78話 オートマタ制作 2
さて、オートマタ開発であるが、ソフトウェアについてはレイリー博士の研究所に通って教えて貰っている。その際にはプロキオンちゃん(端末)も一緒に行ってモニターしており各知識のバックアップもバッチリだ。
同時にハードウェアについても制作に取りかかることにする。
と言っても以前レイリー博士に教えて貰ったとおり、素材選びから行わなければならない。世間のオートマタはやはり、強度、重量、価格の面から木製が多いらしい。ドットカール博士等は大御所でフルオーダーメイドと言う事もあり軽金属や魔物の素材などを多用している上に塗料にも特殊な物を使用しているとか。
さて俺達は、
「何か増えているのだけれど……」
朝方、地上部分の偽装研究所にいってみると、見たこと無い……いや、少しは見たことがある機械が並んでいた。それは各種工作機械だ。NC旋盤であったり、射出形成機、ロボットアームなどが並んでいる。
「必要かと思って揃えておいたわよ~」
俺を朝一でここに呼び寄せたアークさんがそう言ってくれる。なるほど、俺が作品作りで詰まっていると思って揃えてくれたのか。
アークさん、素敵! 抱いて!
「うふふ、それは夜にね~」
あれ? 俺、声に出してましたっけ? まあいいや。
「ここにあるものなら何でも使っていいわよ。データ上は偽装資源として登録されているから、地下の施設には影響は無いわ」
「ありがとうございます。そういうことなら遠慮無く使わせて貰いますね。」
「フフフ、じゃあまた夜にねー」
意味深な笑いを残してアークさんは去って行った。いや、元からあんな微笑みを浮かべている人だったな。
『これだけあれば色々作れるの』
「やはりそう思うかい」
各種金属や樹脂から謎素材までトン単位である。これを加工すれば……
「どうやって加工するの?」
『パソコンに3Dデータを打ち込めば加工できるの』
……それどうやるの? 3Dモデルを作るの? それとも3D-CAD?
『もういいの! プロキオンがプログラムするの!』
そう言うとプロキオンちゃんはここにあるコンピュータ類に何かのプログラムを送りこみ始めた。
そうして出来上がったのがこちらです。
「おお、使いやすい!」
『フフン! プロキオンを褒めるの!』
初心者でも使いやすい3Dモデリングソフトや化学分析ソフト、シュミレーションソフトなどを作成してくれた。これでハードウェアについてはあらかたクリアだ!
「さすがだ、プロキオンちゃん! プログラマーの仕事が無くなるよ!」
『フフフン! もっと褒めるの!』
俺はありとあらゆる語彙を使ってプロキオンちゃんを褒めてやった。
ここを用意してくれたアークさん達、皆も後でお礼と賞賛の言葉を送っておこう。
ちなみにここ全自動工廠らしく、コンピューターに打ち込むと素材の運搬から加工、仕上げまで全て機械任せとなる。
さすがに素人が金属塊を持って加工機械周辺をウロチョロすると危ないしね。とはいえ、最終組立や、不良品などの目視での判断など最終的には人の手という物が必要になってくるが。
そしてその夜。
「お邪魔するわね~」
「あれ? アークさん、どうしたんですか?」
アークさんが俺の部屋にやってきた。どうしたんだろう。
「ウフフ、昼間の約束を果たしてもらいに来たわよ~。後、私って独占欲も結構強いのよー」
「……?」
その夜、俺は色欲という名の(ry
◇◇◇
さて、一夜明けた朝、けだるげな、しかし精神的幸福感の中、起床した俺はそのままダイニングに向かい朝食をとった。相変わらず起床の際、部屋には既にアークさんはいなかった。
また一つこの世界と深くつながってしまった。ごめんよ、父さん母さん。もう帰るつもりは無いんだ。
ダイニングには既に皆がそろっていたため俺が最後のようだった。
「いやー、昨夜は凄かった」と考えながらとる朝食は美味しくペロリと平らげてしまい、パンのおかわりを要求したほどだ。
