67話 歴史の真実
新キャラ出るよ~どんどん出るよ~
最初にそれを観測したのはどこの国だったのか。今となっては分からない。
最初、それは自分たちの住む惑星に向かってくる……比較的脅威度の高い小惑星だと思われた。しかしそれは間違いだった。それ……それらは5つの同一の形状、同一の質量でありなおかつ等間隔に並んで移動していた。
観測した者達は驚き、そして驚喜した。それらは明らかな人工物。つまり自分たちの住む惑星以外にも生物がいた証拠だと。
しかし周りはなかなか信じようとしなかった。単なる偶然ではないか。
宇宙人がいる可能性と、自然が起こした偶然。可能性として高いのは後者ではないかと。
しかし、それでも自分たちの住む惑星に近づいてきているのは事実で有り、各国の研究機関や天文学者がそれらを観測し始めた。
そうして分かった。あれらはやはり人工物であると。5つの物体はこの惑星に向けて軌道変更を行っているようなのだ。そうでないと説明がつかない挙動が何度も確認された。そしてそのような挙動をしてもやはりその5つの物体の間隔は変化しなかった。
この時点で多くの者が宇宙人の存在を信じるようになった。そして各国政府も動き出した。
まず議題に上がったのは友好的なのか敵対的なのかだ。これについては各研究機関があらゆる周波数の電波、魔力波を使用し通信を試みたが返信は無く、まったく推測できない状況であった。
次に議題に上がったのは、友好的であった場合いかにして彼等を出迎えると言うことである。5つの物体は金属で構成された宇宙船のようであるという報告は来ているが、それ以外については憶測の部分が多く、言葉はおろか姿形すら分かっていなかった。
違った見方をした者も居る。敵対的であった場合、どうするのか。迎撃するのか。講和するのか。であった。しかしやはり未だ相手方の意図は分からず推測で話をするしかない。
そうした話し合いが各国で行われている中、経済界やマスコミは友好的宇宙人という意見で統一したキャンペーンを行った。経済の活性化や、技術のブレイクスルーなど色々な憶測があるが、誰がどういった意図で行ったのか、言い出したのは誰なのかは不明であった。
そうして各国は敵対的宇宙人であった場合の想定を行い辛くなった。とはいえ政府は国民を守る義務がある。たとえ秘密裏であったとしてもあらゆる状況を想定して対策を練らなければいけない。
そうした結果、誕生したのが宇宙船開発計画である。各国が共同で出資し、スルーズ連邦を主体とした国際連合機関を作成。今なお惑星に近づいてきている5隻の宇宙船のホストシップを務める宇宙船を開発するというモノである。
これは民間にも好意を持って迎えられた。
しかし敵対的宇宙人の可能性は、各国政府、特にスルーズ連邦など半数以上の国家群に根強く残っており、秘密裏にある計画を進めることになる。
名付けて「ホストシップをする予定の宇宙船は実は戦闘も出来るんです」計画である。
そう、各国出資の元、製造されているのは「宇宙戦艦」であった。
半年という突貫工事で仕上げられた宇宙戦艦はその工期に見合わないほどの資材と資金を使用し仕上げられ、そしてその工期に見合わないほどの戦闘力を秘めていた。
「ホワイトナイト級宇宙戦艦【ホワイトナイト】、マスドライバーに移動完了」
「電圧正常。魔力制御開始」
「重力変動+0.5、慣性制御、正常です。」
スルーズ連邦に設けられた宇宙港、大質量投射施設にてオペレーターが口々に状況を告げる。
天候は晴天。ほぼ無風状態で、大気魔力濃度も正常値。絶好の打ち上げ日和だ。
「lift-off !」
管制員の合図と共にマスドライバーの慣性制御と電磁投射力により一気に加速して行くホワイトナイト級宇宙戦艦1番艦。そうして、目で追えないほどの速度に加速された宇宙戦艦は天高く遙か宇宙空間まで打ち上げられていく。
「続けて、ホワイトナイト級2番艦、発進位置へ移動」
その後、時間をおいて2隻目が打ち上げられる。
その日、世界中にあるマスドライバー施設から計12隻のホワイトナイト級宇宙戦艦が打ち上げられた。
◇◇◇
3日後 月付近――
『こちら旗艦【ホワイトナイト】。全艦集結完了。これより艦隊を組む』
『宇宙基地司令部了解』
