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81話 “ジェミニ”プロジェクト

 さて、レイリー博士の作品はコアユニットと動力炉が新技術と言う事だった。この2つが発表会での見所になるのだろう。上手くいけばこれらの技術の特許料などが入ってくる。


 さて、俺の方はと言うと、初めてと言うこともあり最初はそこまで新技術を盛り込むつもりも無かった。普通の物を作ってアキヅキ研究所(ウチ)でも作ってますよ的アピールでも良かった。

 ただ、シアンさん達にこの偽装工場を作って貰ったので、それらとコンピューターを使用すれば、かなり精度の良い物を作れるのでは無いかと考えるようになった。そのため、外装部分に関しては工作精度により、より人間に近い物を制作できると思っている。事実、この偽装工場の精度は高く、プロキオンちゃんの用意したソフトウェアも使用することによりかなりの試行錯誤やシミュレーションを高速で行え、それにより現在までに、オートマタの頭部と胴体部の90%以上が完成している(コアユニットと動力を除く)。

 なおレイリー博士のオートマタは俺の作っている設計図を流用するので外見上は同じ物となる。髪部分などのカラーリングについては変える予定であるが。


 余談ではあるが、最初はシュ○ちゃんみたいな大柄な男性にしようと思っていた。見た目のインパクトもあるし、戦闘や力仕事でも使えそうだからだ。でもそういえばアレって人類に反旗を翻したんだよなと思い出し怖くなったので、正反対の女性型を製作することにした。いや、だって○ュワちゃんがショットガン持って迫ってくるとか絶対チビるわ。それなら可愛い女の子の方がいい。そういえばこの世界はロボット三原則とかないのだろうか?


 なお、外見が同じという事で今回オートマタを制作する計画を“ジェミニ”プロジェクトと名付けた。双子座の意味を持つ。こんなイキ(・・)なプロジェクト名、誰が名付けたかって? 俺だよ!



 コア技術に関してはレイリー博士と共同研究と言う名目のため、彼女がどの程度優秀かにかかっている。実際は俺がお金を出してレイリー博士の物を使用させて貰う形だった。しかしプロキオンちゃんにより、さらなる進歩が見込めるらしい。

動力については、俺はレイリー博士と違って通常の魔力電池を使用するつもりだ。魔力電池は古代魔法文明で一般的に使用されていたものであるので材料もあり製造も容易だ。後に確認したところ、この世界で一般的なのは魔石を直接繋いで動力にする方法らしく、結果的にはこちらも珍しい技術と言うことになってしまった。

 ちなみに魔力電池という物はその名の通り魔力を溜める特殊な電池である。無加工の魔石よりも格段に多くの魔力を蓄積できると言う特徴がある。



 さて、その製作作業であるが俺の方は外装パーツを作成していく。

コアユニットに関しては、レイリー博士の新作ユニットをプロキオンちゃんがスパコンなどを使用し解析、洗練化している。これは現在プロキオンちゃんによる結果待ちだ。

 そして、レイリー博士のもう一つの見所である新動力炉なのだが、何せ俺のすぐ横の机で作業を行っているため、情報が筒抜けである。


『レイリーの見つけたっていう新エネルギーなの?』

「そうなんだよ、私はそれを【ビタミンUR】と名付けた。」


 動力の元となるのはレイリーが発見した新エネルギーらしい。柑橘類に多く含まれているから【ビタミンUR】と名付けただけで、栄養素のビタミンとは関係ないそうだ。


「この【ビタミンUR】は特殊化合した触媒と反応して魔力を発生させる特殊な性質を持つんだ」

『なるほどデータは貰ってるからシミュレートしてみるの』


 そうしてプロキオンちゃんがコンピューター上で実際の動作をシミュレートしていく。この工場につながっているコンピューターは現代地球のスパコンよりかなり高性能で有り、ソフトウェアのほうも現実の状況などを高精度で再現できるため、地球の技術より数歩進んだ物となっている。電子部品の他、魔力素子とか言う謎魔法技術の併用型スパコンらしいのだが俺はよく分かっていない。


