46話 準備
――翌朝
「何をやってるんですかー!!」
「おー、やることやってんだね」
心地よく眠っていたら、大声で起こされた。
その大声に慌てて飛び起きる――つもりだったのだが起きられない。
何だ!? これはあれか、金縛りというヤツか。く、首は……動くな。
周囲を見回すと、おや? ベッドの脇に立っているシアンさん。後ろにはヴァーミリオンさんの姿も見える。シアンさん達が起こしに来てくれたのか。目覚まし時計など無いから寝坊したかな? でも何でそんな驚き怖い顔をしているのだろうか。プルプルと小刻みに震えているし。
でも今金縛り中なんで動けないんですよ。
おや、ほのかに良い匂いと圧倒的な酒の匂いが……
ああ、そうか昨日飲んでいたんだっけ。そのまま眠ってしまったのか。あれ、あの時はレイヴンさんと一緒に飲んでいたよね。あの後どうなったんだっけ?
おや? 体を見ると何かが絡みついているぞ……いや、これ人の手じゃん……ん? 人の手?
何か嫌な予感を感じて逆方向を見てみると
「――!!」
声を出さなかった俺を褒めて欲しい。
横にはあられも無い姿の……昨日の薄着が完全に着崩れて完全に見えてしまっているレイヴンさんが俺に抱きついて眠っていた。
ヤバい! コレは……シアンさんが見ている中、ナニが起立してしまう!
いや、そういうことはともかく……え、どういう状況?
今一度、首を動かし、ぐるりと周囲を見回してみる。しかし状況は変わらず。脇にシアンさんとヴァーミリオンさん、ベッドに寝る俺、その横で裸同然の格好で寝るレイヴンさん
……コレは完全に事後ですわ
いやいやいや、俺まだ童貞だよ! いたした記憶無いもん! 自分の体を確認するが衣服はちゃんと着用している。
「ご、誤解だ!」
ただ、慌てていたためそんな声が出てしまった。何だよ誤解って、完全に浮気の言い訳みたいじゃん。
「少々話を聞く必要があるようですね」
「ほげー……どーした……」
シアンさんからめっちゃ低い声が出ると同時に、レイヴンさんもようやく変な声を上げながら目を覚ました。
「あ、レイヴンさん。起きたのなら離れていただけませんか」
「んーあー……およ……何だ、全員集まって?」
レイヴンさんが未だ眠気眼で周囲を見回しながらそんなことを言う。
「レイヴン、起きたのならまず服を着なさい。」
シアンさんのその声でレイヴンさんは周囲をゆっくりと見回し自分の体に視線を落とし、そして俺を見て一言。
「続きをヤるか?」
このあとメチャクチャ怒られた。
「いいですか。私たち人型戦闘機は戦闘に置いて対象の優位を確保する目的が――」
「んだよー。冗談じゃん、嫉妬してんの?」
「だ、だだだ、誰が、し、嫉妬なんて、」
レイヴンさんはそうぼやく。が素早く聞きとがめられたシアンさんだったが顔が真っ赤である。こういった話題には慣れていないようだ。
あの後、俺とレイヴンさんは床に正座させられていた。俺たちの前ではシアンさんがお説教中だ。
一応、酒を飲んでそのまま眠ってしまったという説明はしたはずなのだが。俺はもちろんのことレイヴンさんだって服着てたし。
「――主様も健全な男性ですから、そういうことに興味があるのは理解しています。しかし私たちの任務はあくまで戦闘であり――」
「ねぇ、もういいんじゃ無いの。何も無かったんだし。」
後ろに居たヴァーミリオンさんが助け船を出してくれる。単純に飽きただけかも知れないが。
そろそろ足がヤバい。かなり痺れてきている。
「……そうですね。何も無かったようですし。今回はこのくらいにしておきましょう。」
助かった。そう思い立ち上がった俺達だったが
「はーやれやれ……シアンてずいぶんと嫉妬深かったんだな。」
そんなレイヴンさんの現にシアンさんのお小言が再発しそうであった
◇◇◇
さて本日の予定であるが、シアンさんの弾薬製造機の製造が長引いているため出発は明日となった。
そのためヴァーミリオンさんは本日1日かけてメンテナンスポッドで腕の修理を行う。
そして俺とレイヴンさんで荷物の積み出しと装甲車への搭載を行う事となった。
「これだな」
そう言いつつ、レイヴンさんが輸送デッキ内にあるレバーを上げ下げすることで天井にあるハッチの開閉を行う。このハッチは非常に大きく本来このデッキの荷物を出し入れする際に使用するものだ。
「あれ?」
ガッチャン、ガッチャン! とレバーを上げ下げするがハッチが一向に開かない。
「おっかしいなぁ……」
レイヴンさんが首をかしげながら何度もレバーを上げ下げする。
ヴァーミリオンさんに教えて貰ったし、ちゃんとレバーの横に開閉と書いてあるので間違いないとは思うのだが。
ガッチャン、ガッチャン、ガッチャン、バキンッ!
「あ……」
何度も上げ下げする物だからレバーが折れてしまった。
レイヴンさんは数秒、手の中にある折れたレバーを見ていたがポイと捨てて、
「ちょっと外から手動で開けてくるわ」
そう言って出て行った。
しばらく輸送デッキで物資を整理しているとギギギッ! と言う音と共に天井が開いていく。
「おい、いるかー!」
「あ、はーい」
開いたハッチからレイヴンさんが顔を覗かせた。
そうしてハッチを全開にさせた。デッキの天井が全開になった形だ。本来はここからクレーンなどを使って物資の出し入れをするのだろう。
あとハッチが開かなかったのは、木の枝が開閉機構に絡みついていたためらしかった。
その後はレイヴンさんがピョンピョンとジャンプして荷物を運び出していくのだが、量が多く、これが追加分とするなら装甲車へ搭載出来ない事も無いだろうが……基本的には今まで使っていた物を入れ替えるのでなんとか乗せることが出来るだろう。
「こういった細かい作業は苦手なんだけどな」
俺の指示でレイヴンさんが魔剣などを利用して艦にある金属などを加工していく。そうして作っているのは追加のラックだ。これを車両の両側と後方に固定し、そこに増えた分の荷物を積み込む。一番場所をとっているのはシアンさんのいた場所から持ってきて未だに売却できていない希少金属製の武器類である。これらは事故が起きないように厳重に梱包(艦にあった木箱などを流用)されて車体上部に固定されている。これは単純に長物が多いためで、逆に小さな物――衣類や日用品は取り出しやすいようにバックに小分けしてラックに詰めていく。
そうして俺は外で、装甲車に荷物を積み上げて固定する係である。
作業は順調に進み、最後に落下防止用兼防水用シートを掛けると、正午になるぐらいには終了してしまった。
「ふぅ、こんなもんか」
「とりあえずこれで終わりだな」
そう、今日の作業はこれで終わりなのである。シアンさんは未だに弾薬製造機の製造にかかりっきりで、ヴァーミリオンさんは腕の修理中である。
俺とレイヴンさんだけ手持ち無沙汰になってしまった。
更新速度が非常に遅い……
最初に言っていた1話を短くして高頻度更新という理念はもはや機能していない。