世界各地から打ち上げられた計12隻の宇宙戦艦は月付近にて集結。艦隊行動をとる旨を地上にある宇宙基地司令部に報告する。
その後12隻は一定間隔に4×3の横陣となり網を張るような艦隊運動を行う。
この頃になると対象宇宙船はかなり接近しており外見のわずかな凹凸まで観測できるようになっていた。そしてその観測結果から5隻の物体がまったく同じものであり人為的に製造されたものであることが確定した。
しかし、いかなる通信手段を持ってしても相手側からの返信は未だに無かった。
そしてさらに1ヶ月が過ぎた。
ついにその時はやってきた。
対象宇宙船5隻は同じ陣形で月付近で展開しているホワイトナイト級宇宙戦艦から(人間の裸眼程度で)目視可能な位置まで到達したのだ。
目視したそれは事前にデータ上で知っていたとしても圧巻の一言である。全長が10000mにも及ぶ超大型の宇宙船であった。
『こちら司令部、目標からの応答は未だ無し。そちらからアプローチを行え。』
『ホワイトナイト了解した。各艦、これより光信号通信を試みる。』
『『『了解』』』
各艦に設置された探照灯から光が発せられる。一定のリズムで点滅するそれは光量は十分でもし大型宇宙船に窓や光学センサーがあるのであれば観測できるであろう。
数十分間、同様の通信が試みられるがまったく反応がなかった。
既に大型宇宙船は月軌道に進入、惑星ヘオニスまでわずかと言う距離に来ている。目標は減速しているようであるが、進路は相変わらず惑星に向かっている。
宇宙基地司令部は判断を迫られていた。
何も分からないまま惑星に招くことは出来ない。万が一、敵性があった場合取り返しのつかないことになりかねないからだ。
そして、多少強引であるが接触する必要があると判断された。
既にホワイトナイト級宇宙戦艦艦隊と大型宇宙船との距離は目と鼻の先だ。
すぐに司令部から一度目標から距離を開け、旗艦による接触を試みるように指令を出そうとした。その時、
『扉が開いた、問いかけに対する反応かもしれない』
ホワイトナイトが目標の一部が稼働し緑の光が漏れ出てくるのを確認した。次の瞬間――
一条の光が放射された
『ッ!! こちら【アトラス】被弾したっ! 左舷スラスター損傷、機能に異常なしっ!』
放射された光が6番艦【アトラス】の左舷を直撃。小規模な爆発を起こす。
『目標の敵対行動を確認した! 攻撃許可を旗艦に申請する!』
その左側に位置していた7番艦【アステリア】から旗艦【ホワイトナイト】へ攻撃申請の通信が入る。艦隊は攻撃により混乱していた。
『【ホワイトナイト】より【アステリア】、司令部に確認をとる。各艦、準戦闘態勢に移行!!』
各艦にすぐに反撃態勢をとれるように指示した後、地上司令部に一連の対象宇宙船の行動を報告し対応を仰ごうとした。しかしそれは叶わなかった。
『長距離通信がダウン……地上司令部との連絡が不能。対象からのECM攻撃かと思われる』
僚艦からすぐに通信が入り、地上司令部との連絡が不可能になったことを知らされる。
再度、大型宇宙船から光が漏れ始める。それも今度は5隻全てからだ。
『各艦、防御シールド展開! 攻撃に備えよ!!』
そして攻撃。ホワイトナイト級宇宙戦艦は全て防御障壁を貼っていたため宇宙船からのビーム攻撃を減衰させ大した被害はなかった。
しかしこれで大型宇宙船がこちらに対して敵対的である事が確定した。
旗艦であるホワイトナイトは、地上との連絡が途絶えたため緊急事態マニュアルに従って、自身を最上位命令機構として各艦へと指令を下す。
『全巻へ通達。目標大型宇宙船は敵対的であることが確認された。各艦全兵装使用自由! 対象の迎撃に当たれ! 目標をこれ以上「ヘオニス」に近づけるな!』
『『『了解!!』』』
そのときをもって「ヘオニス」国際連合所属宇宙戦艦12隻と敵性宇宙人の乗る超大型宇宙船との戦闘が開始された。
◇◇◇
あれからどれだけが経ったのだろう。
戦闘結果は相討ちであった……
私達は12隻中11隻が大破沈没。生き残っているのは私だけだ。
敵宇宙船の迎撃には成功した。ただし迎撃に時間がかかりすぎて、惑星「ヘオニス」に接近を許してしまった。
結果として轟沈した敵の超大型宇宙船が分解しながら惑星に次々に落下し大被害を引き起こした。
