3話 ステータス
翌朝、昨日案内してくれたシスター風の人が運んでくれた朝食をとったのち、また前日と同じ部屋に集められた。
そこで、ちゃんと休めたかと聞かれたので無難な返事を返しておく。他の人たちも、戸惑いはあるようだがまあ、昨日よりは混乱は少なくなったようだ。
老人――リオ教皇の勧めもあって、呼び出された12人が順に自己紹介していく。まあ、3人は会社で顔を合わせているので知っているんだが、高校生側は全く知らないからな。
そして順に自己紹介していくんだが、いきなり8人ものフルネームを覚えられるかと言えば否だ。とりあえず名字だけでも覚えようと頑張った。
ちなみに内訳は、社会人男性3人、社会人女性1人、男子高校生4人、女子高校生4人だ。社会人組4人は同じ会社だが、高校生側8人も全員がクラスメイトらしい。別に8人全員が仲良しグループとかそう言ったものではないらしいが、まあ、顔見知りで名前も知っており何度か話したことがある人たちもいるそうだ。
「では、早速で悪いのですが、昨日の件考えてくれましたでしょうか?」
「もちろんです。喜んで協力させていただきます。」
こっちはまだ判断材料があまりないのになーとか考えていたら、いきなり声が上がった。
発言したのは、イケメン男子高校生の東雲君だ。「約束された勝利の顔」って感じの、いかにもリーダーっぽいイケメンだ。たぶんクラスカースト上位とかにいるんだろう。ただ残念ながらその取り巻きは一緒に召喚されなかったようだが。
「まあ、私は別に……」
「それしか帰る方法が無いんじゃなぁ……」
そしてその後に続くように皆が消極的ではあるが賛同していく。
結局全員日本へ帰るために魔王を倒すということになったようだ。
「それでは皆様の意思の確認もとれたので、ステータスの確認をしていきましょうか。」
そうそのステータスだよ。ゲームなんかだと数値で表されていつでも見ることができたが、ここではどうなるのだろうか。というか、それが数値などで表すことができるのであればここが異世界であるということが決定かもしれない。
他の奴らは、興味津々といった奴と、うさん臭そうな顔をしている奴に分かれている。
リオ教皇の声を待っていたのか、一人の男の人がお盆のようなもの手に扉から入ってくる。そのお盆の上には銀色のクレジットカードようなものが12枚と、小さな、けれど絵に豪華な装飾が施されたナイフが一本ある。
まず、銀色のカードのようなものがそれぞれの前に置かれる。
「これは、ステータスカードと言います。古代魔法文明の遺産であり現在は各国にて管理されている身分証のようなものですね。」
おいおい、ステータスカードとかいよいよゲームかよ。それとまた新しい単語が出てきた。『古代魔法文明』ってなんだ。
「こちらに血を一滴つけていただきますと、皆様のステータスが表示されます。なおこれは今言いましたが、身分証でもありますので失くさないようお願いします。」
「血を一滴ってどうするんですか……」
一人の女子高校生が不安そうに尋ねる。たしか香川さんだったかな。この中で一番おとなしそうな子だ。
「指などに傷をつけてもらうのが一般的です。こちらのナイフをお使いください」
カードを持ってきた男が、そう言う。それを聞いて、香川さんが顔をしかめた。たぶん痛いのとか嫌なんだろうな。分かるよ。俺も嫌だし。
「分かった。僕からやろう。」
そう言ったのは、イケメン男子高校生の東雲君だ。東雲君が渡されたナイフで指を浅く切りその指をカードに押し当てる。すると、一瞬カードが光った。
「おお……」
ここからは見えないが何か変化があったのだろう。文字を追うようにカードを見つめている。
「東雲殿、カードを見せていただいても?」
「あ、はい」
「……おお、これは!」
リオ教皇がカードを見て非常に驚いている。なんだろうか。
覚悟を決めたのか、他の人たちも次々に指に傷をつけてカードに押し当てていく。俺も覚悟を決めて指を切りカードに押し当てる。すると、他の人たちと同じようにカードが光ステータスが表示された。
ケイタ・アキヅキ
Lv:1
種族:人間
性別:男性
年齢:22歳
職業:聖騎士
体力:20
魔力:10
攻撃力:15
防御力:15
魔法攻撃力:5
魔法防御力:15
素早さ:10
スキル:〈鑑定〉〈物体修復〉
「おお…………おお?」
素直にスゲェと思った。こんなゲームみたいに数値が表示されるなんて、どんなご都合主義だよ。とか思った。
ただこの数値、すごいのかが分からない。あと、この時点でここが異世界であることが確定した。だって、日本でこんなことできないしね。手品とかは種があるのだ。しかしこれ(ステータスカード)にはそれらしきものはない。
とりあえず、この数値がどの程度なのかを、リオ教皇に聞いてみたら少し難しい顔をされた。
その後他の人たちのカードも見ていたのだが、気色を浮かべる時とそうでないときがあった。
