63話 JC14
「……知らない人がいる」
家に帰ってきたのだが人の気配がしなかったためまだ基地の方で作業をしているのかと思い、地下室へと降りてきたのだがエレベーター扉の前に知らない人がいた。
エレベーター扉の前にいるのは15,6歳程度の少女だ。ブラウンのセミロングがナウなヤングっぽい。ちょこんと髪にリボンが巻いてある。カワイイ。服装も清潔感のあるカッターシャツに暗色でミニのプリーツスカートとJK制服としてありそうな感じだ。足はムッチリとした足の形がよく分かるニーソックスだ。大変美しいおみ足ですね。上に羽織っているブレザー? ジャケット? はミリタリー調でポケットなどいっぱいあるようなもので少々違和感がある。
そして何より恐ろしいのが手にヨーロッパ辺りで現役のアサルトライフルを抱えている点だろう。
その少女が出入り口を見張っているようで、俺は立ち尽くしてしまった。
その少女は俺を認めると相好を崩して近寄ってくる。
近づいてきて気付いたが腰や太モモのベルトに予備マガジン用ポーチやら手榴弾っぽい円筒形の何かがぶら下がっている。アサルトライフルの方も本格的で減音器に光学サイトにフォアグリップまで付いているという殺る気満々の装備である。
「司令官ですね。アークトゥルスより案内するように承っております。」
「えっと、あの誰ですか?」
にこやかに話しかけてきたミリタリーJKだが見覚えはない。
「失礼しました。私はJC14A2です。固有名称はありません。」
「あ、ああ、君が」
この子がシアンさん達が言っていた強装歩兵であった。俺が見たのは外見は同じ程度の年齢だが白髪ロングの女の子だった。あの子は確かJC14A1とか言っていたな。A1とA2で2種類いるのか。
「では参りましょう。」
そう言って、その女の子が先導してくれる。エレベーターを操作し籠に乗る。俺も慌てて後に付いていく。
「…………」
うーん、何か話した方が良いのだろうか。と言っても初対面だし。
「あ、俺は秋月啓太って言うんだけど」
「はい、ケイタ様ですね。伺っております。」
「君は、その、JC14A2っていうの? 同型機が複数いるって聞いているけれど」
「はい、A1型が256機、A2型が42機。現在基地にて稼働しています。」
Oh! もう既に動いているらしい。確かレイヴンさんが言っていた数とも同じぐらいだから全てが一斉に動き出したのかな。
そんな話をしていたら地下についてエレベーター扉が開いた。
「じゃあ交代よろしく」
「オッケー」
扉の前には同じ姿、同じ格好、同じ装備のJC14A2がいた。2人が向かい合っている姿は何というかそこに鏡でもあるんじゃないかと思うほどだ。
「あ、そっちが司令? よろー!」
そう言って、別のA2型が手を振ってくれる。思わずふり返しちゃったよ。
「司令官に対して失礼ですよ」
「同型なのに。なに猫かぶってんの?」
「任務中ですので」
「ふーん。じゃ、またねー」
目の前のA2型はずいぶんと砕けた感じだ。いかにもリア充JKって感じ。こちらが本来の姿なのだろうか。こっちの方が話しやすいかも。
そうして俺たちがエレベーターを降りると、その同型のA2型が代わりにエレベーターに乗る。そのA2型は最後まで気さくな感じだった。
「えっと彼女は?」
「見張りの交代要員です。……こちらです」
そう言ってそこからも彼女が先導してくれる。先ほど代わりにエレベーターに乗っていったA2型は地下室の警備要員らしい。目の前の彼女が俺の案内をしているので交代要員として任務につくようだ。
エレベーターを出てすぐの所に4人乗りの小型自動車のような物があった。軽自動車をさらに小型化したような見た目だ。軍用のバギーみたいだ。
