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77話 オートマタ制作

「あ、それ〈プロキオン〉ですね」


 A2ちゃんの一人に案内され地下施設で会ったシアンさんに事の次第を説明すると今の答えが返ってきた。いや、だからプロキオンて何だよ。

俺の戸惑いが伝わったのだろうか、シアンさんが壁の方向を向く。

ん、そこに何かあるのか?


「プロキオン、見ているのでしょう。主様にちゃんとご挨拶なさい。」


 シアンさんがそう壁に投げかけると、その壁に埋め込まれていたモニターが一瞬ぶれて、さっきの少女が現れた。


『Небо очень и очень темное , а Земля голубоватая .』

「何を言っているのですか?」

『有名な言葉なの。覚えておくといいの。』


 何か俺をおいて二人? で話している。

 モニターの中の少女は……顔から胸までが映っているが、中学生程度の幼さだな。エメラルドグリーンの髪がいかにも人間ではないっぽい。でも非常に可愛い顔立ちだ。

服は胸部までしか見えないのでよく分からないが肩が露出したノースリーブの鎧?……では無いな、メカ? パワードスーツ? のようなものを着ているのだろうか。

 あと頭にヘッドホンのようなものをつけている。メカ猫耳に見えなくも無い形状だ。


「主様、改めてご紹介します。こちらが、ホワイトナイト級宇宙戦艦3番艦〈プロキオン〉搭載自立型AIです。現在、本体が宇宙空間にて任務中のため、通信機器にて挨拶を行うことをお許しください。」

『改めて、よろしくなのん、艦長! 〈プロキオン〉なのん!』

「お、おう、よろしく秋月啓太だ……です。」


 シアンさんがこちらを向きモニターを差しながら紹介してくれる。モニターの中の少女は元気よく挨拶してくるので挨拶を返したのだが……


「艦長? 俺のことですか?」

『艦長は艦長なのん』

「主様を彼女の上位者として登録処理してあります。」


 彼女は現在ここにおらず別行動中のため、モニター越しの会話となっているが彼女の保護者も俺になっているらしい。

 いやいや、ロボット?がロボット?の権限やプログラムにアクセスして命令権を書き換えるとかどうなの? ロボット三原則とかこの世界だとどうなるんだろう?


 彼女……彼女だよな……宇宙空間? うん?


「どこにいるって? 宇宙……戦艦?」

『プロキオンはいま宇宙で一人寂しく惑星の調査をやっているのん。こんなの自動(オート)で出来るのにプロキオンをそっちに呼んでくれないの。』

「はい、彼女の本体は宇宙空間に存在する宇宙戦艦です。」


 そっかー、(人型)戦闘機、(強装)歩兵と来て、ついにウチも宇宙戦艦を装備する時が来たのかー。……うん、もういいや。その辺は。


「あー、うん、そこら辺はシアンさん達に任せるよ。アークさん達と話し合って上手くやってね。」


 もう丸投げしてしまおう。俺は考えることを放棄した。



「それで、主様。何か用があったのでは?」

「ああ、そうそう――」


 シアンさんが言ってくれたのでここにやってきた目的を思い出した。プロキオンちゃん? は既にモニターから消えている。神出鬼没でたまに基地の監視カメラなどからこちらをモニターしていたりするらしいのだが。まあ、その辺はいいだろう。

彼女、宇宙で一人きりで作業していて寂しいみたいなことを言っていたが、通信できるなら話し相手は色々といるだろうし。

 

 とにかくここへとやってきた目的だが、研究開発ギルドの発表会に俺も作品を作りたいと言うことだ。そのための資材集めにやってきたわけだが。


「それでしたら、この施設にある資材を自由に使用して貰ってかまいません。現在この施設の最上位者は主様なのですから。」

「いやいや、さすがにそれは……」


 この施設と言っても大きすぎて把握してない。一応データは貰っているのだが、覚えきれない。

 シアンさんは生産在庫の管理は自分たちが行っているので問題ないと言ってくれているが、専門の技術者でも無い俺が触ると不味いところなどもあるはずだ。


「私達は気にしません。もし、気になるというのであれば確認のためJC14を誰か付けますが?」

『話は聞かせて貰ったのん。その必要には及ばないの!』


 うお! ビックリした。急にプロキオンちゃんの声がスピーカーから聞こえてきた。


『シアン、艦長にカメラ付きの端末を渡すの。プロキオンがチェックしてあげるの!』

「……まあいいでしょう。では、主様。確認のためプロキオンを付けます。そうですね少しお待ちください。」


 そう言って離れて行ったシアンさんだがすぐに戻ってきて何やら手渡してくる。


「こちら通信端末です。これを使えばプロキオンとやり取りできるでしょう。」


 そう言って渡してきたのは、スマホを少し大きくしたような物だ……訂正、タブレット端末だ。モニターにはニコニコしたプロキオンちゃんが写っており、2正面カメラ、スピーカー、その他各種機能付き。


『さあ、このプロキオンの万全のサポートの元、そのオートマタ? とやらを作るの。』


 本当に理解しているのだろうか?