『とりあえず、時間が必要だからその間に外装の確認を行っておくの』

「分かったよ」


 そう言って、プロキオンちゃんはシミュレーションに没頭することになり一時的に姿を(モニター上から)消した。


「じゃあ、ケイタ君。今できている外装(ハード)を見せて貰いたいんだが。」

「あ、はい。分かりました。実物を見た方が早いですよね。行きましょうか」


 今、工場内で組み立てられているオートマタの外装はある程度その外見が判別できる程度には完成している。

 それは工場の寝台のようなところに寝かされているので、そちらを見に行くことにする。


 俺とレイリー博士、それにA2ちゃん達を引き連れて、作成中のオートマタを見に行った。……のだが


「なんだい、これは!?」


 そのオートマタのボディーを見るなり驚きの声を上げる。それが何に対する驚きかは分からない。

 俺も、コンピューター上で制作していたため、こうやって実際に見るのは初めてだ。CGではずっと見ているはずなんだけれど、やはりこうやって見ると作業が進んでいると言う実感が湧いてくる。


 前にも言ったように出来ているのは頭部と胴体部のみ、それも完成はしていない。一部は皮膚パーツが外れ内装部分のメカ部分や人工筋肉などが見えてしまっている。

 筋肉の付き方など最初は人間を完全再現しようかと思ったが、それではオートマタとしての利便性に問題が出るのではないかとか、メンテナンス性、人工筋肉の弱点などを考慮し、機械関節(モータ、シリンダーなど)と併用することにした。

 また、このオートマタは人間のような自然治癒や抗体を持たないし、マリオネットのようなメンテナンスフリーと言うわけでは無いので、メンテナンスのための継ぎ目が体の至る部分に見える。

 それでも顔は非常に人間ぽいと思う。……頬に分割線が見えるが。髪はメンテナンス時邪魔にならないようショートカットとした。表情筋も再現が非常に難しく、人間の8割未満の再現率となっている。肌については人間に近い弾力の化学材料を使用。

 胴体部は実使用時の利便性ため水着のようなインナーを着ている……ように見せかけてその実、メカ部分が露出、硬質な金属が覆っているだけという状態だ。肌(軟素材)は首や肩、腹部のみである。

 さらに胴体との親和性、オートマタという事実上のロボットという事実を考え、腕と足は球体関節やロボットプラモデルの造りを取り入れる予定だ。(そうしないと発表会に間に合わないというのもある)

 最終的な完成形は日本にあった兵器やロボットの擬人化のようなものになるだろう。


 やはり力を入れているのは顔だ。胴体や手足は現実の人間も服を着ているため見えるところが少ない。しかし顔は様々な表現をするための器官が集中している。「目は口ほどにモノを言う」などと言う言葉もある。表情で考えを見抜いたりする。など

 そのため顔の制作だけでメチャクチャ時間がかかっている。



 さて、話を戻そう。レイリー博士が驚いてオートマタをまじまじと見ているようだが、先ほどの言葉にはどういった意図があったのだろう。

 これでも俺がプロキオンちゃんに色々教えて貰いながら時間をかけて一生懸命作ったものである。ダメ出しとかされたらちょっと凹む。


「まいったな、ここまで人間に近いなんて……」

「あの? 何かご意見が?」


 恐る恐る聞いてみる。


「いやいや! 外装(これ)については文句なんて無いよ。むしろ想像以上さ! ただここまで人間に近くなってくると今度は私の作ったコアユニットの方がちょっとマッチしないって言うかね……」

「どういうことですか?」

「いや、マリオネットって命令は理解しているけど基本喋らないよね。最近は「はい」「いいえ」ぐらいの簡単な返しはするヤツもあるし、その筋の最先端を行っているドットカール氏の作品とかだと単純な会話程度なら出来るらしいけど……でもこれ「喋る」ための造りになっているよね」

「……は?」


 え、マジで!? アレ喋らないの? 確かによく考えればデッサン人形に口はないし、リアル寄りのマネキンは口っぽい造形はあるが稼働しない。さらにどんな受け答えも無表情。

 オートマタって言ってしまえば魔法を使った人間型ロボットだから電子音声だろうがスピーカーからだろうが喋る物だと思っていた。

 だって、スマホと会話する時代だぜ? ヘイ! ○リ!