どうやらコレに乗っていくようだ。確かにこの基地は非常に広かったものな。基地内の移動専用なのだろう、屋根はもちろんフロントガラスもない。
「これで向かいます。乗ってください」
彼女の指示に従って自動車に乗る。そうして乗るとブォーンと動き出した。そこそこ早くて、30㎞/hぐらいは出ているんじゃないだろうか。オープントップの車なので風を良く感じる。
そうして走ること5分弱、俺たちはとある扉の前に来ていた。それぞれの扉には用途ごとにプレートが有り用途が分かるようにはなっているのだが、それ以外のデザインはほとんど変わらないので正直すぐ飽きる。
目の前にあるのはブリーフィングルームらしかった。
「ここですね。アークトゥルス達が待っています」
「分かった。」
そう言って、車を降り扉の方に向かうと、俺が到着するより前に扉が開き中から別の人が出て来た。
「…………」
その人は立ち止まってこちらをじっと見つめてきた。
この子は以前に見たことがある。JC14のA1型だ。以前、水槽で見たときと同じ白髪ロングヘアーで服装はA2型と同じようなJK制服だが柄や色が少々違う。武器類は持っていないようだ。ただ妙な点がある。目を大きなアイマスクで覆い隠しているのだ。そのため表情が読めない。
いや、そうじゃなくて目が見えないのだろうか? 少し心配になる。
その少女はじっと俺を見つめている。目は隠れているのだが顔がこっちを向いていて視線をヒシヒシ感じる。そのため俺も足が止まってしまった。すると、その少女は手を伸ばして俺の頬に触れてきた。
「え? あの……」
ペタペタペタ……
「あの……」
ペタペタ……
俺の顔がこねくり回されている。頬や鼻や耳やらを触りまくってくる。
「はいはーい。そのぐらいにしてね。アークトゥルスに呼ばれてるから」
「……(コクリ)」
A2ちゃんにそう言われるとA1ちゃんは頷いてどこかに行ってしまった。
「えっと、あの、今のは?」
「ああ、A1型ですね。いつもあんな感じです。無口だけどスキンシップは好きみたいで。」
「そ、そうなの……」
いつもあんな感じって、会う度に触られるのか?
会話をしながら自動扉をくぐると、
「けいちゃん、待ってたわ~」
「主様お待ちしておりました」
皆がいた。
そしてJC14A1も……えっと10人ぐらい? 同じ顔、同じ格好の子達が一斉にこちらを向き、俺を見るとわらわらと寄ってきた。
「えっ、ちょっと」
ペタペタペタペタ……
ペタペタ……
ペタ……
10人ぐらいが一斉に俺の体……主に顔をワチャワチャと触ってくる。
まるでゾンビ映画でゾンビが群がっているみたいだ。
ブペェ……なんだか口の中を触られたような。しかも皆アイマスクをして表情が見えないので何を考えて触っているのか分からない。
あん、股間はらめぇ……
「はいはいー、皆さんそれぐらいにしましょう。けいちゃんが困っているわよ」
アークさんがパンパンと手を叩きながらそう言うと、一斉に皆が引いていった。
「この子達に悪気はないのよ~」
「あ、はい、一応聞いていますので」
無口でスキンシップ好きなのはさっき聞いたからね。たださすがにこの人数に群がられるのは問題がある。
「ご苦労様。A1は各作業へ、A2はそのまま任務を継続しなさい」
「はっ!」
シアンさんにそう言われると、A2ちゃんは短く返事をした後、俺の後ろにつく。
A1ちゃん達は皆そろってゾロゾロと部屋を出て行った。
部屋の中にはシアンさん達マリオネット4人とJC14A2一人そして俺がいるのみとなった。
JCなのにJK……外見年齢は15~16歳程度でちょうど中3か高1ぐらいです。
体型は平均的でシアンさん達みたいにボイン(死語)ではありません。
0章の人物紹介に色々書いていますのでそちらも参考にして頂ければと思います。