「大丈夫です。プロキオンは見た目ちんちくりんですが、伊達に宇宙戦艦を名乗っているわけではありません。人工知能としても一級品です。」


 シアンさんも認めているみたいだしまあいいか。


「その……じゃあ、よろしく。プロキオンちゃん」

『任せておくの』

「じゃあシアンさん、ありがとう。」

「いえ、良い作品を作れるよう祈っております。」


 そう言ってシアンさんと別れた。



 ◇◇◇



「やあやあ、よく来たね!」


 やってきたのはレイリー博士の研究所。

 ドットカール博士は残念ながら、今、非常に仕事が忙しく会う時間が無かった。そのため次点で魔導人形(オートマタ)に詳しそうなレイリー博士の下にやってきたわけだ。

 出てきた彼女は、相変わらず10代のような背格好であるが、ボサボサの髪に着崩した服、ズレた眼鏡とにじみ出る雰囲気は年相応。独身OLの休日みたいだ。


「まあ、入ってくれたまえ。ちょっと散らかっているが気にしないでくれ」


 そう言って、研究所の中(こぢんまりとした一軒家、借家らしい)に案内してくれる。

 建物の中は非常に散らかっている。さすがは学者と言うべきか、本や研究備品の類いが多い。謎の液体が入ったビーカーや謎の金属塊が無造作に置かれている。

 そんな中をすいすい進んでいくレイリー博士。俺も下手に触れたりせずにレイリー博士の後をついて行く。


「コーヒーでいいかな。」


 その奥、一つの部屋についたと思ったらそこら辺に倒れていた椅子を起こして勧めてきたので座ると、飲み物を差し出してくる。先ほどの言葉からコーヒーだと思う。置くところが無いので受け取ってそのまま手に持つ。

 プロキオンちゃんとの通信端末は肩にかけた鞄から上手くカメラ部分が露出するようにして持ってきている。


「それで、何の用かな? お金になることなら嬉しいね。」

「あ、はい。実は科学技術ギルドの発表会についてご相談が――」


 そこで俺はここに来た目的を述べる。俺達の研究所も発表会に参加すること。そこで俺も作品を作っちゃおうかな~と思っていること。その作品は魔導人形(オートマタ)にしようかと思っていること等。

 ただし、オートマタについては知識はあるのだが(ハードウェアについてはだが)製造設備が無いのだ。そのためそれらを購入したり制作したりしてくれるところを紹介して貰おうという物だ。

 オートマタはハードウェアに限って言えばプラモデルやドールのような物だ。であれば規格品があるかも知れない。もしそういった物があるのであれば同じように紹介して貰おうとも思っている。


「なるほど、結論から言うとそれは難しいかな」

「どうしてです?」

「そういった物は各研究所が自分たちで作っているからだよ。一応基礎のヤツは売っているけれど、基本の型だから面白みが無いよ?」


 何と! 早速当てが外れた。アレ等はプラモデルで言う所のスクラッチ品であったらしい。丸太から仏像を削り出すような物か、後は紙に自分で絵を描いてペーパークラフト。

 既製品として売っているものもあるが、それは基礎中の基礎、つまり等身大のデッサン人形やノッペリマネキンである。それならば売っているらしい。


「じゃあ、その素材なんかを売っている店などは?」

「それなら紹介できるけど、魔導人形(オートマタ)の素材って、各研究室でまちまちなんだよ。流行は木製で各部を金属で補強する方式だけれど、ケイタ君は何から作る気なのかな?」


 え……強化プラスチック(FRP)とか……ナンテコッタイ!


「あ、でも、内部の魔力伝導体や人工魔導筋肉なんかは供与できると思うよ。お金は貰うけど」

「あと、ソフトウェア……コアユニットについてもそこまで詳しくないんです。そこも教えて貰えると……」

「うーん、その辺は各研究所の秘匿部分だからね。金額次第かな。」


 そうして俺は、レイリー博士にソフトウェアについて教えて貰うことになった。勿論その場合、俺はレイリー博士から技術供与、又は共同開発したことを示す必要があるのだが、そこは特に問題は無い。

 ドットカール博士のところに行って知った気でいたけれど、いざ作ろうとなると何も知らなかったと言う……あるよね!

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