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32話 勇者たち

 場所は教会その一室に4名の人間が集まっていた。リオ教皇、国王、アドレフ聖騎士長そしてアドレフの部下である副騎士長である。


「『勇者』殿たちの出来はどうかな?」


 リオがアドレフに尋ねる。その立場は上司と部下の関係であり現在窓側の上座の席についているのはリオ、国王の2名でありアドレフと副騎士長は扉側で床に片膝を付き礼をしていた。


「はっ! レベルとステータスについては順調に上がっております。また、最初のころは魔物を殺すことに忌避感を覚える物もいたようですが、経験を積むことでかなりそれも薄れてきたのではないかと。」

「うむ、そろそろ『勇者』殿たちを大々的に公表してもよいのでは?」


 リオの問いに対してアドレフがはっきりとした声で答える。そこへと、横から割って入るように国王がリオに提案を投げかける。


「それに、魔物の討伐にも向かってもらわねば。こちらとしても遊びで召喚したわけではありませんからな。」


 そうして国王はさらに言葉を続ける。


「そうだな、では『勇者』殿たちには近々、魔王討伐の旅へと出立してもらおう。その際に公表も一緒に行おう」


 国王の提案に対して、リオは肯定の意思を示した。


「分かりました。では出立のパレードの準備をさせましょう。」


 同意をもらった国王は今後の予定などを頭の中で考える。この場には国王の部下はいないため、部下へは国王が伝えることになる。


「アドレフ聖騎士長、彼らの護衛を頼みますよ」


 リオは再度アドレフの方に向き直り声をかける。


「はっ!」

「くれぐれも『勇者』『聖女』『剣聖』の3名は丁重に扱いなさい。『勇者』として公表するのです。人の目のある場所では苦戦する様子も見せないように。その他の者についてもなるべく死なせないようにしなさい。ただし先の3名を優先し場合によっては切り捨てても構いません。」

「……了解しました。」


 リオの言葉にわずかに逡巡したアドレフであったが、教会、国共に最も重要なのは先に述べた3人であり、そのことはアドレフもわかっているため最終的には頷いた。



 ◇◇◇



 東雲たち『勇者パーティー』はやがて旅立ちの時を迎える。


 教会での座学により、この世界の常識や地理関係などもすでに把握しており、またレベルや経験値もある程度の水準に達したとして、あとは旅路にてその腕を磨きながら対魔物の最前線へと赴いていくこととなった。そして最終的には魔物を駆逐し魔王を――という筋書きである。


『勇者パーティー』総勢10名に加え、その補佐として聖騎士20名。


 アーガス聖王国の王都にて大々的な出立のパレードを行いそのまま旅に出ることになる。

 パレードは『勇者』『聖女』『剣聖』の称号を持つ、東雲、泉川、西条を先頭にトップがオープンになっている大型の魔導馬車に『勇者パーティー』を乗せその周囲を護衛の聖騎士で固めるように配置され行われた。その際になって、『勇者パーティー』の顔や名前もお披露目された。

 特に、『勇者』『聖女』『剣聖』の称号を持つ3人への期待は凄いものとなっている。さらにその3人ほどではないが、他の一般人の数倍から数十倍のステータスを持つ者たち『勇者パーティー』。誰もが魔王を倒すと信じ疑わなかった。

 なお、そこに啓太(主人公さん)や福田(死亡)の名前は無い。


 パレードには勇者を一目見ようと多くの一般市民が集まっていた。

 『勇者』の東雲や『聖女』の泉川などは見目がいいことからかなりの注目を浴びており、街道から手を振ってくる見物人たちに対し、微笑みとも苦笑ともとれるような表情をしながら手を振りかえしている。

 逆に『剣聖』である西条はどこか面白くなさそうな表情で立っていた。

 その後ろにいる『勇者パーティー』達――男子高校生たちは積極的に笑顔で手を振り返している、逆に女子高生や社会人たちは一歩引いた位置から苦笑いしているが多かった。


 『勇者パーティー』はやがて居住区を抜け王都の西門から旅立って行った。




 勇者の出立パレードを遠巻きに見つめる人影が一つ。

 体付きの隠れるゆったり目の服を着て外見からは男か女か分からず、またローブを目深にかぶっていて顔もよく見えない人物がいた。それは『勇者』たちからかなりの距離があるにもかかわらず、その瞳に『勇者パーティー』各人の顔を詳細にとらえていた。


「ふむ、あれが勇者か……早いうちに対処したほうが賢明だろうな。まずは報告するか。」


 そう言うとローブを目深にかぶった人物は建物の陰に姿を消した。ふっと去る際にフードの陰から青い肌が見えた。

せっかく集団転移させられたので勇者さん側のお話。

勇者さん側の話が3話ぐらい続きます。

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