「ちなみに、ドットカール博士のオートマタってどのぐらい人間っぽいんですか?」

「うーん……以前見た際には、話しかけると「はい」「いいえ」程度の相づちはスムーズに打ってくれたね。ただ質問なんかすると答えだけ(・・)は言ってくれるんだけど、会話としては不自然だったね。それと少し複雑な質問なんかは全部「分かりません」になっちゃうし、答えるまでに5秒以上のタイムラグがあったね。あと、表情も変わらないからちょっと不気味だったかな。」

『その辺りは問題ないのん!』

「「わぁ!」」


 レイリー博士から最新のオートマタ事情を聞いていたらいきなりプロキオンちゃんの声が聞こえてきた。

 振り向くとプロキオンちゃんは勿論おらず、UGVと呼ばれる小型の無人作業車両がすぐ後ろにあった。その無人作業車の操作パネルにプロキオンちゃんの顔が映る。


『レイリーから貰ったデータでオートマタのコアユニットの精度についてはある程度解析済みなの。それを踏まえてさらにブラッシュアップしたモノがこちらなのん』


 そう言うと、無人作業車のアームが俺達の前に伸びてきた。そのアームの上にはオートマタのコアユニットが2つ乗っていた。


「これは……もう出来たの、プロキオンちゃん?」

『プロキオンにかかればこのくらい当然なの! ただし元の性能が低いからどうしても限界があるの』

「も……元の性能が低い……」


 おっと、ちょっとした言葉でレイリー博士が傷ついている。しかしプロキオンちゃんはそんなことお構いなしに進めていく。


『結局、人工知能の初期ロットにも劣る物になってしまったの。だけれどプロキオンは頑張ったの。そして自己進化機能を付与することにより会話によりこのコアユニットは進化するの』

「なるほど……で、どの程度なの?」

『最初は話し方もぎこちないと思うの。でも話をしていくうちに学んでスムーズになっていくと思うの。ギルド発表会とやらまで、艦長達はこの子達と会話して知能を少しでも発達させてあげるの。各種データはインストール済みだけれど思考ルーチンが完全では無いの。だからデータと関連付けられないの。言うなれば知識だけはある5歳児ぐらいなの』


 なるほど、……よく分かったような分からないような。


「とにかく5歳児程度のAIを俺達が色々教えてあげながら育てて(・・・)いけばいいのかな?」

『そうなの。知識だけはあるから、上手くいけばギルド発表会とやらまでに外見年齢相当まで育てることも可能なのん。』

「なるほど、ありがとう。早速、ボディーと繋いでみるよ」

「あの、私、この子の言っていることがよく分からなかったんだけれど? どういうことだい?」


 なるほど、今から育てるのか。ならできるだけ早いほうがいいよなと思いすぐに、ボディーにコアユニットを繋ぐ用意をすると、レイリー博士がよく分からないと聞いてきた。


「えーと、これは自己進化するコアユニットで、教育していくとだんだんとスムーズに喋れるようになる……そうです」

「スムーズに対話できるのかい? それは凄いな。これはドットカール氏に追いついたかな?」


 いや、聞いている限り、追い抜いているんじゃ無いかな? と思います。

 そんなことを考えながら台の上に寝ているボディーの頭を少し起こして、後頭部のパーツをスライドさせる。するとパカッと頭が開く。実際にはこんなに簡単に開かないのだが、今回はコアユニットを搭載するために一部パーツを外しておいたために簡単に開くようになっている。

 そこを開くとフレームと内部配線が顔を覗かせる。いかにもメカってかんじ。その中心にあるコアユニット用のくぼみに正確にセットする。(ちょうど人間で言う脳の部分)

その後、各配線を繋いでいく。動力はまだ出来ていないので、外部魔力のコードを持ってくる。(今は無いが、動力は人間でいう心臓部にある)

 そしてガチンッ! と各ユニットが正確につながった。

 その後、正確に逆の手順でくみ上げて、パーツ類をはめ込む。そうして簡単に開かないような処置をして終了だ。

 

 さて、どうなる?

前回の更新日を見てビビりました。1ヶ月以上開いていたんですねぇ。

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