食後のまったりタイムを楽しんでいるとドアノッカーが鳴っていることに気付いたシアンさんが玄関に向かった。そして帰ってきたので誰か来たのか聞こうかと思っていたら、シアンさんの横にレイリー博士の姿が。
「どうしたんですか、こんな朝早くから? 確かに今日はレイリー博士のところにお邪魔する予定でしたが。」
「うう……私をここで雇ってください」
いきなり涙目で頭を下げられた。急にしおらしい態度でそんなことをされても訳が分からない。
「あの、さすがに理解できないので詳しく話して貰えますか。あ、コーヒー飲みます?」
そう言って、ダイニングテーブルの空いている席にレイリー博士を座らせる。彼女の目の前にシアンさんが入れたコーヒーを持ってきた。
彼女はそれを一口飲むと、ぽつりぽつりと語り始めた。
「実は昨日……実験中に家が壊れちゃって――」
話を聞くと、重量物(大量の金属ペレットや本など)を保管していたレイリー博士の研究室。普通の一軒家(かなり古い部類)であり、普通に使う分には問題ないが、さすがに研究者の研究資料などが山積みになって耐えきれなくなったそうだ。さらに最近は研究開発ギルド主催の発表会への作品の作成も行っており内部の重量物はさらに増加していたらしい。
そして昨日、研究所(家)が倒壊。
幸い巻き込まれた人はいなかったし、レイリー博士も、建物が軋み始めた時点でヤバいと思い逃げたので無事だった。人的被害はゼロだ。
ただし、研究所は借家であり、大家から弁償を言い渡された。貧乏研究所であったが、それでも何とかそれを払うことが出来た。
そうして一連の事が終わってみると、レイリー博士無一文。住むところも無い。何とか研究に必要な物などは、瓦礫から掘り起こしたので資産は存在するが、それらは商売道具に当たる物のため売却してお金を作ると言うことはできない。
途方に暮れて、交流のあった俺のところに来たと言うことだった。
「と言う事で、私を住み込みで雇ってください。何でもします。技術供与から家事手伝い、夜のお相手もします」
いや、まあ夜のお相手とか自分が何を口走っているのか分かっているのだろうか。いつもぐいぐい来る感じがなりを潜め、しおらしくシュンとしている。
「とりあえず、荷物はどこに? まずは回収しに生きましょうよ。ウチ、敷地だけは広いので、仮置き場として使って貰えばいいでしょうし」
「荷物は研究所に置かして貰っているんだ……」
「じゃあまずはそれの回収ですね。シアンさん」
「はい、連絡しておきます。」
シアンさんに言って車――大型トラック類を派遣して貰えるよう準備する。
「あの、こちらで雇って貰えると言うことでしょうか?」
「その話し方、もういいですから。持ちつ持たれつですよ。研究者としてはレイリー博士の方が先輩なんですし、多少の手助けぐらい喜んでしますよ。」
「そ、そうかい。ありがとう。持つべき物は親友だね。」
親友だったのか? そんな話をしながら、ちょうどレイリー博士がコーヒーを飲み終わったので全員で家の外に出る。
そこには高機動車2台と、8×8 10tカーゴトラックが2台並んでいた。運転席にはいつものように、A1ちゃんがいて、今回は、その他に積み卸し作業要員としてさらにA1、A2ちゃんが10人ほど待機していた。
「相変わらず、ケイタ君のところの魔導馬車は面白い形をしているね」
「ハハハ、こういった形の方が使いやすいんですよ。」
「そうなのかい? それと何か同じ顔の少女が複数人いる用だが三つ子や四つ子では無いよね? なんだいあれは?」
「まあ、それについては後ほど。まずはレイリー博士の家を片付けに生きましょう」
そうして俺達は今日の予定をキャンセルして、荷物の移動という作業を行うべく、レイリー博士の研究所に向かっていった。
や っ ち ま っ た な ぁ ! (2回目)
それはともかくどんどん人が増えるよ。




