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29話 ギルド

 その後、なぜか俺のステータスも確認させてほしいという流れになっていた。勿論先ほどの事も合わせここだけの話にして言いふらしたりはしないとは言っていたし、そもそも俺のステータスについては隠すほどのものでもないかと思い、見せた。


「そうだよな。人間て、やっぱりこのぐらいだよな。」


 なぜかしみじみとそんなことを言われた。



「それで、えーとだな、シアンちゃんとレイヴンちゃんのステータスならSランク冒険者にすることもできるがどうする?」

「Sランクですか」


 Sランクというと冒険者のランクとしては最高位だったはずだ。


「ああ、といってもその場合複数のギルドマスターにステータスの事を話さなきゃならないが。」


 なんでもSランクに上がる際には、今までの実績やギルドへの貢献度などを踏まえ、複数のギルドマスターによる話し合いの結果、承認されるという流れだそうだ。ただし、2人のステータスなら実績関係なしに承認される可能性があると言っていた。


 なので、どうする? とシアンさんとレイヴンさんに視線を投げかけてみる。


「主様のご自由に」

「マスターの好きにしたらいいんじゃねぇの」


 丸投げですか。俺一人でそんなことを決め良い物なのだろうか。

 そもそもそんなことをした際のメリットデメリットとはなんだろう。


 メリットはやはりSランクということで大きな金額の仕事などが受けられることだろう。

 デメリットは有名になることで周りがうるさくなることだろうか。面倒な依頼などもまわってくるかもしれない。

 この世界は王政が主流で、貴族などが普通にいる。そういった権力者に目を付けられた場合、それが強力な後ろ盾となってくれるか、それとも厄介ごとを持ち込む種になるかは不明だ。


「ちなみにだが、オレ一人の権限でCランクまで上げることが可能だ。」


 悩んでいることを見て取った、ギルドマスターが折衷案のようなものを出してくる。


「ちなみにその場合、主様はどうなるのでしょうか?」

「うん? ケイタか。ケイタの方はFランクのままだな。ちなみに個人ランクとは別にパーティーランクという物があるがこっちも実績が無いんでFランクのままだ。」


 パーティーランクは知らないが、ギルドでいい依頼を受けようと思ったらランクは上げておいた方がいいだろう。


「そうですね、なら二人ともCランクでお願いします。それでいいよね。二人とも。」


 Sランクは魅力的かもしれないが、その分厄介ごとも多そうだ。Cランクぐらいでも十分生活する資金は稼げると思うし、そこまでがっつく必要もないだろう。


「問題ありません」

「オレはいいぜ」


 二人とも肯定の意思を示してくれる。ただ単に俺の言ったことに従っているだけかもしれないが。


「そうか、分かった。じゃあ、シアンちゃんとレイヴンちゃんはオレの権限でCランクまで上げておく。下の受付に話を通しておくからそっちで手続きしてくれ。」

「お願いします」


 そうして話し合いは終わった。


 その後、1階に下りてきて受付に行くと2人のステータスカードへの更新作業がすぐに行われた。2人から許可をとって見てみるとちゃんと職業欄がCランク冒険者となっていた。



「おう、ちょいと待ちな」

「へへへ、綺麗なねぇちゃん達じゃねぇか」

「どうだい、そんなやつより俺たちと一緒に冒険にいかないか」


 ……すごくデジャブです。


 すぐに絡まれた。というか内容からシアンさんかレイヴンさんのナンパ目的だろう。

 こういう時は男の俺がしっかりしないとと思うのだが、目の前にいるのはヒャッハ―の世界から出てきたようなガタイのいい男3人組。

 何もこんなところまで同じでなくてもいいのに。

 顔を見た感じ、一応この前とは違う人たちみたいだ。そこまではっきりと覚えているわけではないが。


「あのすいません。俺ら急いでいるので、」

「ああん? テメェには聞いてねぇよ」

「そうそう、俺らそっちの美人のお姉ちゃん達に声をかけているんだから」

「俺ら、Dランク冒険者なんだよ、初心者みたいだし俺らが優しく教えてやるよ」


 セリフや冒険者ランクまで前と一緒だよ。ここにはそう言う役者がいるのかと疑ってしまう。

 初心者ではあるが、一応シアンさんとレイヴンさんはCランクなんですけど。

 さてどうしようか……

 2回目だし、以前にシアンさんがヤっちゃったところも見ているので、1回目ほど焦ってはいない。

 まあ、冷静だからと言っていい解決案が浮かぶわけでもないが。

 チラッとシアンさん見てみる。――普通に佇んでいるだけで何かしようという気配は感じられない。

 チラッとレイヴンさんを見てみる。――なんか違う方を見ていた。視線を追いかけると他の冒険者が飲んでいるお酒を見ていた。完全に他人事みたいだ。


「あの、本当にその辺で……」


 結局以前と同じような言葉しか出てこなかった。


「テメェはうる――ぷべらぁ!!」


 結局殴りかかろうとした人は拳を振り上げた時点で、敵対の意思ありと判断したのかレイヴンさんに殴られて、縦回転しながら吹っ飛んで行った。

 今回も俺が殴られそうになってシアンさんが助けてくれるのかなと、他人任せな思考になっていたが、どうやらレイヴンさんがちゃんと見ていてくれたらしく助けてくれたようだ。

 うん、まあ、女の子に助けてもらうとかカッコ悪いのは分かっているんだけれど。


「これは正当防衛だよなぁ?」


 レイヴンさんはそう言って拳を振り切ったままニヤリと笑った。

 ダンジョンの時も思ったがどうやらレイヴンさんはバトルジャンキーの気があるようだ。


「……なっ!? 何しやがる!!」

「テメェ! よくもアフロを!」


 アフロってさっき飛んで行った奴だろうか。変な名前の人とよく会うな。


「ジャニュアリィ!!」 ドカッ!!

「マァチッ!!」 バキィッ!!


 そんなことを考えている間に残りの二人もレイヴンさんによって同じように吹っ飛ばされていく。

 一応相手の方は武器に手をやっていたようなので正当防衛が成り立つ……はず。


「はっ、くっそ弱ぇ」


 そんな悪態をつきながら、3人を排除したレイヴンさんがこちらに戻ってくる。――と、また俺の斜め後ろに移動した。そこが定位置なのだろうか。

 ナンパ目的の冒険者が吹っ飛ばされて、絡まれた方は後ろでメイドが佇んでいる。……なんか俺がやったみたいになっていないだろうか。

 周囲の視線が痛い。


 居心地が悪くなったので、そそくさとギルドを後にした。

テンプレの街

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