5話 またまた勉強
本日も同じく座学の時間だ。内容は大体同じ。この世界の歴史に、地理、魔族や魔物、魔法についてなど
そして同じくその後は自由時間。
「おい石田、外に行けるんなら一緒に行かないか」
昨日1人で抜け駆けしやがった同期の石田を誘ってみるが、
「あー、今日はいいや。昨日買ったモンの整理しないといけないしな。」
……ちくしょう、なんて友達がいのないやつだ。いいよ1人で行ってやる。
外出許可を取り付けて、昨日聞いたように日が落ちる前には帰ってくるように言われたが、建物の外へと出てみる。
以前窓から見たように、ここは小高い丘の上だったらしい。教会はと振り向いてみると、パルテノン神殿みたいな白い石造りの非常に大きな建物だった。色合いや造り、模様なんかも宗教施設感が漂っている。
あと部屋の位置関係で見えなかったのだが、近くにもう一つ大きな建物が見える。一言で言ってしまえばお城だ。あれは王様がいるところだろうか。ここは王都らしいし、それに最初の日には教皇の隣にいたもんな。王様。
まあ、そっちには行く用もないし、今は丘を下ったところにある街の方を見てみるか。
城下町と言えばいいのだろうか。そこは結構にぎわっていた。昼時は過ぎているというのに食い物の屋台が出ていたり、何かよく分からない売り子が声を上げていたりした。一応1か月分のお金はもらっているので、何か買ってみるのも悪くない。そう言えば石田の奴は何か買ったような言い草だったな。何を買ったんだろうか。
そんなことを考えながら歩いているが、何人かが珍しそうにこちらを見てくる。それはすぐにわかった。服装だ。今は教会でもらった服を着ているのだが、服のグレードが周囲の人間より一段ほど高い。デザイン面でも明らかに周囲から浮いている服装だ。これは悪目立ちするなと思いとりあえず服を買おうと思う。
とりあえず今すれ違いそうになったおっちゃんに聞いてみると服を売っている店はすぐに分かった。
おっちゃんに教えてもらった店に行き服を上下及び下着など一式買った。作りも荒くデザイン性もあまりないのに、高いなと感じる程度の値がした。あとはなんだ……今は教会で手配してもらっているが日用品なども買っておいた方がいいのか?
そう思い街を散策しながら「あ、これ必要かも」と思ったものを買っていく。この世界レジ袋なんてものは無いので、大きめのショルダーバッグも購入しておいて、買った物をそこに放り込んでいく。
あとはあれかなとか考えながら歩いていると、モヒカンとトゲトゲ肩パッドが似合いそうなごついおっさんが何人かで入っていく建物を見つけた。
「……冒険者ギルド」
看板にはそう書かれていた。『冒険者』、小説なんかでは定番の職業だったはずだが、その実、日雇い労働者みたいなものだったはずだ。この世界にもあるのか。これは俺も登録すべきだろうか。
いやいや、今は教会所属の『勇者パーティー』なわけだし、今のところは入る必要はないよな。とりあえず場所だけ覚えておいて何かあったら頼ったらいいんじゃないだろうか。結局その建物には入らずにその場を後にした。
◇◇◇
本日から実技訓練が始まる。といってもいきなり実戦というわけではなくて、まずは教会所属の聖騎士と訓練となっているのだが、結局本日一日だけのメニューとなった。なぜなら『勇者』の東雲君をはじめとして何人かは強すぎて訓練相手を務められるような者がいなかったからだ。
この結果には教皇もニッコリだった。たぶん即戦力になるとでも思っているのだろう。
俺? 俺はもちろん訓練で相手役の聖騎士に負けた挙句、色々とダメ出しをされた。
「だ、大丈夫ですか?」
負けて転がされた俺に話しかけてくれる人がいる。誰だと思ったら女子高生の泉川さんだった。この子は美人で明るいんだが、いつも東雲君と一緒にいるので付き合っているんだろうなと思っている。東雲君がクラスカーストトップの男子だとしたら、この子は女子側のトップだったのであろう。他の人たちの視線なんかも合わせてそんな雰囲気が出ている。
まあとにかく、こんな情けない俺に声をかけてくれるなんていい子だな。彼氏持ちとはいえグラッときちゃうぜ。
「大丈夫、ありがとう」
相手は木剣を使用していたとはいえ当たった場所は結構痛い。が、やせ我慢して起き上がる。美人JKの前でくらいかっこつけたいのだ。
「あ、一応回復魔法かけますね」
そう言って手のひらをこちらに向けてくる。直後泉川さんの掌が淡く光り出して、それと同時に、俺の体にあった痛みが引いていく。
泉川さんは回復魔法を使う後方支援要員だ。そして、座学の時間に魔法の事を聞いただけで実践できてしまった猛者でもある。さすがに『聖女』という称号は伊達ではないらしい。
「あ、ありがとう。もう大丈夫です。」
「そうですかよかった。」
そう言ってニッコリとほほ笑んでくる。おいおい、クラスカースト上位スゲーな。誰にでも優しいとか天使かよ。
そんなことを思っていたら、向こうから東雲君が泉川さんを呼んできた。
「あ、じゃあ私はこれで」
そう言って泉川さんはその場から離れていく。あ、残念。いいな彼女持ちとか……




