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66話 アキヅキ研究所始動2

途中に視点変更があります。

「え!? な、何!?」


 俺たちの家の方角から発射される2発のロケット? 今朝家を出る際にはロケットの発射台など見えなかったし、こんな夜中に打ち上げるものでもないだろう。そもそも2発動時発射などしない。とても混乱している。

 周りもその轟音につられて建物から出てくる人などが多数おり、「何だ、何だ!?」とちょっとした騒ぎになっていた。


「無事上がったようです。とても綺麗……」

「何の話!? あれ何!?」

「大丈夫ですよ。あれはICBM――」


 ICBMだと! 大陸間弾道ミサイル……だいたい核ミサイルのことである。戦争映画なんかで見たことがある光景である。え? 世界が終わるの? 


「――を利用した衛星投射ロケットです。」

「は?」


 ロケットの光は徐々に小さく遠ざかって行く光景を眺めながら、俺は間抜けな声を出した。

 そしてロケットの光が周囲の星空に溶け込むぐらいになったころ、一瞬大きく光が輝いた。


◇◇◇



 古代魔法文明は非常に進んだ文明であり、もちろんの事ながら戦争も何度も経験している。そのため、大量破壊兵器なども存在する。

 在アヴニル・スルーズ連邦軍基地には4機の大量破壊兵器を弾頭に搭載したICBMが地下ミサイルサイロに納められていた。

 シアン達はそれをロケットに転用し、早期の惑星監視網を構築しようとしていた。準備は着々と進められており、弾頭ペイロードにあった大量破壊兵器は取り外され複数の監視衛星が詰め込まれていた。

 また、これは元々が戦略兵器であり発射には膨大な手順が必要であったが、彼女たちは持ち前のスペックの高さを生かしソフトウェアとハードウェアの両方からそれらの安全装置類を軒並み取り外した。

 そうして、まずは2機が先行し改造ロケットとして完成した。


 基地の発射管制室にはアークトゥルスとJC14A2が数機おり最後の手動操作を行っていた。

 そうして発射の時は訪れる。


「発射シークエンスを全てカット。カウントダウン開始!」


 目の前にある「|LAUNCH ENABLE《発射可能状態》」のランプが点る。


「……3…2…1…cleared for launch !」


 A201とA202がそれぞれ手に持つ鍵を鍵穴に差し込み


「「blast-off !」」


 合図に合わせて、ガチッ! と同時に同じ位置に鍵を回転させる。

 鍵穴の上にあるランプが光り、「lift-off(発射)」の文字くっきりと浮かぶ。


 ミサイルサイロの扉が開き、基地内にも聞こえるほどの轟音が響き渡りICBM改造ロケットが天高く打ち上げられた。



「カウント-10………………-30………………フェアリング分離まであと――――ッ!!」

「っ!! ロケットの異常振動検知……続けて信号消失っ!!」


 発射管制室が緊張に包まれる。

そして、それを機にロケットからの一切の情報が入らなくなる。


「あら、失敗かしら~」


 周囲がしんと静まりかえる中、そんなのんびりした声が部屋の中に響いた。



◇◇◇



 び、ビビったー!

 ミサイルのようなものは観測衛星機器を打ち上げるためのロケットだったらしい。


 そしてその打ち上げだが、どうも失敗したらしく現在原因を調査中だそうだ。

 ただこの基地は地上に簡易の信号受信機を露出させていた程度で、レーダー施設等は未だ存在せず原因究明は困難を極めている…………と言う事も無くすぐ解決するだろうと言っていた。


 ベッドから起き上がり伸びをする。ロケットだと分かった後は家に帰って夕食をとってから風呂に入りその後すぐに寝てしまった。

 そう、風呂である! この家には風呂がある。地下施設から水道管を引っ張ってきた事により地上の屋敷も現代家屋並の心地よさを演出できるようになったのだ。空調設備も近々設置される予定である。


 窓からは日差しが差し込んでいる。この世界に来てから早寝早起きの習慣がついてしまったな。

 家は大きな洋館でそのうちの一部屋を俺の部屋として割り当てられている。6畳程度の部屋にベッドや机が並んでいるありふれた部屋だ。もっと大きな部屋もあるがこのぐらいの部屋の方が落ち着く。中世風? 欧州風? というのだろうか、部屋の雰囲気も壁や梁、柱など洋風の古い屋敷を感じさせる。こういった所に住んでみるのは憧れていたが実際に出来るとは思わなかったな。


 水回りから魔力(電気の代り)も既に屋敷内には整えられているので本来の古風な洋館というのとは正確には違うのかもしれないが。


 今日は何をしようかと考えながら着替えようとしていると、


「おーい、磯○ー、野球行こうぜー!」

「きゃー!」


 部屋の扉がいきなり開いてレイヴンさんが入ってきた。思わず悲鳴を上げちゃったよ。


「あ、わりぃ。でも、男の裸とか需要無いから早く着替えろよ。で、今日オレ暇だから一狩り行こうぜー!」

「いや、あの分かったんで扉閉めて貰えますか?」

「おう、食堂で待ってるぞー」


 そう言ってレイヴンさんは去って行ってしまった。

 朝から騒がしくなってしまったが、今日の予定は決まったようだ。狩りに行くと行っていたのでモンスターの討伐依頼でも受けるのだろうか。


 さっさと着替えて食堂に行くとレイヴンさんの他にシアンさん達もいて一緒に朝食をとった。


「そういえばJC14ちゃん達は? 彼女たちも食事は必要なの?」

「必要ではありますが、こちらに呼ぶと食堂に入りきらないので、地下基地にある大食堂にて食事をとっています。」


 そうなんだ、ちょっと除け者みたいで悪いな。俺たちもそっちに行った方が良いんだろうか。ぼっちメシ……うっ、頭が……


「皆で食事した方が良いんじゃない? 俺もそっちに行こうか?」

「いえ、いちいち食堂まで移動して貰うのは面倒なので必要ないと思いますが……」


 まあ、確かに地下施設はかなり広く食堂がどこにあるのか知らないが、朝から何十分もかけて移動するというのもあれかな。

 そう思いながら食事を勧めていく。今更ではあるが勿論朝食の主食はパンだ。それとベーコンエッグにサラダという典型的な洋食である。シアンさん作である。

 米については、一応細々と外国で作られていて、それをこの国は輸入しているようなのだがわずかな量なので日本の10倍以上の値段がする。そこまでこだわる方ではないので今のところパン食で問題ない。


「ごちそうさまでした。」

「お粗末様です。」

「よっし、じゃあ行こうぜ!」


 食事を終えるとレイヴンさんが早く行こうとせかしてくる。まだ朝は早いしそこまで急ぐことも無いと思うのだが。

 苦笑しながらレイヴンさんの後に続いて食堂を後にする。

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