73話 エロシーン? ねーよ!
「主様ッ!! 大丈夫ですかー!?」
遠く――穴で反響し、聞き慣れない音ではあるものの、シアンさんの声が聞こえてくる。
あと無線機からも同じ声が聞こえてくる。
「こっちは大丈夫だから、そっちの女性の救助を先にしてあげて! 終わったらロープか何かで引き上げて! 穴の中は滑りやすいから気をつけて!」
俺は同じように自分が滑ってきた穴の奥に向けて声を張り上げ指示を出した。
「了解しました! すぐに助けにいきますからね! A1、頼みましたよ!」
そう言ってシアンさんの声は聞こえなくなった。
『大丈夫よ~。ケイちゃん達はモニターしてるから。生存者と遺体の移動はそこまで時間がかからないから、その場で待っていてくれたらいいわ。』
アークさんの声が無線機を通して聞こえてきたので、お願いしますとだけ言って通信を終えた。
さて、俺達がゴブリンの洞窟の横穴を滑り落ちた先は地底湖であった。……いや、湖と言うほど大きくはない水たまりのある空洞である。
空洞の床面積の約8割が水に沈んでいる。
穴から放り出された際にその水たまりへと突っ込んだワケだ。今は残った2割の地面――湖の岸にいる。
滑ってきた横穴もこの岸のところへとつながっていたのだが、滑ってきた勢いを殺しきれずそのまま湖へボチャン! 水深はそれほどでもなく、すぐに岸に上がることが出来た。
そうして俺の横にはA1101ちゃんが同じくビショビショになっている。
落ちる際に足をつかんでくれたのはA1101ちゃんだったのだ。だが、悲しいかな、彼女の体重は見た目通りであり成人男性を支えるのには足りなかった。結果、一緒に落ちる羽目になってしまった。そしてA1101ちゃんも同じように湖にボチャン!
「しっかし綺麗な光景だ」
周囲を見渡すと先ほど説明したとおりの地底湖が見える。なぜか見える。どうも苔か藻のような物が発光しているようで、この地底湖の全容が見える程度の光量を与えてくれていた。
地底湖なんてテレビでしか見たことが無いので、実際に見ると圧倒される。太陽光ほど強くない光が周囲を満遍なく照らし、たまに湖の水に反射して水もキラキラと輝いている。
岸から見る限りでも水の透明度は非常に高く、底が透けて見える。
危険な生物などはいなさそうだ。と言うか見える範囲で俺達以外の生物がいないし、湖の中にも魚一匹泳いでいない。
発光する藻や苔のような植物が生えている程度だ。
「ヘチュッ!」
ん? と横を見る。今めっちゃ可愛いくしゃみが聞こえたのだが。視線を向けると何事も無いように立っているA1101ちゃん。
「思ったより寒いな。濡れた服を乾かすのは……無理だとして、せめて絞って水気を切るくらいはしておこうか。あ、ちゃんと背中向けているから」
「(コクン)」
俺達はビショビショのままだ。この場は非常に涼しく、水に濡れた状態だと寒いぐらいだ。今の状態で放っておかれたら風邪を引く。シアンさん達に救助される時間が遅くなれば寒さに震えながら待たないといけないかも知れない。
火の魔法などを使えればよかったのだろうが、あいにくと使えない。
仕方が無いので、A1101ちゃんを背にし、着ていたシャツとズボンを脱ぎそれらを手でギュッと絞る。服に吸われていた水が大量にビチャビチャと地面に落ちていく。
「うー寒い……」
服を脱いだ状態でいるとこの場所の寒さが一層強く感じられる。ブルッと肩をふるわせる。
さっさと服を着ようと思い、絞った服を広げてみると当然だが湿っている
……これを着るの? なんだか体温が奪われそうだ。しかし替えの服もないし短時間だからと納得させ着ようとした時、がしっ! と手を捕まれた。
ん、A1101ちゃんか? どうしたのだろう。と思い顔を向けると、そこには何と一糸纏わぬ少女が!
立つな! 立つんじゃない! ジョー!!
『そっちの外気温が15℃以下なので一応気をつけてね~。JC14A1の代謝機能を上げて体温が38℃程度になっているから、裸で抱きついていれば大丈夫よ~。服は濡れていたら体温を奪われるから着たらダメよ~。』
え? あ、え? …………無線機からアークさんの声が聞こえる。
何だって? ……濡れた服を着たらダメ。裸で抱きつく?
「え?」
俺が意味が分からず混乱していると目の前の少女が……いやA1101ちゃんだったわ。アイマスクを外しているので分からなかった。初めて見るが綺麗な瞳だなー……
ズルッ!
「きゃー!」
いきなりA1101ちゃんがしゃがみ込み俺のパンツをズリ下げた。
何? 何やってんのこの子!?
