの離発着場かい? アレ等は非常に扱いが難しくてしかも軍用しかいないという話だけれど。ああ、そういえば、乗り物というと確か『気球』だったかな。そういったものを研究しているところがあって、実用化までもう一歩だそうだよ。もしかしてそれかい?」

「まあ、そんなもんです。」


 上手く説明する自信も無かったので適当に誤魔化しておく。しかし、演習場に滑走路まで出来ているとか、この研究所はどこへ向かっているのだろうか。

 あとこの世界、気球も実用化前だったんだな。でも地味に飛行系のモンスターとかいるから空軍っぽいものはあるらしい。


 ところで何気にかなりの距離を移動していないかい? 家の敷地で車移動とかどういう御屋敷だよ。景色も何気に建物がちらほら見られるし。地下施設と合わせて300名程度ではこれだけ建物を建てても中はスカスカになっているんだろうなと思う。


 そうして高機動車を走らせていると呼び出し音のようなものが鳴った。何かと思ったらアークさんが慣れた手つきで車に取り付けられていた無線機のようなものを手に取り何かを話し始めた。


『――西C-10に予定の無いお客さんでっす。複数名……訂正……うわぁ、数20。周囲を伺いつつ建物へと向かっています。一番近い機体は対応してください。』

『――A233です。団体さんね。お祭りの最中に誰です? A1は今全機地下。時間がかかる。』

「こちらアークトゥルスよ。現在近くを車で移動中なのだけれど、対応いる? ケイちゃんも乗っているわよー」

『可能であれば。A221とA222が向かっているが10分程度かかる。他、2番エレベーターより歩兵戦闘車(IFV)が準備中。…………団体さんは何かしら訓練を受けている()が見られる。注意されたし』

「データを送ってくれるかしら」

『了解』


 話している内容から不法侵入者がいるらしい。その後、通信を終えたのか無線機を戻したアークさんが後ろを覗いてきた。


「ねぇ、けいちゃん、じ・っ・ち・し・け・ん♡ やってみたくない?」

「やってみたいです(即答)」


 色っぽい感じで言っているけれど内容は全然違う。

 モリオン達の武装のテストのことですよね。不審者に対してのことだが問題ないだろう。空き巣程度に後れをとるような作りをしていない。


『では、いくのん!』

『『いえすマム』』


 いきなり無線機からプロキオンちゃんの声が聞こえてきたと思ったら、モリオン達が先行していった。

 モリオン達は高機動車の荷台で向かい合いエンジンを点火。そのままバックロールで荷台から離脱。地面すれすれまで落ちる時間で体をひねり車体と平行になり、そのままアフターバーナー(A/B)に点火。いったんは車体後方に下がったが、そのまま加速してすぐに高機動車を追い越していった。

 あれだな、戦闘機がミサイルを発射する時みたいな感じ。カッコいいな! 男の子のロマン心をくすぐるのが上手い。


 あ、そういえば過剰防衛にならないように気を付けるように言うのを忘れていた。コソ泥程度でフルボッコにしちゃうのはアレだし。


「アークさん、モリオン達に過剰防衛にならないように伝えて貰えますか? さすがにコソ泥程度で殺しちゃ不味いでしょう」

「大丈夫よー、ただの不審者じゃ無いから、フフフ」


 どういうことだろう?

滅茶苦茶あいてしまいましたね。ギリギリ1年たっていないze

とりあえず切りのいいところまで少し投稿します。

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[一言] 更新、有難う御座います。
[一言] >滅茶苦茶あいてしまいましたね。ギリギリ1年たっていないze 更新感謝
[一言] 更新しててうれしい。
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