動力炉の爆発は惑星の地殻ごと捲り上げ地上の大陸はシェルターなど意味をなさないぐらいの被害を出した。宇宙船の破片は地表に降り注ぎ、地上を破壊し大量の土砂を巻き上げ惑星を覆った。大陸は海に沈み、逆に押し上げられた地表が隆起する。高波が発生し、海岸を押し流す。大量の巻き上げられた塵により地表に太陽光が届かず惑星表面は寒冷化した。
数十年後……大気の雲が晴れ、澄んだ空気が戻ってきたが、地表の形状は以前とはまったく異なる物となっていた。
地上からいかなる電波、魔力波も捉えられなくなっていた。こちらから呼びかけるも返答は無し。
最も被害の少ない「アヴニル」大陸でも以前と地表データの一致率は7割止まりだ。ひどい大陸など1割未満だ。地表は各地に数百㎞規模のクレーターが散見された。
敵性宇宙人の襲来によって人類は絶滅した。
相討ち……いや、戦略的敗北である。
それからさらに時間が経過する。
宇宙空間で1隻だけ生き残った。しかしそれに意味は無い。私達の目的は人類の発展……そして守護であった。
『こちらホワイトナイト級宇宙戦艦、3番艦【プロキオン】。宇宙基地司令部、本艦は被弾、中破なれど、機能喪失せず。現在自己修復中。指示を請う』
何度目かの……もう数えるのをやめた何度目かの通信を惑星に送る。
あれから惑星「ヘオニス」は徐々に、回復していった。地表にある大陸は緑を取り戻し、海は澄んだ青になり海流が正常に流れ始めている。
一部に生物の痕跡のようなものも確認できる。
『こちら【プロキオン】、指示を……』
意味の無い問いかけ。もう既に惑星に送ることは諦め呟くような独り言。
さらに時間が経過。何年、何十、何千年が経っただろう。私達の星……「ヘオニス」を見ながら考える。
そのときである、地表の一部が光りを放ち何かが惑星を脱出しようとしているのを確認した。
『……あれは……あ、あれはっ!』
それはアヴニル大陸、旧アヴニル・スルーズ連邦軍基地のあった場所から放たれたようである。
すぐに解析を行い大量破壊兵器を搭載したICBMだと判断された。
『なぜあんなものが……しかしあれは』
あれらは兵器であるが、実際に使うことのない抑止力である。使用するときは世界が終わる時。
人類の守護者としての行動は速かった。
艦に残っていた攻撃システムを起動――対象ICBMを迎撃した。
バラバラになってまた惑星に落ちていくICBM。あの程度であれば大気圏で燃え尽きるであろう。しかし何者が発射したのかそれが彼女の疑問であった。
その数日後――
『こちらアヴニル・スルーズ連邦軍基地司令センター。管理マリオネット【アークトゥルス】、宇宙空間にいる宇宙船に通信。返答せよ。』
『――っ!!』
『返答せよ。所属、船名を名乗られたし。』
それは間違いなく地上からの通信。ああ、人類は絶滅などしていなかった。……あれから何年経ったか知らないが復興を果たしたのだ。
【プロキオン】は歓喜した。
『こちら国際連合所属ホワイトナイト級宇宙戦艦、3番艦【プロキオン】。中破すれど、機能喪失せず。現在、自己修復により機能の90%を回復。指示を請う。…………スルーズ連邦なの? 他の国はどうなったの? プロキオンはどうすれば良いの?』
何千年ぶりの通信であろう。国際連合所属であったが状況の分からない現在であればスルーズ連邦の指揮下に入っても問題ないだろう。必死に聞きたいことを口に出す。慌てて最後の方に素が出てしまったが今の彼女には些細なことであった。
『【プロキオン】、了解しました。本基地は通信機能が未だ全快とはいえません。通信状態確保のためヘオニスに接近してください。可能であればアヴニル大陸上空が望ましいです。』
『了解したのん!』
プロキオンは生き残っている各機関を起動、エンジンを起動して惑星に接近していく。
その後、事態の説明を受けた【プロキオン】が落ち込んだり、それでもうれしがったりするのはまた今度。
ネタバレ設定
敵対的宇宙船に乗っていたのは『魔族』です。
ただし
現代の人間種 → 魔族に対する情報は少ない。そもそも解析できる技術力が無い。
古代魔法文明人 → 滅亡。
魔族 → 3000年の間に技術や記録が途絶えた。
と言うわけで、魔族のルーツやいつ出現したのか、なぜこの星に来たのかなど、誰も正確に把握して居ないという状況になっている。