そのまま、パンツを脱がされてしまう。イヤー!
そうして俺から奪ったパンツを横に置いたA1101ちゃんは立ち上がって両手を広げる。
今この場には裸の男女が一組。
『早く暖をとらないと体温が下がるわよ~』
また、無線機からアークさんの声が聞こえてきた。
暖をとる。そういや、さっき言っていた……裸で抱き合う!?
「え、マジで?」
A1101ちゃんは目の前で両手を広げたまま待機している。胸や股間は丸見えである。
立つな! 立つんじゃない! ジョー!! (2回目)
顔がほんのり赤い。恥ずかしいのだろうか? ええい! ここまでやって貰ったんだ。彼女の頑張りを無駄にするな! それに確かに寒いし。
「し、失礼しまーす……」
おっかなびっくりと、そっとA1101ちゃんに抱きつく。
あ、暖かい。
そういえばさっき体温を上げたとか何とか。38℃まであげたとか…………38℃!? それって熱があるって事じゃ無いのか!?
「え? 体温あげたって大丈夫なんですか!? 38℃って高熱ですよね!?」
『救助に行くまでの短い間なら大丈夫よー。人間だって1日2日熱で寝込むことぐらいあるでしょ』
「まあそうですけど……」
いやいや、でも相当辛いに違いない。胸に抱きついているA1101ちゃんを見るとやっぱり赤い。恥ずかしいんじゃ無くて熱があるからだったのか。
さすがにこのままと言うわけにもいくまい。
A1101ちゃんを背後から抱きかかえるようにして地面に座るように姿勢を変える。
立っているより座っている方が楽だろう。本当なら寝転んでいる方がいいのかも知れないが、地面冷たいんだよ。
あ、でもこの姿勢いいよな。服着てれば多分、冬に暖をとるアベックみたいで……世のリア充共はこんな羨ましいことをしていたのか!
ああ、でも暖かい。
あと、何気にいい匂いがする。オートドールっていう兵器だという話だが、女の子ってこんな香りがするのだろうか。
いい感じにA1101ちゃんがカイロの役割を果たしてくれている。38℃まで体温が上がっているのは心配だが。
ちなみにこんな時でも俺のジョーは元気だ。癒しと性欲って同時に起きるんだね。また一つ賢くなったよ。
「アークさん。どんな状況? 救助までまだかかりそう?」
黙って待っているのもあれなので、無線の向こうのアークさんに話しかけてみる。
『いま、生存者と一緒に山を下りてきたわ。これから救助に向かうから、もう少しね~』
「了解です」
ナデナデ――
なんとはなしに目の前にあるA1101ちゃんの頭を撫でてみる。
A1101ちゃんが不思議そうに振り返った。後ろから抱きしめる形になっているので横顔であるが、綺麗な顔だなー。瞳も初めて見たけれど綺麗だ。でもアイマスクは必要だという、ちょっと残念。
ところで……どうも顔が少し赤い。瞳も潤んでおり息も速いような気がする。
これはあれですね、発情しているのですね!
……うん、どう見ても熱のせいですね。分かっておりますとも。
俺が手を戻して再度両腕で抱きしめる形に成るとその腕に自らの腕を絡ませ自身に密着させようとしてくる。
これはもう合意とみてよろしいですね!
俺もギュッと少し力を入れて抱きしめる。隙間があると空気が流れ込んで寒いのでできるだけ密着する。
それにしても、こうやってみると普通の人間と変わらないような気がするな。柔らかいし、暖かいし、いい匂いだし……それに小柄だ。これ以上力を入れると壊れてしまいそうな繊細さがある。
……ところで先ほどから手になれない感触があるんですが何なんでしょうねぇ。プニプニしています。ええ、も、勿論知っていますよ。おパパパぱぁーー
「主様、お待たせしました」
「オヒョウッ!」
突然横からかけられた声に飛び上がるほど驚いた。
「え、あ、あれ、シアンさん」
「はい。救助に来ました。こちら替えの服となっております。……ところでその手はどちらへ行く予定なのですか?」
おっと、ちょっと怖いぜ。A1101ちゃんの胸に伸びていた手が宙をさまよっている。
「あ、ありがとう。あの着替えるので向こう向いていてくれるかな」
「お構いなく」
救助が来たと言う事でそのまま立ち上がり、差し出されていた衣類を受け取る。
A1101ちゃんも同じように着替えを受け取っている。
じー
「あの見られていると着替えにくいんですが……」
「お構いなく」
なぜかシアンさんが俺の着替えを凝視していた。
JC14A1ちゃんのサービスシーン。見た目10代半ばの子に手を出すのはアレかなと思ったのでこれぐらいで。




