6話 実地訓練
今俺たちは、それぞれに合わせた装備で一か所に集合している。装備は教会からの提供だが、結構いいものらしい。特に『勇者』の東雲君と『剣聖』の西条さんには聖剣が与えられている。聖剣というのは古代魔法文明時代に作られたものらしく今では数えるほどしかないもので今では国宝などになっている。むろんその攻撃力は『宝』に見合ったものがある。
『聖女』である泉川さんには魔力アップのタリスマンや防御力の高い衣服などが与えられている。
俺も入れたその他の称号を持たない人たちも、前の3人には劣るがそれでも普通の聖騎士よりいい装備が与えられた。
俺は、ショートソードと革鎧を装備している。騎士が革鎧? とか思うだろうが、金属鎧だと重くて動きづらいのだ。なので革鎧にしてもらった。ただ、普通に金属鎧を着ている人がいるので多分ここら辺はステータスの低さが要因ではないかと思っている。
まあ、俺後方支援要因だしいいよね。という感じだ。
「よーし、準備はいいかー!」
声を張り上げて皆を確認しているのは、アドレフ聖騎士長という人だ。聖騎士長という名の通り今回の12名を護衛する聖騎士のリーダーである。見た目30代の渋いおっさんというイメージだろうか。騎士を名乗るだけあって体格は大きい。
この後、俺たちはアドレフ聖騎士長率いる護衛と一緒に街の外に出て、魔物を狩るということを行うらしい。
魔物というものの説明は受けたが、俺は生き物の命を奪ったことなんて……蚊とかGならあるけれど、それぐらいの経験しかない。ちゃんとできるか不安だ。社会人組や、女子高校生たちも多少顔に不安をにじませている。逆に、男子高校生組なんかは多少興奮して目を輝かせている。まあ、ゲームなんかでもモンスターを倒すのは『主人公』の役割だしそういったのを期待してしまうのも無理はない。
王都の外までは用意されていた馬車で移動し、王都から少し離れた森の手前で降りる。ここら辺は王都から近いということもありあまり強い魔物は出ないということだ。
まず最初に出てきたのは角の生えたウサギだ。ホーンラビットという名前らしい。外見通りザコモンスターだそうだ。
魔物と普通の動物との違いは、体内に魔力を宿しているかどうか。そして魔石を持っているかどうかという事らしい。魔石というのは体内の魔力が結晶化したものらしく、この世界では燃料として使われているそうだ。魔石のとれる鉱山なんかもあるらしい。無論、魔力を宿している以上、魔物の中には魔法を使うものもいる。(以上座学より)
ホーンラビットは魔法を使わず、基本的な攻撃動作は角を突き出した突進だ。
「よーし、とりあえず、あれを倒してみろ。あれなら問題なく行けるだろ」
アドレフ聖騎士長がそう言うが、皆難しい顔をしている。いくらモンスターだと言われても外見はウサギだ。それをいきなり殺せというのは現代日本人には荷が重いんじゃないだろうか。
「あの、あれはさすがに……」
泉川さんが控えめに意見を申し出る。だが、
「よし、じゃあ俺が行くよ」
そう言って進み出たのは……えーと真田君だったかな。男子高校生の一人だ。
そして距離を詰めて、あっさりと切り殺してしまった。
うわ、スプラッター
真田君はそんなこと気に留めず振り返ってドヤ顔をしている。視線は女子の方を向いているから、多分カッコいい所を見せたかったのだろう。肝心の女子は少し引いているが。
「うん、まあこんなもんか。よし次行くぞ!」
そう言ってアドレフ聖騎士長他はずかずかと進んで行く。
そして、基本的にはホーンラビットみたいなザコ魔物が何体か、あと大きいのでは狼のようなフォレストウルフという魔物が出てきた。
さすがに狼相手だとウサギよりかは戦いやすかったのか他の人たちも参加して倒している。特に東雲君と西条さんは凄かった。目にもとまらぬ剣捌きで狼を一刀両断にしていた。
なんというか社会人組が形無しだよ。年齢が勝っている所しか取り柄無いじゃん。というぐらい、高校生組が活躍していた。むろん社会人組も何もやっていなかったわけではないが。
俺はやっぱりステータスの低さから狼一匹相手するのも一苦労だ。結局護衛の聖騎士の人に助けてもらった。
「やはり、アキヅキ殿はステータスの低さが問題ですな。とりあえずレベルとステータスを上げることを目標にしましょう。」
他の人は、戦い方なんかをレクチャーされているのに俺はまずはレベル上げかららしい。
ガキッ!
「あっ」
どうやら石田の剣がモンスターの骨に変な方向から当たったみたいだ。引き抜いた剣は刃が欠けている。
「あ、俺治すよ。」
こういう時こそ俺のスキル〈物体修復〉が役に立つ。欠けた刃の部分に手を当てて魔法をかけるとあら不思議。そこには新品の剣が。
ただこれめっちゃ疲れる。これもステータスの魔力が低いせいだと言われた。
「お、サンキュ! 秋月」
そう言って、すぐにモンスター退治に戻っていく石田。
こっちは魔法一回使っただけで100m全力疾走した後みたいな疲労感がある。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
おっと誰かが気づいて声をかけてくれた。声の方を見やると、香川さんだった。
「あー、うん、ありがと。でもいいの? みんなあっち行ってるけど」
そう言って東雲君たちがモンスター狩りをしている方向を指す。
「あ、いいんです。……私、ああいうの苦手で……」
あー、まあ、ここ何時間かで慣れてきたとはいえ、まだ香川さんには刺激が強いようだ。
ちなみに俺以外の社会人勢はさすがに高校生に負けるわけにはいかないと思ったのか先ほどからモンスター狩りに積極的に参加している。
本日の成果
ケイタ・アキヅキ
Lv:2
種族:人間
性別:男性
年齢:22歳
職業:聖騎士
体力:21
魔力:11
攻撃力:16
防御力:16
魔法攻撃力:6
魔法防御力:16
素早さ:11
スキル:〈鑑定〉〈物体修復〉
1しかレベルが上がらなかった。あまり魔物を狩れなかったからだろう。
なお『勇者』こと東雲君は今日1日でレベル7にまで上がっていたそうだ。