「とりあえず皆様ステータスカードを作成されたようですね。では説明に入りましょうか。――――」
種族や年齢、性別などはそのままの意味だ。職業に関してはこちらの世界の職業という意味で、日本での職業ではないらしい。
聖騎士とか聞いたことないよ。俺一応会社員なのにとか思った。ちなみに聖騎士というのは『聖統教会』に所属する武装集団の事らしい。なぜ宗教組織にそう言った集団が存在するのかとも思ったが、お偉いさんの護衛なんかで必要になるのだとか。
次に出てきたのは『称号』というもの。俺にはなかったのだが、召喚された中の3名は『称号』を持っているらしい。先ほどの東雲君と2名の女子高校生だ。しかも東雲君は『勇者』の称号らしい。
おいおい、て事は他の11人は巻き込まれて召喚されたのかよ。と思わなくもないのだが、他の2人、泉川さんが『聖女』、西条さんが『剣聖』という称号らしい。これがよく分からないのだが、リオ教皇によるとすごいらしい。
結局、『勇者』の称号を持つ東雲君をリーダーに、その他の11名を『勇者の仲間』として扱うことにしたようだ。
次にレベルと各ステータスだが、レベルについてはこの世界に来たばかりなので1は当然らしい。なおレベルもステータスもこの世界の成人の平均が5~10程度らしい。ちなみにステータス値が100を超えれば有名人、300を超えれば英雄といったところだとか。
俺のステータス値は平均より少し高いといったところか。しかしLv1でこれだからこの後伸びていくのかもしれないな。
と思っていたら、教皇が爆弾をブッコんできた。……東雲君がすでに各ステータスオール100越えらしい。イケメンでステータスまですごいとかなんだよそれ。他の奴らも大体50は超えているらしい。一番おどおどしていた香川さんですら最低値が25だというではないか。
……あれ? 俺は?
どうやらステータスは俺が一番低いらしい。
いや、まだだ。スキルという項目があった。これに期待しよう。
「あのスキルという項目がるんですがこれは?」
おっと、石田ナイスだ。それ聞きたかったんだよ。はよぅ
「スキルについてはそれぞれが持っている技術や技といった感じでしょうか。たとえば東雲殿のスキルは基本は戦闘系ですね――」
そしてスキルの説明を受けていく。東雲君は戦闘に関するスキルを複数持っているらしい。他の人たちもいろいろ聞いていくけれど、戦闘系や後方支援系、回復系などで別れていた。そして俺はというと、
「〈物体修復〉は物を修復するスキルですね。これは後方支援系のスキルです。戦いの際に後方で壊れた剣や鎧を治したりするスキルです。〈鑑定〉は相手のステータスなどを見ることができます主に斥候職などが使用するスキルですね。」
斥候と後方支援だった。
これはもうステータスの低さも相まって、補給部隊一直線ということだろうか。いやいや補給は大事だよ。
ステータスカードは無くした場合は再発行というのが普通だそうだ。というのもステータスカードは本人の魔力を感知して内容を表示しているため一定以上離れたら表記がすべて消えてしまうとのこと。そのため個人情報流出なんてことにはならないそうだ。あと、個人の魔力で内容表示ということでリアルタイムで記載情報は更新される。
本日はステータスカードの確認とその説明、あとは明日以降の説明があった。
一応明日から、『勇者とその仲間たち』の教育を行っていくらしい。最初は座学でこの世界の常識や周辺の地理なんかを勉強し、ある程度それがすんだら、今度は戦闘の訓練を行うそうだ。
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・ステータスについて
この世界のステータスは古代の人類が定めた単位系の一つ(単位は無いが)であり、神が~とか世界の理が~とかはありません。
古代の研究者
「お! 個人の魔力波長を調べてたら身体能力なんかと相関関係にある部分を見つけたで」
「適当に区切って数値として表せるようにしたろ」
「数値で表せるようになったから統計も比較もメッチャ楽になったわ」
「よっしゃ、これを表示できる道具を造ったろ! 複製不可の完全な個人情報カードや」
「これで気になるあの子の情報もゲットや」
「このカード型の道具、国に売り出したら儲かるやろ」
「いつの間にかワイの発明が世界に広まってたで、特許でウハウハや」
コンコン「警察ですが、複数の女性から個人情報を盗まれたとの通報が――」
「\(^o^)/オワタ」
こんなやり取りが昔にあったんだと思います。
あと名前や職業などの情報は血液を媒介に脳の記憶領域にアクセスして引き出している。
そのため故意の偽装などは無理とされているが、記憶喪失や記憶の混濁などがある場合正しく表示されないといった問題もある。
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